May Week 2, 2026
Life Lesson in Central Park
人生の学び舎としてのセントラル・パーク


 少し前には桜が満開だったセントラル・パーク。今は新緑に季節に入って、鮮やかで勢いがある緑の木々から この季節だけに感じられるに葉の香りが土の香りとミックスして精神鎮静効果をもたらしてくれるのは毎年のこと。
 私がセントラル・パークでのランニングを始めたのは2009年で、当初は身体を鍛えることが目的であったけれど、 今では健全な精神のため、そして自然に触れる目的で続けていて、 事実、セントラル・パークでは室内でのメディテーションやジムでのエクササイズでは決して得られない成果が実感出来るだけでなく、 私にとってここで過ごす時間は「人生の本当の贅沢が何か」を悟れる時間。 1年の中にも四季それぞれの美しさがあるだけでなく、1日の中にも朝、昼、夕方でそれぞれの表情や魅力があるパークは 世田谷区のサイズのマンハッタンの6%の面積で、アップタウンの50ブロックを東と西に区切るロケーション。
 私は1858年にこのパークをデザインしたフレドリック・ロウ・オルムステッドを 二コラ・テスラに匹敵する天才だと思っているのだった。










 今年の冬のNYはアラスカ並みの寒さだったけれど、そのせいでセントラル・パークに積もった雪が2週間以上新雪の状態を保った様子は、 2月に日本に一時帰国した際、友達がこぞって見たがった写真(青空をバックにした雪の写真)。 これを撮影したのは、私がこの風景の手前の 完璧に雪かきされた道をランニングしていた時で、 セントラル・パークは大雪の直後に雪景色や雪遊びを楽しむためにに市民が集まる場所。そのため雪が降る度に、安全な通路を確保するための真っ先に雪かきが行われる場所。
 そうかと思えば春夏シーズンに人々が芝生の上でピクニックを楽しむグレート・ローンやシープ・メドウは、毎年芝生が育つように柵を張り巡らせて立ち入り禁止にする時期が設けられ、 当たり前と思って見ている美しい光景は沢山の時間、労力、管理、手間、そして多額の寄付によって支えられているのだった。

 私にとってセントラル・パークの最大の魅力は、こんな素晴らしい自然が世界一の摩天楼という別の絶景と共存していること。 美味しい空気を吸って、鳥のさえずりを聴いて、季節の花々を楽しんで、直ぐに都会の生活に戻れるのは神に感謝するほどの恩恵。
 そのセントラル・パークはバード・ウォッチングの愛好家が訪れる野鳥の生息区。他にもリスやラクーン、ネズミをくちばしで挟んで空を飛ぶ鷹、水辺では真っ白なサギを目撃する場所でもあり、 ランニングしている最中に真っ赤なカーディナル(紅冠鳥)やブルー・ジェイ(アオカケス)、都会では見かけないアゲハチョウが視界に入るのは全く珍しくないこと。時に大量のカメやカモにも遭遇して、 「ここがNY?」と思うような光景を最も目にするのがセントラル・パークなのだった。










 私が長距離を走りたくない時に出掛けるジャクリーヌ・ケネディ・リザバー(貯水池)は ランニングのビギナー・コースとして奨励される場所で、 思わず写真を撮りたくなる絶景を頻繁に目にするのがこのスポット。 貯水池は水面が穏やかな時ほど摩天楼や空、雲を鏡のようにくっきり映すけれど、雨が降らない日が続いて貯水池の水位が下がると、徐々に中央に浮き上がって来るのが、内側に水道管が通っている石造りの道。 最初のうちは鳥が集まって水辺の足場として使うけれど、更に水位が下がって雑草が生い茂ると鳥も寄り付かず、公園側のメンテナンスが入るまで続くのが荒れた状態。
 人の心や経済状態もこれと同じで、枯渇してくると徐々に醜悪な部分が露呈し、その過程で心無い人々に利用され、利用価値が無くなれば何等かの救済手段が得られるまでは悪化の一途。 とは言っても貯水池はある程度の水位さえ満たされていれば、美しい光景を映すために大切なのは水面の穏やかさ。 人間も十人並みの生活さえ出来て居れば、幸福度や人生の豊かさを決めるのは 心のゆとりや穏やかさであると実感するのだった。


 セントラル・パークは 心にゆとりを持っていると美しい物に沢山出会える場所。厳寒の岩肌の氷柱、土手に雑草として咲く小さな花、紅葉が始まりかけたタイミングの誰も気に留めないエリア等に 自分の感性に響くシーンが見つけられるのは何とも表現しがたい幸福感。 私は幼い頃から美しいものが好きで、美しさに憧れて、美しい物を沢山手に入れたいと思って生きて来たけれど、 セントラル・パークで時間を過ごすうちに美しさの概念が広がって、それまでこだわって来た表面的な美しさを退屈に感じるようになってきたけれど、 それは私自身が年齢を重ねたせいでもあると思うのだった。


 ところで、世の中一般ではNYというとニューヨーカーが最も嫌うタイムズスクエアを思い浮かべる人が多く、 NYの街並みというと どうしてもソーホーやウエスト・ヴィレッジといったダウンタウン、もしくは上空から撮影するビル群を頭に浮かべる人が多いもの。 でも実際のNYはもっと人間的な街で、私が住むアッパー・イーストサイドは季節ごとに歩道や住居前の花の植え込みが替わり、パーク・アベニューの中央分離帯も 春は桜とチューリップが美しく、ホリデイ・シーズンはイルミネーションが飾られて、普通に人間らしく穏やかに日々が過ごせるエリア。 そんな日常に感謝しながら生きられることに 私は幸せを感じているのだった。  

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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