Apr 27 ~ May 3 2025

Trump@100days, Recession Blonde, Draft Prank, Etc.
トランプ政権100日目、リセッション・ブロンド、ドラフト茶番、Etc.


今週、4月29日で発足から100日目を迎えたのがトランプ政権。 1月20日の就任式以降、物議を醸す政策や大統領令が続いたことから、多くの国民のリアクションは「未だ100日?」というもので、 民主党リベラル派の間では「あと1360日の辛抱」という皮肉めいたジョークが聞かれていたのだった。
アメリカでは政権発足から100日間はハネムーン期という認識であることから、新政権には好意的な世論が多いのが通常であるけれど、 第二期トランプ政権は、第一期トランプ政権の不支持率の記録を更新。 ほぼ全ての世論調査で支持率が45%を切っており、ワシントンポスト紙&ABCの調査では39%の支持率。 過去80年で最低となっていたのだった。
しかし今週行われた閣僚ミーティングでは、各官僚がトランプ氏の歴史的功績を大賞賛。 実際に最初の100日間で、20万人の政府職員解雇と政府機関閉鎖をDOGEを通じて行い、 大学経営への介入、グリーンカード保持者やアメリカ国民を含む移民強制送還、世界経済を大混乱に陥れた新関税制度など、 ここまで世の中を変えた政権はかつて存在しなかったのは誰もが認めるところ。
しかし昨年11月の大統領選直後には屍のようだった民主党が、 ここへきて共和党を上回る支持率に回復したスピードにも驚く声があるのは事実。 同様のことは 昨年末にカナダのトルドー首相率いる自由党が 保守党に支持率で20%以上の水を開けられながらも どんどん巻き返し、 今週には後任のマーク・カーニー首相が自由党を見事逆転勝利に導いた様子にも見られていたのだった。



DOGEの非効率化が出費増大


トランプ政権の最初の100日間を象徴するのがイーロン・マスク率いるDOGE(政府効率化省)とトランプ関税。
DOGEは前述のように20万人の政府職員を解雇したけれど、マスクが経営するテスラ、スペースX、ニューラリンク等に対し、14件の連邦捜査を進めていた USAIDを含む省庁が真っ先にターゲットになったのは多くが指摘するところ。 またマスクが「最大の詐欺」と呼んだ社会保険庁は、DOGEによる大量解雇の影響で受給者が5時間電話をホールドしても担当者と話せないだけでなく、 新規申請者は病人でも障害があっても、社会保険庁支部に出向かなければ申請が認められない新ルールが設けられ、アメリカの場合、それは時に2~4時間の車の移動を意味するのだった。
マスクは今週、DOGEが1500億ドルの政府出費を削減したと宣言したけれど、会計監査機関の見積りでは400~800億ドルがせいぜいで、当初から掲げていた2兆ドル削減は最初からあり得ないゴール。 しかもDOGEによる人員削減による政府機関の生産性低下、解雇した必要人材の再雇用、政府機関から職員を遠ざけるための有給出勤停止等により、 1350億ドルの損失がもたらされており、連邦政府支出は1月20日の政権発足から3月26日までの段階で1兆8930億ドル。 2024年のバイデン政権下の同じ期間の支出 1兆7630億ドルを 1300億ドル上回っており、年間では政府支出が 昨年よりも7.4%増加する見込み。 またトランプ政権、DOGEに対しては200以上の訴訟が起こされており、その法定費用や再雇用、政策取り消し手続によって更に出費が増えるのはほぼ確実。 そのため政府効率化省は「名ばかりというより、むしろジョーク」と言われているのだった。

第二期トランプ政権の最初の100日間は株価パフォーマンスも1974年のジェラルド・フォード大統領以来の最悪ぶりが指摘されたけれど、当時は ウォーターゲート事件で政情不安が高まったと同時に石油ショックに見舞われた時代。 今回のトランプ政権での株価不振はトランプ関税という自分が蒔いた種が原因で、多くの経済専門家が指摘するのは、トランプ氏が「他国は米国市場に依存しているので、貿易戦争は簡単に勝てる」と考えて居ること。 しかし多くの国々はアメリカに依存しない貿易をこれまでに無いペースで模索し始めており、現時点では政府関係者から国民までの最大の関心事になっているのが中国との関係。
既に弱体化していた中国経済は、新関税によって輸出受注減少と工場生産低迷というダメージが見られているのは事実。 しかしアメリカも深刻なインフレ、物不足が見込まれ、物流が途絶えることでパンデミック時同様、港・輸送関連、小売業を含む様々なセクターで大型レイオフが予測されることから、 何方が先に倒れるかの状態。 中国が一向にアメリカとの交渉を拒む姿勢を崩さないのに対し、トランプ氏を始めとする政権関係者は「中国との交渉が進んでいる」と主張。 他の主要な貿易パートナーとの交渉についても進展が進んでいることを強調しており、政府関係者が誇示する交渉進展成果として必ず名前が上がるのがインド、韓国、そして日本。
トランプ氏が関税政策を推し進める目的の1つはアメリカの貿易赤字減らしであるけれど、90日間延期した関税導入時までにアメリカ企業が 駆け込み輸入を増やしたことは、世界貿易のパターンと経済データに大きな歪みをもたらしているようで、その影響でアメリカの貿易赤字が更に拡大しているのが現状。 DOGEも 関税も、少なくとも現時点では、やっていることが完全に裏目に出ている印象は否めないのだった。



米国リセッション秒読み段階で、”リセッション・ブロンド”がトレンディング・ヘアカラー


今週には、アメリカの2025年第1四半期のGDPが0.3%下落したことが報じられたけれど、2四半期連続でGDPがマイナスになった場合、経済の定義上ではリセッション入り。 そんなアメリカでは、既にリセッション入りしたかのようなペースでレイオフが始まっており、今週、UPSはアマゾン配達の激減を受けて2万人の従業員解雇と77の営業所閉鎖を発表。 このことがアマゾンの売上げ減少を意味するのは言うまでもないこと。
同じく今週には、ギャップもコーポレート・スタッフ1800人の解雇を発表。 インテルも 今後数週間で2万1000人を解雇するとのことで、同社は2024年にも1万5000人を解雇したばかりで、それから1年も経たずしての大型レイオフ。 しかしインテルは2023年には12万4800人を雇用していたので、まだ多数の従業員を抱えているけれど、現在大幅にカットされているのは管理職。同様のマネージャー・クラスの解雇はアマゾンでも行われており、 IT業界は有能なエンジニア中心のタイトな経営に生まれ変わろうとしているとのこと。その影響でITセクターでは、2025年の現時点までで112社が5万1000人の従業員を解雇しているのだった。
街ぐるみで 全米に先駆けてリセッション・モードに入っているのはラスヴェガス。カナダの米国旅行ボイコットと、アメリカ人の旅行控えの影響を受けて既に閑古鳥が鳴いている状態で、 今週MGMは、べラジオとアリアを除く 傘下6つのホテルのコンシアージュを解雇。既にベルボーイやフロント・スタッフ等の解雇も行っており、Luxorホテルでは食べ放題のバフェ(日本のビュッフェ)レストランが閉鎖。 社内ではエグゼクティブが多額の退職金が得られるうちに辞職する様子が伝えられ、ヴェガスの危機を先読みしているとも言われる状況。
MGMは2024年にリゾート・フィーやパーキング料金を2回値上げしており、同様の値上げをヴェガス全体が行った結果、 エンターテイメントや、ホテル代、食事代が急騰。 かつての割安感が無くなったのも旅行者が寄り付かなくなった理由。 また先週のこのコラムで、アメリカ人がチップの額を減らし始めたことをお伝えしたけれど、 ヴェガスを含む全米のストリップティーズでも、ストリッパーへのチップは昨年ピーク時の約半分。テスラ株並みの下落を見せているのだった。
一方、本来リセッションに強いと見られてきたコストコも消費パターンの変化に懸念を表明。来店客が使用するカートのサイズが小さくなり、家電製品を含む 高額品が売れなくなり、 購入の中心はもっぱら食糧。 リセッションやパンデミック時には売り上げを伸ばしていたアルコール類も、ウィスキーは割安な大瓶よりも 小さいボトルが売れ筋。クラフト・ビールの売り上げも過去に無いペースで減少中。
そんな中、SNSでトレンディングになったのが、2025年注目のヘアカラー ”リセッション・ブロンド”。ブロンド・ヘアを完璧に維持するには、生え際のメンテナンスもさることながら、ハイライト、ロウライト等、 複数レイヤーの色分けを行い、2週間置きのサロン通いは必須。しかしリセッションで収入減や失業に見舞われてしまえば、ブロンド・ヘアのためにお金も時間も掛けられないことから、 そんな手抜き状態を「時代を反映したトレンド」と肯定して、罪悪感を払拭しようというのが ”リセッション・ブロンド”。 リセッション中は、サロンでのヘアカット頻度も減るので ロングヘアがトレンドになり、アットホーム・ネールになることから、単色で余計な細工やデコレーションが無いシンプル・ネールが主流。 フェイシャルにも通わず、パンデミックのロックダウン中に使用していた美顔器を再び取り出して来るという徹底したバジェット・ビューティー時代に突入するのだった。
とは言っても消費者物価指数によれば、ヘアカットやその他のパーソナル・ケアの料金は、パンデミック前の2019年から昨年2024年にかけて27%以上アップしており、 これはロックダウン中のセルフ・ケアの反動で サロン通いを復活させた女性達の心理、インフレ、株価好調に便乗したボッタクリ価格。 NYに関して言えば、4つのサロンを経営するトップ・ヘアスタイリスト、ヴァレリー・ジョセフによるヘアカットの最低料金は550ドル、セレブ客が多いサリー・ハーシュバーグのトップ・スタイリストのヘアカットは800ドルにまで 上昇しており、これまでは高額スタイリストやカラリストから予約が埋まっていたのだった。
リセッションの影響は男性側にも現れていて、過去1カ月でメンズ・アンダーウェアの売り上げは6%ダウン。 しかし夫婦の場合、御互いの容姿や身なりに手を抜いたとしても、リセッション中は経済的な理由から離婚が激減するのが常。 その替わり一馬力の低所得世帯では、ブレッド・アーナー(直訳すればパン代を稼ぐ人であるけれど、要するに世帯収入を担う働き手)が家出をするケースが増えるとのことなのだった。



前代未聞のNFLドラフト騒ぎ


4月24~26日のスケジュールで行われたのがNFLドラフト。今回、誰がどのチームに指名されたかよりも 大きなニュースになったのが前代未聞の人騒がせなプランク(悪戯)。 そのターゲットになったのは、ジャクソン・ステート、コロラド大学のクォーターバック、シェデュー・サンダースで、 父親は殿堂入りのランニングバック、ディオン・サンダース。
シェデューは父親を含む関係者から、ドラフト1巡目のトップ5以内で指名を受けると事前に通達されたものの、 4巡目まで待っても名前が呼ばれず、その予想外の展開が話題を集めたけれど、ドラフト2日目にようやく彼に掛かって来たのが ニューオーリンズ・セインツのジェネラル・マネージャー、ミッキー・ルーミスを名乗る人物からの電話。 彼がその電話に応え、長かった指名待ちがようやく終わることに安堵した様子はネットのライブ配信でリアルタイム中継されたのだった。
ところがセインツが別のプレーヤーを指名したことで、電話でフェイクであったと悟ったのがサンダース、及びライブ配信の視聴者。 その翌日にはSNS上で、サンダースに笑いをこらえながらフェイク電話を掛ける2人組を捉えたビデオが公開されてヴァイラルとなり、 NFLが捜査に入ったのだった。
サンダースはドラフトのために新しいスマートフォンを購入し、その番号を知っていたのはNFL32チームの幹部だけ。 やがて特定された犯人は、アトランタ・ファルコンズのディフェンシブ・コーチ、ジェフ・ウルブリッヒの息子、ジャックスで、 父親のアイパッドから盗み見たサンダースの電話番号を この悪戯のためにメモっていたとのこと。 彼はIDが特定された直後に「致命的な過ちを犯した」との謝罪をSNSにポストをしたのだった。
当初、これは犯罪とは見なされないため、逮捕を含む処罰の対象にならないと見られたけれど、 NFLは機密情報漏洩の罪でファルコンズに25万ドル、ジェフ・ウルブリッヒに10万ドルの罰金を科すと発表。 しかしジャックス本人に対しては地元コミュニティへの奉仕活動という温いペナルティ。
結局シェデュー・サンダースはドラフト5巡目、144番目にようやくクリーブランド・ブラウンズによって指名されたけれど、 好成績を残し、殿堂入りの父親を持つサンダースをNFLチームがあえて指名しなかったのは、派手好きで目立ちたがり屋の父親に更に輪をかけたような彼の人間性が嫌われたため。 事実、サンダースは指名が決まった直後にルイ・ヴィトンの小型トランクに100ドルの札束を詰め、巨大なダイヤモンドネックレスを付けて、アントラージュと共に ダラスのナイトクラブに繰り出した様子がレポートされており、練習中でも試合でも身に着けている尋常でないサイズのダイヤのネックレスの数々は彼のトレードマーク。 そのためサンダースに対しては、無情な悪戯に対する同情の声が一切寄せられなかったのもまた事実なのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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