Nov 13 〜 Nov 19 2023

Loser of Social Media,Teen Crime, Etc.
イスラエルとアメリカの敗北!?, トランプ氏また倒産?、少年犯罪の成人起訴, Etc.


今週のアメリカでは、APECカンファレンスのためにサンフランシスコ入りした中国のシージンピン主席のニュースが大きく報じられていたけれど、 アメリカ軍が春先に中国のスパイバルーンを撃ち落とし、中国がロシア、イランとの関係を深めてたことで、史上最悪レベルと言われるのが現在の米中関係。 その調整のために、過去数ヵ月に何度も中国を訪れては関係調整を続けて来たのがブリンケン国務長官。
バイデン大統領は水曜午前10時にシージンピン主席との直接会談を行い、その場では友好的に振舞っていたものの、 同じ水曜の午後4時のプレス・カンファレンスでは、「中国に対して態度が温い」という批判を受けてか、早くもシージンピン主席を独裁者呼ばわりする変わり身の早さ。 メディアはその場に同席し、過去数ヵ月の外交努力を一瞬にして台無しにされたブリンケン長官の何とも言えない表情に着眼していたのだった。
また今週のアメリカではCPIこと消費者物価指数が発表され、その結果、アメリカのインフレ率は9月の3.7%から10月は3.2%に下落。 これはサンクスギヴィング・デイ&ブラック・フライデーを来週に控えるアメリカにとっては極めて明るいニュース。 何より金融業界が歓迎したのは、連銀のパウウェル議長がこの数値に満足する意志表示をしたことで、 早くも業界では2024年末と言われていた利下げが、「2024年5月には実現するのでは?」という期待感が高まっていたのだった。



イスラエルとアメリカ、ソーシャル・メディアでの敗北!?


NY、パリ、ベルリン、エジンバラ、バグダッドといった世界各都市でプロ・パレスチナ(パレスチナ支持)のデモが行われる中、今週ワシントンDCで行われたのが過去最大規模のプロ・イスラエル(イスラエル支持)の集会(写真上左)。 約20万人が集まったこの席では、米国上下議会の民主・共和両党のトップがスピーチを行い、改めて確認されたのが米国政府の揺るぎないイスラエル支援の姿勢。 しかしイスラエル支持でほぼ足並みが揃っている共和党に対して、民主党はパレスチナ系のマイノリティ議員を中心に、バイデン氏が拒み続ける停戦要求を支持する声が半分を占め、真二つに割れている状態。 またホワイトハウス内のスタッフもバイデン氏に停戦を求める署名活動を行った様子が伝えられ、特に今週は病院でインキュベーターが使えずに放置される赤ん坊達の痛々しい姿が繰り返しニュースで報じられたとあって、 過去にないレベルで停戦要求が高まっていたのだった。
そんな中、パレスチナをサポートするコメントをしたセレブリティが徹底的に叩かれる様子が引き続きレポートされており、1970年代に活躍した往年のロックバンド、ピンク・フロイドのギタリスト、ロジャー・ウォータースは 戦争が始まって以来、プロ・パレスチナのコメントをソーシャル・メディアで続けて来たことから、今週訪れたアルゼンチン、ウルグアイで宿泊予定のホテルに滞在を拒否されていたのだった。
またイーロン・マスクも X(元ツイッター)上で、フォロワーが1900人足らずのユーザーによるアンチ・セメティック(反イスラエル)のつぶやきに対し 「You have said the actual truth(正しいことを言っている)」と レスポンスをして、世界の1億6000万人の彼のフォロワーに拡散したことで批判を浴びていたけれど、マスクのアンチ・セメティックな姿勢は 投資家ジョージ・ソロスへの攻撃も含めて今更始まった訳ではないもの。 戦争開始以来、更にアンチ・セメティック発言が増えても、これまでは さほどダメージにならなかったという点で、彼もトランプ前大統領と同様の ”テフロン・ステータス(批判がこびりつかないこと)”を獲得していると言われたけれど、今週のマスクのレスポンスに対してはIBM、アップル等が抗議をして、Xでの広告掲載を停止。テスラ株主もそのブランド・イメージや株価への影響を懸念するなど、波紋が広がりつつあるのだった。
しかし、それよりも今週最大のアンチ・セメティック、プロ・パレスチナのソーシャル・メディア・ポストとなったのは、9.11テロの首謀者オサマ・ビン・ラディンが執筆し、2022年にイギリスのガーディアン紙が掲載した 「Letter to America」。内容は長きに渡ってイスラエルとアメリカによる迫害や差別を受けて来たイスラム教、パレスチナ人の立場を説明し、テロに及んだ経緯を弁明するもの。 これがTikTokで公開された途端に730万のビューワー数を獲得するヴァイラルになり、直後にガーディアン紙は当時のオンライン記事掲載をストップしたものの、 その後も ただでさえプロ・パレスチナ派が多い若い世代、特にジェネレーションZの間で拡散され続けたのが「Letter to America」の内容。 特に「Americans are “servants” to Jews(アメリカ人はユダヤ人の召使)」というメッセージが強烈なインパクトをもたらしていたけれど、 これに対してプロ・イスラエル派は 「TikTokがヒットラーのナチス以来のアンチ・セメティズ・ムーブメントをホストしている」と猛批判を展開。 米国議会でも 改めてTikTokのアメリカ市場からの締め出しが再検討されようとしたこともあり、TikTokは金曜に「Letter to America」関連のポストを削除しているのだった。

今回の戦争では、世界各国の世論が以前よりも遥かにパレスチナ寄りになっているだけでなく、 これまでイスラエルを無条件、手放しで支持してきたアメリカ国内でも プロ・パレスチナのムーブメントが大きな盛り上がりを見せているのは明らかな事実。 その理由として指摘されているのが、多数のパレスチナ人がグーグル、フェイスブック、アップルといったシリコン・ヴァレーのIT大手でエンジニアを務めるようになり、 これまでイスラエル&アメリカが行って来た世論統制のからくりを見抜いて、それを逆手に取る手法に出始めたこと。 ガザでは武器による闘いが繰り広げられているとは言え、実際に勝利の鍵を握るのはソーシャル・メディアによる世論の洗脳戦争。 今もアメリカはありとあらゆる業界のトップの座を ユダヤ系白人層が握っているとは言え、 その下でテクノロジーを担う若い世代にはパレスチナ系の有能エンジニアが極めて多いのは周知の事実。 そのため社会上層部のユダヤ系白人層が これまでのように地位と財力で世の中が動かせた時代は徐々に終わる気配を見せており、 それを立証するかのように、アイヴィーリーグの名門大学は 彼らがどんなに寄附金打ち切りの脅しをかけても、反ユダヤ運動を行う学生の処罰や排除には一向に動く気配がないまま。
既にソーシャル・メディア上では、「アメリカとイスラエルは情報戦争の見地からは パレスチナに敗北している」との声も聞かれているけれど、 一部のメディアは ロシアのプーチン大統領がイスラエルVS.ハマス戦争を利用して、アメリカを含む西側諸国を内部分裂に導くよう情報捜査で扇動していると指摘。 もしそれが本当であれば、少なからず効果を上げていることを認めざるを得ないのだった。



トゥルース・ソーシャルの危機


今週報じられたのが、トランプ前大統領が立ち上げたソーシャル・メディア、Truth Social/トゥルース・ソーシャルが、設立から僅か2年足らずで7300万ドルもの損失を計上し、 キャッシュ不足に陥っているというニュース。
トゥルース・ソーシャルは、2020年1月6日の米国議会乱入事件がきっかけで フェイスブック、当時のツイッター(現在のX) アカウントが閉鎖されたトランプ氏が、保守右派の言論の自由を謳って 2021年に設立を発表、2022年初頭からスタートしたプラットフォーム。トランプ氏が意見を発信する唯一のソーシャル・メディアであるものの、 現在の月間ユーザー数は86万1000人で、これはXの月間ユーザー数の僅か1%の数字。 2022年にイーロン・マスクがツイッターを買収し、それまで閉鎖されていた過激な保守右派のアカウントを復活させたことも トゥルース・ソーシャルが 保守右派メディアとして盛り上がらなかった理由の1つと言われるのだった。
トゥルース・ソーシャルを運営するトランプ・メディア・アンド・テクノロジー・グループ(以下、TMTG)は、2021年末には1870万ドルだったキャッシュ・フローが、2022年末には980万ドルとなり、2023年上半期で更に740万ドルを使い果たしたことから、現在手持ちのキャッシュは僅か240万ドル。 今年に入ってからは社内の様々な部門でレイオフが行われており、 TMTGにとって 最大の誤算と言えるのはユーザー数や広告収入が伸びなかったことよりも、予定されていたSPACによる株式上場が未だに実現していないこと。
SPAC(Special Purpose Acquisition Company/特別買収目的会社)とは、一般企業のように事業を営むのではなく、 別の企業を買収するために設立された会社。TMTGの場合、DWAC(Digital World Acouisition Corp)がSPACとして設立され、2021年11月から株式を公開。 そしてDWACがTMTGを吸収合併することにより、IPOよりもスピーディーかつ、簡略な審査と手続きで TMTGの上場が実現する見込みとなっていたのだった。
しかし今年初めにDWACの投資家3人が、TMTGの買収発表前にインサイダー取引で2,200万ドル以上の不法な利益を得ていた容疑で起訴され、 その後7月には証券取引委員会と和解が成立したとは言え、今も捜査が続いていることから買収には踏み切れないのが現状。 TMTGは 一刻も早く買収を成立させてDWACの資金を投入しなければ、支払い期限が迫っているローン返済でデフォルト確実であることが、今週発表された 財務報告書で明らかになっているけれど、そのDWACは一時約100ドルを付けた株価が インサイダー取引疑惑も手伝って現在は20ドルを切る安値。
トランプ支持者から、政治家として寄付を集めるだけでなく、トゥルース・ソーシャルで社会的影響力を高めながら、 投資金を集める計画が大きく頓挫してしまったのが現時点。もし倒産した場合、TMTGはトランプ氏にとって7社目の倒産企業。倒産申請をせず会社をたたむ可能性も浮上しているのだった。
TMTGはトランプ氏個人の人気や名声に大きく依存したビジネスであることから、現在トランプ氏が抱える4つの刑事裁判のいずれかで敗北した場合、もしくは 2024年の大統領選挙で敗北した場合は、建て直しは不可能という声も聞かれるけれど、 スタートアップのソーシャル・メディアの失敗という点では、今年7月5日にスタートしたメタの”スレッド”も同様。 今やその存在を忘れている人も多いスレッドは、インスタグラムのアカウントと連動していることもあり、スタートから僅か1週間で100万人のユーザーを獲得する華々しいデビューを記録。 しかし現在はアクティブ・ユーザー数がピーク時から82%ダウンしているのだった。
これまではスレッドのアカウントを消去するとインスタグラムのアカウントまで消えてしまうので、嫌々ながらスレッドをキープする人々が多かったけれど、 その不評を受けてか、スレッドのユーザー・プロファイルを隠し、その30日後には消去出来る新しいオプションが登場。 メタにそんな余裕があるのは、同社傘下のワッツアプ、インスタグラム、フェイスブックの業績が極めて好調のためと指摘されるのだった。



成人として起訴されるティーンの暴力犯罪


今週、全米ネットのニュースでショッキングに報じられたのがラスヴェガスのハイスクールの放課後に、10人の少年が17歳のジョナサン・ルイス(写真上左)に殴る、蹴るの暴行を加えて殺害した事件。
盗まれたワイヤレス・ヘッドフォンを巡る口論がエスカレートしたことから、ジョナサンは放課後の喧嘩による決着に応じたというけれど、彼を待ち受けていたのが13〜18歳の10人の少年。 無抵抗なジョナサンに対する執拗な暴力が続いた様子を捉えたビデオはメディアでも公開されており、その死亡を受けてラスヴェガスの検事は 事件に関わった少年全員を成人として殺人罪で訴追する決定を下したのだった。
一部では13歳に対する成人扱いの訴追に難色を示す声が聞かれた一方で、逮捕された少年は「ただ喧嘩に加わっただけで、 誰がどうやって殺したかも分からない」と証言。しかし多数で無抵抗の1人に暴力を続ける悪質さ、人間の尊厳を認識しない非道ぶり、そして何よりショッキングなビデオ映像が 人々の怒りや恐怖を煽ったこともあり「成人としての訴追は妥当」という声が大半を占めているのが現時点。 事件が起こったハイスクールは、今年だけで拳銃20丁とナイフ54本が没収されるなど、校内暴力の激化とその対応不足が指摘されて久しく、 学生達の暴力に対する意識の鈍化は、学校側にも責任があると見受けられるのだった。
2023年に同じくティーンが成人として訴追されて大きく報じられたのが、2月に起こった当時17歳、身長198cm、体重123キロの巨漢高校生、ブレンダン・ディパが、任天堂スウィッチのプレイを注意した女性教員を殴り飛ばし、床に倒れてからも暴力を続けた事件。女性教師は全身打撲、肋骨損傷、片耳の聴覚を失う被害を受けており、当初ブレンダン・ディパは未成年として訴追されたものの、その暴力性が世論に問題視された結果、18歳を迎えた時点で成人として第一級過剰暴力での訴追が決定。有罪になれば 最高で30年の懲役刑が課せられることになっているのだった。
今週始まった刑事裁判には、刑務所生活で事件当時より遥かにスリムな体型になったブレンダン・ディパ(写真上、右側)が出廷。 弁護側は彼が軽度の精神疾患を患っていることを理由に「裁判よりも治療が適切」と主張。 被害者の女性教師は、学校側から無給の停職扱いにされてしまい、現在はクラウドファンディングで集まった寄付に頼る生活。 ディパに対しては、未成年でも減刑をせず、可能な限りの重罰を望む姿勢を見せているのだった。
凶悪犯罪でも少年法が適用される日本とは異なり、アメリカは未成年者が特定の重犯罪を犯した場合、判事がケースバイケースの判断を下すまでもなく、 自動的に成人として訴追される司法ガイドラインが存在する州が多く、成人として裁きを受ける未成年犯罪者の数は年間約20万人。 この数は1990年代をピークに減少傾向で、その理由は「未成年でも、成人として裁かれる」という認識があっても 青少年犯罪が増加の一途を辿ったことを受けて、法律が改正されたため。 それによって悪質な犯罪者が十分な裁きを受けないケースは増えたけれど、それより遥かに多くのティーンエイジャーに更生の機会が与えられたのは紛れもない事実。
ちなみに成人として有罪になったティーンエイジャーが送られるのはもちろん成人刑務所。しかし成人の囚人と隔離する必要があることから、彼らが刑期を過ごすのはもっぱら独房で、 孤独や不安に精神を苛まれることから、未成年者は成人犯よりも辛い刑期を過ごす傾向にあるのだった。
アメリカでは、上記の事件のような悪質な校内暴力や虐めが原因で 死者や重傷者が出た場合、世論は 容疑者が成人として訴追されると、それだけで 厳しい刑や 社会的制裁を受けることを見越して 満足してしまうのが常。 全ての事件の根底にある 家庭&学校環境の劣化やそれに取り組まない行政に不満や問題を感じることなく終わってしまうのが悲しくも、厳しい現実なのだった。

来週のこのコーナーは、サンクスギヴィング・ウィークの休暇につき、勝手ながらお休みをいただきます。 次回更新は12月1週目となります。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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