Jan. Week 3 2026
Personality Side Effect of GLP-1 Drug?
GLP-1ドラッグで激痩せた義姉の性格が変わり…


長年サイトを愛読している在米日本人です。
CUBEさんではオゼンピックが出たばかりの頃から記事にしていらしたことを思い出したので、ダメモトでご相談しています。
相談はアメリカ人の夫の姉のことです。義姉は以前は軽く100キロはあるような超肥満体で、若くして 糖尿や心臓病のリスクを警告されていたので、オゼンピックかどうかは分かりませんがGLP-1処方箋薬を摂取し、1年弱で70パウンド(約31キロ)以上の減量に成功しました。
義姉は幼い頃から太っていたので、よく友達にからかわれ、虐めというレベルまで行かなくてもジョークの対象だったようです。 でも「気が優しくて力持ち」的なキャラだったので、夫を始めとする弟妹4人からは 身体が弱かった義母に替わって頼られていたようで、 私は未だ3回くらいしか会ったことが無いのですが、面倒見が良く、何時も笑顔で気の良いオバサン的な印象でした。
ところが激ヤセしてからの義姉は、「着る物が無くなった」といってショッピングに勤しみ、 「こんなに身体を動かしたいと思ったのは久しぶり」と言ってダンス・クラスに通い始め、そちらで忙しくなったのか、 夫を始めとする兄妹からの電話に出ない、メッセージを残してもコールバックして来ないケースが増えて、一時は夫たちが「何か事件に巻き込まれたのでは?」と心配したことさえありました。

義姉の夫によれば、義姉は痩せてから性格まで変わってしまい、 GLP-1ドラッグを打っているので当然なのですが、食欲が無いので料理が手抜きになり、 家族で外食をしても1人だけ殆ど食べないことが多く、そのせいで家族がギスギスしてきたそうです。 極めつけは今年(2025年)のサンクスギビングで、「私は今まで何年も家族全員のためにディナーを作って来たから、 もうこれからは作らない。もう私には大量調理なんて無理」と家族のグループチャットで宣言したことで、 毎年義姉宅に集まって総勢30人以上で楽しんでいたサンクスギヴィング・ディナーの伝統が崩れてしまいました。
それまでは兄妹がドラッグ・ストアで売っているような安いクッキー缶とかをお土産にして、子連れで義姉宅に出掛けて、料理も片付けも殆ど義姉任せでした。 「これで家族全員が義姉の有難みを感じたのでは?」と思いましたが、夫の兄は 義姉に電話をして「太っていた時の方が、見た目は別として皆に愛されていた」とか、 「今更ダンスクラスに通ったところで、ハイスクール時代にチアリーダーになりたかった夢が叶う訳じゃないから、ちゃんと料理くらいしろ」と罵倒したようで、 それまでだったら弟妹と喧嘩をしても 丸く収めるように努めて来た義姉が、 その時は義兄が肥満体なのを馬鹿にして「サンクスギヴィングにフリー・ミール(タダメシ)が食べられなかったくらいで大騒ぎするから、そんなに太るのよ」 と言い返して電話をガチャ切りし、以来義兄をブロックしてしまいました。

夫の話では、義姉は本当に高校時代にチアリーダーになりたかったらしく、太っていても身体が柔らかくて、リズム感が良かったので、 ダンスは上手かったそうです。それを知らずに高校時代のクラスメートが 義姉をチアリーダーの隣で踊らせて笑い物にする企画をしたところ、 義姉の方が身体のキレが良く、ダンスも上手くて、逆に義姉がイベントのスターになってしまったことがあったそうです。
そんな話を聞くと私は義姉が気の毒に思えて、親類全体のケアテーカーの役割から解放してあげたいと思うのですが、 夫を始めとする弟妹は、40歳を過ぎている姉が「激痩せしたくらいでは、そう簡単に人生が変わらないことを自覚したら、また元に戻るだろう」と考えていて、 夫も「オゼンピックを取り上げろ」と義姉の夫に言ってしまったようで、 私は夫からそれを聞いた時に夫の人間性に疑問を感じてしまいました。

所詮は夫側の家族のことなので、余計な口出しをしたところで部外者扱いされるのは分かっていまですが、私は夫を始めとする家族が 義姉におんぶにだっこの状態を続けるのは間違っていると思っています。 そして自分達の甘えを容認して、義姉が痩せたことが諸悪の根源だと思い込み、「身の程を知るべき」などと言ってしまう夫に腹が立って、 「こんな人と生涯を共にして、子供を作るなんて無理」という気持になってきています。
「義姉が痩せたせいで離婚」なんて信じられない展開ですが、こんな風に考える私は間違っているでしょうか。 何かアドバイスや、上手い割り切り方があったら教えて頂けたら嬉しいです。 よろしくお願い致します。

ー F -


体重が劇的に落ちると…


数週間前のNYタイムズ紙で、オゼンピックを始めとするGLP-1の 世の中で言われていないサイド・エフェクト(副作用)として、 ある夫婦間のエピソードがコラムになっていました。
この夫婦は、妻がGLP-1ドラッグを摂取して痩せ始めてから 関係がギスギスして、お互いに腹を立てる様子が言動に現れるようになり、 コラムの筆者が婚姻関係の終焉が近い様子を匂わせる文章を書いていましたが、その経緯は義姉さんと通じるものがありました。 まず身体がスリムになってから、妻が夫や友人からの頼まれごとを断るようになったとのこと。夫にとってショックだったのは 夫婦生活も拒まれるようになったことで、妻によれば 太っていた頃はルックス・コンプレックスが強く、 「こんな自分でも受け入れてくれる夫が望むなら」という気持で、ほぼ嫌々夜の関係に応じていたとのこと。
友人達からの頼まれ事も、自分が太っているという劣等感や後ろめたさから、周囲を喜ばせるためにやって来たことで、 体重を落としてコンプレックスが取り除かれてからは、「No」と言える自信がついたことを本人は心地好く感じているとのことでした。

それとは別に、体重が30キロも落ちれば そのプロセスで体内のケミストリーが劇的に変化していきます。 DNAこそは変わらなくても、細胞から腸内バクテリアのバランスまでが変化し、それらが脳に与える影響を考えれば 別の人間性になって行くのは当然の成り行きです。 太っていることから感じていた劣等感が取り除かれ、徐々に自分に自信がついて来れば、それまで妥協したり、嫌々受け入れていたことを 拒んで、自分の意見や権利を主張するようにようになるのは理にかなっています。
たとえGLP-1ドラッグが無ければ達成できない減量であったとしても、体重が落ちる達成感、身体が軽くなって体調が改善し、生活にメリハリが出て、 周囲が自分を見る目が徐々に変わる様子を何カ月もかけて実感すれば 人間性に変化が現れます。 食事に楽しさを見出さなくなる分、価値観やライフスタイルも変わって行きます。 それまで食べることに注がれていた興味や関心、費やしたお金や時間が、ファッションやエクササイズ、新しい交友関係等、別の対象に移りますので 周囲との関り方も変化します。
中には、肥満をネタに自分を蔑んできた相手に対して リベンジ的な侮辱でやり返す人も居れば、 太っていた時に高カロリー、高脂肪、高塩分の料理を一緒に味わい、仲が良いと思っていた友人に対して、 「もう私は貴方達とは違う」という優越意識を持つケースもあるようです。
アメリカではGLP-1ドラッグを摂取している人と食事をすると、「人が食事をする姿を軽蔑したように眺める」、「自分は食べていないと言って、割り勘を拒む」ので、 「楽しくない」という声も多く、体重を劇的に落とすことは、身体だけでなく、社会性にも大きく影響するのだと思います。



大減量はトリガーではあっても・・・

しかしながらGLP-1 ドラッグを取り上げたところで 義姉さんが元通りになる訳ではありません。、 GLP-1 ドラッグを何らかの理由でストップした人々は、以前より食欲がコントロールできなくなる結果、あっという間に体重を戻し、それに伴う精神的落ち込みや 敗北感で鬱の症状に陥るケースが非常に多いのです。 また義姉さんは、糖尿病、心臓病の懸念から減量をした訳ですので、「オゼンピックを取り上げろ」というのは義姉さんの健康や命を犠牲にして 家族に尽くせと言っているようなものです。ですから、Fさんが夫さんや義家族に不信感を抱くのは当然のように思います。
そもそも人間関係というのは、優越感と劣等感、遠慮、我慢、妥協、現実逃避や勝手な思い込み、 「流す」いう言葉で割り切る諦めや無気力など、様々なネガティブ要素によって成り立っている部分が多いのです。 パンデミック以降の世の中では 「余計な人間関係を淘汰した方が人生が充実して、楽になる」と言われるようになりましたが、 関わる人間が増えれば、その関係や協調を保つための妥協や無理、我慢、遠慮、気遣いも増える訳で、 それを無意識のうちにやっていたパンデミック前の状況がロックダウンでリセットされたことで、人付き合いに伴う苦痛やフラストレーションを多くの人々が意識するようになりました。
家族の絆についても、それに甘えている家族が考えているほど、甘えられている側にとっては絶対的に守るべきものではなくなってきています。 夫さんを始めとする兄妹が「このままでは家族がバラバラになる」という危機感を持っていたとしても、義姉さんは「自分を利用するだけの家族なんて要らない、もう関わりたくない」と 考えていても、全く不思議ではありません。
結局のところ複数の人間が上手くやって行くには、必ず妥協や犠牲、無理が生じる訳ですが、その関係を長く良好に維持するには、妥協や犠牲、無理が特定の誰かに偏ることなく、 互いに”平等”、”フェア”という意識が介在する必要があるのです。

Fさんは 夫さんに不信感を抱いたことで、 それまでの交際や結婚生活では気付かなかった側面を 夫さんの日頃の行動や言動に見出すようになったのかもしれません。 もし夫さんがコケイジャン(白人)である場合、アジア人などマイノリティ人種との結婚は自分の優越性が人種によって保たれている意識を潜在的にでも持っている場合があります。 Fさんは、義姉さんの劣等感を家族ぐるみで利用してきた夫さんを見るうちに、「自分に対しても優越意識を持っているかもしれない」、 「自分もいずれは利用される側になるかもしれない」」と危惧されるようになったのかもしれませんし、義姉さんの姿を 同じ経験をしてきた身近の誰かに重ねて、夫さんを含む義家族の人間性を疑っているのかもしれません。
もしそうであれば、義姉さんのことは Fさんが離婚を考え始めたトリガーではあっても、根本的な理由ではありません。 まずは「所詮は夫側の家族のこと」などと考えずに、ご自身が抱く不信感について夫さんと話し合うことをお勧めします。 その結果、どんなに話しても意図した通りに伝わらない、無益で進展しない口論が続くようであれば、 おのずと離婚になると思います。
Fさんはお子さんもいらっしゃらないようですし、結婚歴も浅いようにお見受けしますが、だからと言って離婚が簡単とは限りません。 このようなケースで離婚に踏み切る場合には、正論を主張して闘うよりも 「アジア人女は何を考えているか理解出来ない」的な意識に相手を誘導した方が 無益な争いを避けて離婚に持ち込めるかもしれません。

Yoko Akiyama



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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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