May 29 〜 June 4 2023

"Nvidia, NYC Sinking, Taylor Economy, Etc."
Nvidia、AI、沈むNYC、テイラー経済効果、Etc.


月曜がメモリアルデイのホリデイだった今週のアメリカでも、最も報道時間が割かれていたのが米国債務上限引き上げを巡る調整のニュース。 先週土曜日夜にバイデン大統領と共和党のケヴィン・マッカーシー下院議長が合意に達したとは言え、債務上限引き上げには上院、下院での議会承認が必要。 しかし2人が合意に達した 増税無し、防衛を除く政府経費のカットを含む、向こう2年間債務上限を引き上げる法案は、共和党保守派、民主党プログレッシブ派の間での反発が強く、 投票までに行われたのが民主、共和双方の必死の調整。その結果、水曜の下院投票で無事に法案が可決されたことから、舞台が移ったのが上院。 そして上院でも反対派を調整して可決にこぎつけたことから 6月5日、月曜に迎えると言われたデフォルトが ギリギリのスケジュールで回避されたのだった。
株式市場は、デフォルト回避に楽観的ながらも その状況を慎重に見守っていたのが今週で、そんな中、金曜に発表されたのが5月の米国雇用統計。 それによれば、5月にアメリカで生み出された新たな仕事の数は、19万という経済専門家の事前予測を大きく上回る33万9000。 労働市場が堅調で、債務上限が引き上げられアメリカが新たな国債を発行する場合、当然見込まれるのが更なる利上げで、 連邦準備制度理事会のパウエル議長が6月にも0.25%の利上げを行うことが有力視されているのだった。



株価絶好調のNVIDIA、AI、アップル預貯金口座のその後…



このところ株式市場の話題を独占していたのが NVIDIA / エヌビディアの株価の上昇ぶり。 大手半導体メーカーで、特にGPU、すなわちAIのハードウェアで業界をリードするエヌビディアの株価は、昨今のAIブームを背景に2023年に入ってから159%アップ。 まだまだ値を上げることが見込まれるけれど、エヌビディアと共に2023年に入ってからS&P500株価指数を8.9%上昇させているのは 一握りのIT大手。
その顔ぶれは 先ずはアップルで2023年に入ってから株価が36%上昇。マイクロソフト社は同じく2023年に株価が37%、グーグルの親会社のアルファベットは39%、 アマゾンは44%、そしてフェイスブックの親会社メタに至っては 昨年の暴落の反動もあって 2023年以降株価が120%アップ。 テスラも2023年以降66%の上昇を見せているのだった。 S&P500は大きな時価総額を持つ企業ほど、全体指数に大きく影響を与える時価総額加重指数。 そのため専門家は、「好調な大手IT企業の数字を除いた場合、2023年のマーケットは若干のマイナスになるはず」として、必ずしもS&P500の数値が米国経済を反映する訳ではないと指摘していたのが今週。
その今週にはイーロン・マスクがLVMHの会長 ベルナール・アルノーを抜いて、再び世界一の富豪に返り咲いているけれど、 この入れ替わりの要因はテスラ株上昇よりも、LVMHの株価下落が原因。 中国市場復活で見込まれた売り上げ増加が期待外れであったことから、LVMHは週半ばに株価を10%近く落としており、投資家は今後ラグジュアリー・グッズよりも AIに進んで投資をする傾向が顕著なのだった。
そうしたAIブームを受けて、昨今のスタートアップ企業はウェブサイトのドメイン・ネームを ".com" や ".io" よりも ".ai" で取得するケースが多いとのことで、 ".ai" でのドメイン申請数は前年比で156%アップ。 そして目下、注目と期待が集まっているのが6月5日からスタートする ”WWDC”こと ”アップル・ワールド・ワイド・デヴェロッパーズ・カンファレンス”。 この席でアップル社が、AI及びメタバース関連のアプリ、もしくはヴァーチャル・リアリティのヘッドセット等のハードウェアを発表するという噂が流れており、 その発表により恩恵を受ける株式やクリプトカレンシーの憶測が飛び交っていたのが今週のマーケット。 WWDCの動向によっては、6月は株式もクリプトカレンシーもAI、メタバース関連がブル相場を展開するという意見が有力なのだった。
そのアップル社と言えば、ゴールドマン・サックスとのパートナーシップで、年利4.15%の預貯金口座で銀行ビジネスに参入したことは5月1週目のこのコーナーでもお伝えした通り。 昨今報じられるのが そのアップル口座関連のトラブルのニュースで、ウォールストリート・ジャーナルによれば、複数の利用客がアップル口座の預金を別の銀行口座にトランスファーしようとしたものの 全く拉致が明かず、 記事の取材でウォールストリート・ジャーナルがゴールドマン・サックスのカストマー・サポートに問い合わせて、初めて問題が解決したとのこと。 それよりもっと恐ろしいのは、トランスファーのプロセスでお金自体が消えてしまうことで、アップルの口座にも 振り込もうとした銀行口座にも預金が入っていないという、 通常の銀行間ならばあり得ないトラブル。 そもそもゴールドマン・サックスはれっきとしたバンクとは言え、コンシューマー・バンキングにおいてアマチュアの域。 それがド素人のアップルと組んだ預貯金口座であることを考慮すると、4.15%という年利が 果たしてリスクに見合うかは微妙とも言えるのだった。



テイラー・スウィフト、Erasツアーのメガ経済効果


3月17日にアリゾナ州グレンデールからスタートしたのが、テイラー・スウィフト (33歳) の5年ぶりになる エラス・スタジアム・ツアー。20都市で52回のパフォーマンスを行う全米ツアーのチケット、240万枚は 1日で完売する記録を打ち立てたけれど、 販売を独占したチケットマスターのシステムがダウン。ファンからは集団訴訟が起こされ、チケットマスターのトップは今年1月に行われた上院諮問委員会で弁明しなければならない一大事になっていたのは記憶に新しいところ。
その議会証言でチケット・マスターのトップが、「テイラーのファン全てにチケットが行き渡るようにするには、テイラーが1年以上、毎日コンサートを行わなければならない」と語った通り、 熱心なテイラー・ファンであるスウィフティーズであれば 熟知していたのが、僅か52回のコンサート・チケットの入手が如何に難しいか。 そのためスウィフティーズは、旅行覚悟で 開催地を問わずにチケットの申し込みをしており、ツアー最初の開催地、アリゾナ州グランデールは 街の人口25万人に対して 押し寄せたのが15万人のスウィフティーズ。 お陰で地元のホテル、飲食店、小売店が潤ったことから、当初コンサート期間中だけということで ”スウィフト・シティ”と名付けた街の一画のネーミングが定着。 グーグル・マップ、アップル・マップにも正式表示されるようになっているのだった。
これに止まらず テイラーのコンサートは 全米のアリーナで観客動員記録を塗り替えており、NYメッツの本拠地、シティ・フィールズでも先週末に観客動員数の新記録を打ち立てたばかり。 その観客にはニューヨーカーだけでなく、オレゴン州ポートランドやカナダなど、多くのアウト・オブ・タウナーが含まれており、 そんなスウィフティーズはコンサートを前後して、3泊4日で旅行をするのが平均的なスケジュール。 ヒューストンでは、テイラーのコンサートが行われた週末のホテル収益が過去最高を記録。ナッシュビルでは多くのバーやレストランがコンサートの日程に合わせたテイラー・イベントを開催し、 通常では有り得ない集客と売上を記録。フィラデルフィアでは、通常はガラガラのコンサート会場傍のマリオット系列のホテルが、テイラーのコンサート日程に合わせて満室になるという異例の事態を迎えているのだった。
またスウィフティーズは、コンサートに出掛けるに当たって、テイラーのエラス・ツアーのコスチュームにインスパイアされたファッションも買い漁っており、アマゾン、ポッシュマーク等のウェブサイトを中心に、飛ぶように売れているのが シークィンのドレスやスカート、ラメのブーツなど。そのため エラス・ツアー・コスチューム特集ページを作って、更に売上を伸ばすウェブサイトが続出中。TikTok上でも #ErasTourFashion、#ErasTourStyle がトレンディングになって久しい状況。
スウィフティーズは 平均チケット価格である691.74ドル、ホテル代、交通費、現地での飲食代を含む旅費、ファッション、現地でのお土産やグッズの購入等で 1人当たり1000〜4000ドルを支払っていると見込まれ、 それがコンサート開催地には、街の規模に応じて 5億ドル〜15億ドルの経済効果になっているというのがフォーブス誌による見積り。 ブルームバーグ・ニュースは、お金に糸目をつけないスウィフティーズの出費ぶりを「パンデミック中に味わえなかった体験を求める欲求と、楽しめる時に楽しんでおかなくてはという強迫感に駆られてターボチャージが掛かった消費」 と表現。
米国経済データによれば、アメリカの消費は未だ堅調とのことだけれど、スウィフティーズは確実にその一端を担っていると言えるのだった。



あまりのビルの重さに…、NYが沈む日


世間では気象変動による地球温暖化、それに伴う海面上昇が指摘されて久しいけれど、それと共に洪水のリスクを高めているのが街の重量による地盤沈下。 米国地質調査所の地球物理学者のチームが それを調べる対象として選んだのがニューヨーク市。理由はもちろん人口と建物が集中しているため。
2020年の時点で 880万人が住むニューヨーク市は、アメリカではダントツで人口が多い都市。それだけの市民が暮らし、仕事をする建物、特に高層ビル群の重量が膨大であることは容易に想像がつくところで、 それを実際に測定し、都市重量による土地の圧迫具合を調べたのが 5月にEarth’s Futureで 発表された新たな研究なのだった。
地球物理学者チームが先ず行ったのはマンハッタン、ブルックリン、ブロンクス、クイーンズ、スタッテン・アイランドというNY市の5ボローにある全ての建物、108万4954軒の重さ、 その分布、そして全エリアの地盤の種類を示すマップの作製。それと共に各地質が建物の重圧にどう反応するかの調査を行ったとのことで、実際の土地の沈下具合については衛星データを使って測定。 それによれば、NY市は過去10年間に平均で年間1〜2ミリの割合で沈下しているとのこと。そしてNY市内のすべての建物の総重量は 7,640億キログラム。 これは建物に絞った重量のようで、住人とその所有物、すなわち家具や自家用車等の重量が含まれていないよう。
NY市内で最も建物の重量が集中しているのはファイナンシャル・ディストリクトを含むローワー・マンハッタン。 地質の観点で、最も脆弱で沈下が起こり易いのは 埋め立てにより面積を拡大したブルックリンの南岸沿いエリア。 逆に地盤沈下が起こり難いのは、岩盤が地表近くにあり、ビルの重さで圧縮される土壌が薄いエリアで、場所で言えばマンハッタンのミッドタウン。 このエリアは奇しくも、近年ビリオネア・ロウと呼ばれて 超高層のコンドミニアム・ビルディングの建設ラッシュが起こっているエリア。
この研究では、今後の長期展望で どの程度の沈下が進むかの予測は未だ出来ないこと。とは言え、 「長期的には、現在の年間平均1〜2ミリの沈下がスピードアップするはず」というのが研究に携わった学者達の共通の意見なのだった。
余談ではあるけれど、ニューヨーカーの間で評判が芳しいとは言えないのが、ミッドタウンに昨今乱立する超高層ビルディング。 無機質なデザインが多く、ビリオネア・カルチャーの象徴と言われるのも嫌われる要因でもあるけれど、そうした新しい超高級高層ビルディングの居住率は僅か5%程度。 投資目的でニューヨーカーとは言えない大金持ちが購入し、しかも税金でも優遇されていること、そして高層であるが故に セントラル・パークにまで長く巨大な陰を落とすこと、 スカイスクレーパーの見た目のバランスが悪くなったこと等、ニューヨーカーが新超高層ビル群を嫌う理由は山積しているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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