Aug Week 5 2025
Lottery Winner or Lottery Loser!?
”宝くじ当選で、離婚しそうです”


アメリカ在住です。長年の読者ですが、自分がこのコーナーにご相談するとは思っていませんでした。よろしくお願いします。
少し前に20ドル札をくずす目的と、時間潰しを兼ねて、ロッタリー(宝くじ)を買いました。 私はこれまでの人生で ずっとクジ運が悪かったのですが、この時ばかりは10万ドルが当たってしまい、興奮して夫に伝えてしまいました。 それが大きな間違いでした。
ロッタリーを買ったのは、夫の友人夫婦とキャンプに出掛けた帰路だったのですが、喜んだ夫はその夫婦、 義理の両親、彼の姉弟にも伝えてしまいました。 私達夫婦はある都市の郊外に住んでいるので、10万ドルというとそんなに大金に感じられませんが、義理家族と夫の友人夫婦は貧困層が多いことで知られるレッドステーツの1つに住んでいるので、 まるで私達がマルチ・ミリオネアになったような騒ぎになってしまいました。 そしていつの間にか、そのお金で友人夫妻を招待してバケーションに行くことになっていて、義弟の学費ローンの一部を肩代わりして、 夫の実家の改装費用の一部を払って、義姉の娘のカレッジ・ファンドか何かにお金を入れることになっていました。
そして夫のためには欲しかった車を中古で買うのだそうで、 私に相談するでも、許可を得るでもなく、当選金以上を勝手な口約束でバラ撒いてくれました。

そのせいで夫との口論が絶えなくなり、チケットは隠してあるのですが、先日私の不在中に夫が私のクローゼットやドレッサーを引っ掻き回してチケットを探したことで私が完全にキレてしまいました。 私が当てたロッタリーなのに、自分の手柄として周囲に伝える様子を見ているうちに、 これまでの結婚生活で 義理家族の誕生日や母の日、父の日などに私が気を利かせて送ったギフトや、彼の友人のために私が自主的にしてあげたことを、自分の指図だと嘘をついて いつも夫だけが感謝されて、いい気になっていたことを思い出してイライラが止まらなくなりました。
以前から夫の能天気な楽観主義には呆れていたのですが、どうしてこんな人と今迄結婚していたのか不思議なくらいです。 今回のばら撒き以前から、お金の遣い方にも計画性がなかったので、こんな人と一緒に居たら老後の生活が成り立たないと思えて、真剣に離婚に向けて動こうと思っています。 私は米国市民権を持っているので、夫と離婚してもリーガル・ステータスは影響ありません(夫はアメリカ人です)。

宝くじが当たって離婚になるなんて、ほとほとクジ運が悪いと思っていますが、 日本の自分の家族には ばかばかしく聞こえてしまいそうで相談できません。 秋山さんは私の離婚についてどう思われますか。こんな理由で離婚したがる私を短絡的だと思われるでしょうか。
厳しいお言葉でも構いませんので、何かアドバイスをよろしくお願いします。

ー R -


お金で見えて来る人間の本性!? 


宝くじの賞金でも、遺産でも、「お金は人間を変えてしまう」のはよく言われることで、 金額に関わらず お金が絡むトラブルは人間関係を壊してしまいます。
Rさんの場合、賞金額は10万ドルでしたが、例えばカリフォルニア州にお住まいの場合、税金で24%を持っていかれるので、 手元に残るのは7万6000ドルです。NY州であれば、それにステート・タックスが加算されて、更に減ってしまいます。 その金額で 夫さんが口約束した大人4人のバケーション、学費ローンの一部、家の改装費の一部、カレッジ・ファンドの一部、そして中古とは言え車1台を支払おうとした場合、 ”一部”と表現される金額をかなり落として、中古車もポルシェやレンジ・ローバーなどと言わずに、ランクを落とさない限り、払いきれないのは Rさんがご指摘の通りです。 世の中には1度の収入を何度も頭の中でリピートしながら別の出費に当てる人が居ますが、夫さんもそんな1人なのかもしれません。

頂いたメールからの正直な印象を申し上げると、 私は宝くじ当選は、Rさんがそれまで夫さんに対して抱いてきたフラストレーションや不満、将来への不安を 改めて悟ったトリガーであって、遅かれ早かれ、何かがきっかけでRさんは離婚していたように思います。 長きに渡って不満やストレスを積み重ねながらも、トリガーが無いために不幸な結婚を続けるカップルは多いのです。
当選者のRさんを差し置いて、賞金の使い道を勝手に口約束して、 Rさんの不在中に家探しをしてチケットを手に入れようとする今の夫さんは、私の目からは 「能天気な楽観主義」で片づけられる人物ではありません。 恐らく「能天気な楽観主義」は、お2人の関係のハネムーン期に Rさんが夫さんの欠点を捉えた表現で、その後も夫さんが何か問題を起こす度に 「能天気な楽観主義」とお友達に愚痴るなどして、Rさんの中で定着した表現かと思います。
実際に夫さんは 彼の友達や家族とワイワイやっている時は、大声で冗談を言って、ダイナミックに笑い、情に厚く、おせっかい的な面倒見の良さもあって、 そんな姿をRさんは「能天気な楽観主義で憎めない、可愛い」と思って眺めていた筈です。 それが恋愛感情というものですが、普通の人間であれば 「あばたもえくぼ」的な感情が続くのは長くて3年です。 恋心が冷めてしまえば、彼の人間的欠陥が 妻である自分に及ぼす被害という形で突きつけられ、積み上げられていくのが夫婦生活です。
   ロッタリー当選がきっかけで、Rさんが夫さんに対してこれまで抱いてきた 修復不能なネガティブ感情を改めて悟り、迷わず離婚に踏み切れるのでしたら、 むしろRさんはクジ運が良かったと考えるべきかもしれません。

ロッタリー・ウィナーにありがちな顛末


前述のようにロッタリーの賞金は課税されると、殆どの州で手取りが7万6000ドルになります。 離婚した場合、婚姻期間に得た夫婦の財産は多くの州で折半になりますので、それぞれの取り分は3万8000ドルになりますが、 恐らくその大半は 離婚弁護士のフィーで消えてしまうことと思います。 ですが離婚理由が出来て、弁護士の代金がタダになると思えば、将来的なメリットは10万ドル以上と言えるかもしれません。
当選チケットは、引き続き安全な場所に保管されることをお薦めします。 もし夫さんが勝手に換金して、口約束通りに勝手にばら撒いてしまった場合、 離婚で得られる賞金の取り分は、夫さんの中古車の売り値の半分になってしまう可能性が大です。 ロッタリーの賞金を勝手に使われた損害賠償訴訟を起こすことも可能かもしれませんが、夫さんが「自分が買ったチケットが当たった」と周囲に言いふらしていらっしゃるようなので、 チケットの所有権がRさん1人にあることを証明するのは難しいように思います。

アメリカでは宝くじに当選した本人よりも、その伴侶や家族が興奮して、口止めをしても喋ってしまい、親族から借金の肩代わりや 事業立ち上げ資金を要求されたり、旨い儲け話、教会からは多額の寄付等を持ちかけられて、あっという間に散財させられる、 もしくはそれを断って村八分になったり、家族との絶縁や離婚になるというケースは珍しくありません。
私の記憶に残っているのは、20年ほど前のNYのエピソード。 妻が離婚を宣言して家出してしまった男性が、妻が出戻ったのに気を良くして、 「ようやく運が向いてきた」とばかりに購入した宝くじが 見事ジャックポットの当選となり、日本円にして数十億円を獲得。 NYから高額宝くじ当選者が出るのは珍しいとあって、当時のNYポスト紙には 夫婦で喜びを分かち合う姿が写真入りで大々的に掲載され、 男性は妻のことを「ジャックポット当選をもたらした幸運の女神」と讃えていました。 ところがその数週間後には、妻が離婚を申請。賞金の半分を持って、再び家を出て行ってしまい、取り残された男性がショックに打ちひしがれる様子が記事になっていました。
このカップルの場合も、「やがては破綻する夫婦関係が、宝くじ当選がトリガーになって早めに破綻しただけ」と思いますが、 男性は 「宝くじの賞金のせいで離婚した苦い経験」を振りかざすことで、その後の親族や友人からのお金の催促を跳ね除けることが出来たかもしれません。 また当時のNYでは、「宝くじになんて当選しなかったら、今も妻が自分の傍にいたかもしれない…」と語る男性の記事が、「最高のシングルズ・アド(恋愛相手探しの広告)」 と言われていたので、やはりこの男性は極めてクジ運が良かったのだと思います。
さらにこの男性のエピソードで忘れられないのは、当選に喜ぶ記事の中で男性が「絶対に当たると思った」という揺るぎない勝算を持って チケットを購入した様子を語っていたこと。 「どうせ当たらないだろうけれど、当たったら儲けもの」といったダメモト思考は、 宝くじ購入のように 自分の実力やチャレンジが絡まないオケージョンでは、「負け続けるだけの思考」であると悟ったのを覚えている次第です。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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