Mar. Week 3, 2024
Stop Running, Stop Being Healthy?
マラソン大会で出会った夫が、走るのを止めた今では…


長年キューブさんのサイトを愛読しております。夫のことでご相談をさせて下さい。
私と夫は、結婚して約25年になります。出会ったのはお互いにマラソン大会に参加した時で、新婚時代は一緒に海外のマラソンを走ったこともあり、お互い病気もせず健康に生きてきました。 今は子供達も成人して、独立しまして、また2人の生活に戻っています。
私は50代前半で体調と体型を保つためと、ストレス対策で今もランニングを続けています。4歳年上の夫は、「朝早起きして走るよりも、睡眠を優先させたい」といって、 何年か前に走るのを止めてしまいました。代謝力が衰えて来たタイミングで走るのを止めたせいだと思うのですが、その途端にお腹周りに脂肪が付き始めて、 それまで年齢より若く見えた夫が、オジサン体型の年相応のオジサンという感じになってしまいました。 本来は走るのが好きだった人なので、以前は「週末だけでも少し走ったら?」とランニングの復活を勧めていました。 でも夫は、年齢を重ねてからも走っている私の方こそ、「もう骨や筋肉が丈夫ではないし、怪我をしたらやっかいなことになる」と言って、 「走るのを止めて歩くとか、年齢相応の運動にするべきだ」と言ってくるようになりました。 そして私がちょっと風邪気味の時や、疲れが出た時に、「走っているせいで疲れが溜まっている」、「そろそろ走るのを止める時期」と 何かとランニングのせいにしては、止めさせようとします。
そう言われるのが不愉快なので、私から夫にランニングの復活を勧めることは無くなりましたが、 夫からのランニング妨害発言は続いていて、せっかく走り終えて気分良く帰宅しても、夫に嫌味を言われると スカッとした気分が台無しになります。 先日、夫と共通の友人と集まった時も、友人達は私が今も走っているのを「偉いね!、だから若く見えるんだ!」と誉めてくれたのですが、 夫は「もう歳なんだから、怪我する前にそろそろ止めろって言ってるんだけれど、頑固なんだよね、この人」とか、 「活性酸素が出るランニングより、筋トレをすればよいのに…」と、自分の事は棚に上げて、私を頑固な老人扱いです。
こんな夫を何とか黙らせる方法はありますでしょうか。 今はこれが離婚の原因になるとは思いませんが、このまま夫の老化の方が早く進んで、 嫌味を言われながら健康を保った私が 夫の介護に追われる毎日という段階になったら、 物凄くストレスになるのが目に見えています。
夫にも運動してもらうのは もう半ば諦めていますが、せめて私が走り続けるのには口出しをして欲しくありません。 秋山さんも 長く走っていらっしゃる様子をコラムに書かれているので、同じランナーとして何かアドバイスを頂けると嬉しいです。よろしくお願いします。

- C -


走るのを止めた劣等感とジェラシー


Cさんとご主人は、マラソン大会で出会って、海外のマラソンを一緒に走られたとのことなので、 恐らくご主人は 走るのを止めたとは言え、ランナーのメンタリティをお持ちでいらっしゃるかと思います。
ランナー気質を持つ人が走るのを止めると どうなるかと言うと、走っていない自分に自己嫌悪を覚えたり、 必要以上に体力に自信を失くしてしまったり、走っている人に対して劣等感やジェラシーを覚えるようになります。 そしてランニングを続けている人に 「自分も以前は走っていたけれど…」とランニングを止めた理由、止めたことを正当化する言い訳をするもので、 2009年からランニングを始めた私も、過去に何人もCさんのご主人のような方達と会話をしたことがあります。
そうなる気持ちもある程度理解出来るのは、私自身も旅行や天候不順等で暫らく走れない日が続くと、 怠けたくなったり、サボることを正当化する考えがムクムク沸き上がって来ます。また休んでいる間に自分が以前のように走れなくなっている不安感を覚えることもあって、 スニーカーを履くまでの間に精神面のレジスタンスと頻繁に戦っています。 しかも私は子供の頃から短距離は得意でも、長距離走を苦手にしてきたので、「自分がナチュラル・ランナーではない」という意識も 潜在的にそれに加担していると思います。
ですがそれに負ける毎日が続けば、本当に走らない、走れない人間になってしまう訳で、 私がランニングを続けられる大きな理由は 「走らない、走れない人間になることの恐れ」の方が 精神的レジスタンスを上回っているためだと自覚しています。

それと共にCさん同様に「若さを保ちたい」、「健康で丈夫な身体で長生きしたい」というのも私が走り続ける大きな理由です。 私が住むビルには、高齢になっても1人暮らしをする長年の住人が何人もいますが、その人達の老化の進行具合を見ていると、 しっかり歩いて、自立した生活をして、何時会っても明るく挨拶をする住人は、全員見事に体型を保っています。 逆に買い物袋からに常にダイエット・コークが何本も覗いているような高齢者は、年々肥満に拍車がかかって、見た目も老けて、歩くペースもどんどん遅くなっているのが分かります。
私にとって一番ショッキングだったのは、かつて同じフロアに住んでいた女性で、彼女は熱心にヨガをしていたせいもあって、 Tシャツにレギンスという姿でも若者と大差がない体型を保っていました。 私はその女性を見てエクササイズの大切さを常に感じていましたが、数年前から突如、その女性のウエスト周りが太くなり始めました。 すると 髪の毛から腕の肌、顔立ちなど、全てのエイジングが急速にスピードアップし、歩くスピードも遅くなり、 ビルの付近で 何度も彼女が立ち止まって休んでいる姿を目撃するようになりました。 その太り方は欧米人特有の下半身には脂肪が付かず、ウエスト周りにどんどん脂肪が付いていくもので、 今はその女性は引っ越してしまいましたが、最後の方は増えた体重を支え続けられるほどの脚力が無いのが見て取れました。 その姿を見て私は 「どういうエイジング・ライフを送るかは、スキンケアよりもエクササイズに掛かっている」と、心に焼き付けたのを覚えています。

エクササイズというものは、習慣付けて取り組んで、その恩恵を受けている人ほど、その重要さを理解しているので、 一度その恩恵を受けてから止めてしまい、体重が増えたり、体調が悪化した人は、手放した株がどんどん上がって行くのを見ているようなジレンマや苛立ちにも似た不愉快さを味わっているものです。 その感情は元々運動が嫌いで、エクササイズに取り組んだことが無い人は決して抱かないものです。
したがってご主人のCさんに対するランニング妨害発言や嫌味は、そんな精神面の劣等感や焦りによるものですが、 夫が妻に対して抱くこの類の感情は、妻の方が仕事で昇進して稼ぎが良くなった場合と大差がありません。 今は嫌味の聞き流しや、軽い言い返しのレベルかもしれませんが、 原因になっているネガティブ要素を放置すると、やがて嫌味が嫌がらせになり、夫婦仲が悪くなって離婚に至るケースもあります。 特にお子さんが成人して独立した後の夫婦間では、どんなにそれまで上手くやって来たつもりでも、 長年のネガティブ要素の積み重ねが必ず存在します。 それに一度火が付くと、「子供が居るうちは我慢」という火消し役が存在しませんので、 夫の身勝手さや理不尽さを 自分だけが我慢してきた状況への怒りが突然燃え上がっても不思議ではないのです。 ですから 「これが離婚の原因になるとは思いませんが…」という心の余裕があるうちに、一度ご主人と お互いの心身の健康管理を含めて真剣に話し合われることをお薦めする次第です。

「歳を取ったから、走るの止めるべき」ではなく…

Cさんのご主人は「歳を取ったから、走るの止めるべき」という主張でしたが、私は逆で 「走るのを止めるから、歳を取ってしまう」という考えです。きっとこれにはCさんもご賛同下さると思います。
有酸素運動は気分をスッキリさせてストレス対策になるだけでなく、認知力を高めます。 数年前にある大学が行った実験では、認知力テストを行った後、被験者を3つのグループに分けて、 それぞれが30分間の筋トレ、ランニング、ヨガ行い、再びテストを行ったところ、スコアが唯一目に見えてアップしたのはランニングを行ったグループでした。
それだけでなくランニングは、代謝力や筋力を保ち、呼吸器系、循環器系の 若さと機能が保てる最も有効な手段でもあり、ドイツで50代~60代のランナーのテロメアの長さをチェックしたところ、 運動量の少ない20代、普通のライフスタイルを過ごす30代と変わらなかったというデータが得られています。 テロメアとはDNAを保護するキャップのようなもので、身体の老化が進めば短くなり、その結果DNAの損傷を招くことになるので、 肉体年齢のバロメータと見なされるものです。
ちなみに若い年齢層では、エクササイズをしていても、していなくてもテロメアの長さはさほど変わりません。 年齢を重ねた状態でチェックすると、その差が歴然と出るのです。 見方を変えれば、エクササイズは年齢を重ねれば重ねるほど、重要になって来るのです。

ランニングを始めとする有酸素運動について、Cさんのご主人のように 「活性酸素が出る」という異論を唱える人も居ますが、 それは最初のうちだけで、その程度の活性酸素のダメージを気にしていたら通勤さえ出来ません。 そもそも呼吸自体が酸化を招いているのですから、人間にとっては生きるということ自体が老化するという事なのです。
ですがランニングを含む有酸素運動は、ある一定のターニング・ポイントを超えると 活性酸素のダメージを挽回し、逆に細胞を活性化させ 若さと健康のための様々なメリットをもたらします。 そうでなければ、身体を動かしている人の方が若々しいという事実はあり得ません。
何処でターニング・ポイントを迎えるかは、運動の種類や年齢、体質によりますが、ランニングの場合は走るのが苦にならなくなった時点と言われます。 さらに走り続けると、今度は脳にエンドーフィンが徐々にリリースされて、ランナーズ・ハイとまではいかなくても、 爽快さを含む精神面のメリットが得られるようになるのです。

私はランニングをする場合、自分のペースで、自分が好きな時に走るのを好みますが、世の中にはランニング・パートナーが居た方が走るモチベーションとペースが保てて、しかも楽しく走れるという人もいます。 これがシングル族と、結婚生活を好む既婚者のメンタリティを反映しているかは別として、ランニングでも 人生でもパートナーというのは、 苦しい時に支え合い、お互いの弱点をカバーし、利点の相乗効果を享受するべき関係で、相手の足を引っ張ったり、やる気を殺ぐような対立関係、 ジェラシー、競争心が介在しては パートナーで居続ける意味はありません。 だからと言って私は Cさんに離婚をお薦めしている訳ではなくて、妻に競争心や劣等感を抱く男性というのは幼稚で単純ではありますが、 心根さえ悪くなければ、逆にコントロールし易い存在なのです。
現在Cさんとランニングに向けられている劣等感や競争心を、別の方向にシフトさせたら、あっさり考えを改めることは珍しくありません。 例えばご主人に 「向こう3カ月間、週に1~2回程度、自分のペースで、短い距離でも、途中で歩いてもOK」という緩い条件でランニングに再トライして頂いて、 そのトライアルが終えた段階でも 「健康のメリットより、怪我のリスクの方が大きいという主張が貫けるか?」というチャレンジをして頂いて、 競争心が故に走らざるを得ない状況に追い込んでみて下さい。 一度走って気持ちがスッキリしたり、自信が付いたり、体重が減って来れば、ご主人は主張を変えてくれるはずですので、その先の展開は心配する必要はありません。 その際、途中で脱落すると屈辱を味わうようなペナルティを設定すると、更に効果的です。
上手い手綱の引き方というのは 馬が自分の意志で動いているかのように錯覚させながら、思い通りの方向に走らせることで、 それは一歩引いた斜め上のポジションから行われることを考えてみてください。
ランニングの大きな醍醐味の1つは、走っているうちに脳が活性化されて、霧が晴れたように物事の真理が見えて来ることですので、 Cさんには人生の大きなビジョンを思い描きながら、しっかり酸素を吸い込んで、血流を巡らせて、心身を若々しく、健康に保ちながら、 幸せな人生を走り続けて頂きたいと思います。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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