June 12 〜 June 19 2023

"SF & US Super Power are Dying!?, Etc."
サンフランシスコ絶対絶命, 富裕意識調査, 米国スーパーパワーの終焉, Etc.


今週最大の報道になっていたのは、ホワイトハウスから最高機密書類の持ち出し絡みの37の容疑で訴追された トランプ前大統領が、火曜日に罪状認否のために フロリダの連邦裁判所に出廷したニュース。この日はトランプ氏の77歳の誕生日の前日でもあったけれど、 トランプ氏や支持者がこの訴追を政治的意図に基づいた魔女狩りと主張するのとは裏腹に、その訴追内容は もしトランプ氏でなかったら ここまで慎重な捜査や証拠固めをせずに あっさり逮捕と懲役刑が決まっていた犯罪。
例えば、2週間前には 連邦判事が元空軍中佐ロバート・バーチャムに対し、数百の機密文書を自宅や士官宿舎に隠し持っていた容疑で懲役3年の実刑判決を下したばかり。 4月には 元米特殊部隊隊員ジェレミー・ブラウンが、退役後に機密報告書を持ち出した容疑で 7年以上の懲役刑が言い渡されており、2018年にも国家安全保障局のギア・ホアン・ポーが機密文書を自宅に保管した罪で 5年半の懲役刑を受けているのだった。 ちなみに約420万人の米国政府関係者とコントラクターが年間に扱う機密書類の数は5000万件。「機密文書扱いが多過ぎる」との指摘もあるものの、それらの書類を勝手に持ち出せば罪に問われるのは当然のこと。
トランプ氏が持ち出したのは、国の最高権力者のみがアクセスできる核兵器情報を含む最高機密書類。本人の主張は「持ち出した書類は全て大統領権限で最高機密扱いを解除した。 大統領にはどんな書類でも持ち出す権利がある」という、法の見地からは認められないもの。 万一それがまかり通った場合でも、国家所有の書類の返還拒否やその隠ぺい、FBI捜査を妨害するウソの供述等は立派な犯罪。 2016年の大統領選挙で対立候補のヒラリー・クリントンが、国務長官時代に機密書類の連絡を一般のEメール・サーバーを通じて行ったことを犯罪扱いして、 「Lock Her Up!(牢屋にぶち込め)」をスローガンに当選したトランプ氏であるけれど、彼の容疑は法律の専門家が「それとは比較にならない」と明言するレベル。
現時点ではこの訴追は共和党支持者間でトランプ支持率を高める結果になっているものの、ABCニュースが今週行った最新の世論調査では、 世論の61%がトランプ氏の書類持ち出しを深刻な犯罪と捉えており、「深刻な犯罪ではない」という意見は28%。どちらともいえないと回答したのは11%。 そのため共和党候補者の中ではトップを走るトランプ氏が、大統領選では敗れるという見方は引き続き有力。しかもトランプ氏は今後の選挙活動期間中に 今回の訴追、2020年大統領選挙妨害を含む複数の刑事訴訟とも 闘わなければならないハンディキャップを背負うことになるのだった。



San Francisco is Dying


今週ショッキングに報じられたのがサンフランシスコのショッピング・モール、ウェスト・フィールズが今年8月の撤退を決定したニュース。
全米でラグジュアリーなモールを展開するウェスト・フィールズは、サンフランシスコのダウンタウン、SOMAエリアのランドマーク・ビルディングを改装し、 20年以上に渡ってサクセスフルなビジネスを展開してきた存在。しかし今やSOMAはドラッグ中毒のホームレスが昼間から道端でヘロイン注射をして、ゴミに使用後の注射針が混ざっているのは当たり前。 治安も悪化し、白昼堂々の窃盗事件が相次ぐことから、H&M、ブルックス・ブラザース、ディズニー、ルル・レモン、レイバンといった 小売業が次々と撤退。2019年には同エリアに203軒存在した小売店が 今では107軒に減少しているのだった。
2019年には4億5500万ドルを売り上げていたウェスト・フィールズも、2022年にはその売り上げが2億9800万ドルに落み、 少し前にはモール内の40%以上を占めていたアンカー・テナント、ノードストロームが撤退。 集客パワーを失ったことから、今週ウェスト・フィールズも5億5800万ドルの不動産ローンを残して閉店を余儀なくされているのだった。
サンフランシスコが 街の名物でもある坂道を転げ落ちるような転落を見せ始めたきっかけは、シリコンヴァレーの好況を受けて、 高給取りのIT従業員が激増したことから、NYを上回る高額レントの街になったこと。 そのせいで低所得者層のホームレスが増え、彼らが現実逃避のために走ったのがヘロイン。それに対して 地方政府が手をこまねいているうちに起こったパンデミックの影響で、ドラッグ中毒のホームレス人口が更に急増。逆に自宅勤務の影響で激減したのが オフィス街に通勤する人々。やがて活気や人通り、ビジネスが失われた街中で頻発するようになったのが、ソーシャル・メディアで見ず知らずの仲間を募って行われる 集団窃盗事件。そんな被害が繰り返し起これば、小売店にとっては保険料が膨れ上がる訳で、大手チェーン店を中心に小売業がどんどん撤退した結果、 かつての富裕層が暮らす街から、ホームレスの巣窟に様変わりしてしまったのがサンフランシスコ。 今年4月には地上30階建てのビルの巨大オフィスに1000人以上の従業員を抱えていたセールス・フォースもその移転を決定。 小売りだけでなく、ビジネス・オフィスもどんどん移転、流出を続けているのが現在。
サンフランシスコ政府は何とか観光収入を増やそうと、5月から600万ドルを投じた旅行者誘致キャンペーンを行っているけれど、 今となっては焼石に水という印象が否めないのだった。



米国人、富の意識調査


今週火曜日にはアメリカの消費者物価指数が発表され、その結果5月のアメリカのインフレ率は前年比4%。ようやく近付いてきたのが連銀が目指す2%。
しかしながら、翌日水曜には連邦準備制度理事会のパウエル議長が6月の利上げは無いとしながらも、年内にあと2回の利上げがあることを示唆していたのだった。 インフレに話を戻せば、ガソリン代、国内航空チケット、そして鳥インフルエンザ被害が一段落したため 卵の価格が下がってきているけれど、 食料品全般や電気代は前年比で5.3%アップ。レントに至っては前年比8.7%の上昇ぶりで、まだまだ楽にならないのが庶民の生活。
そんな中、米国の証券会社 チャールズ・シュワブが発表したのが、世代別 1000人のアメリカ人を対象に行った富の意識調査結果。 それによれば 対象者の48%が自分を「非常に裕福」、もしくは「ある程度裕福」と認識しており、 世代別では、ジェネレーションZとミレニアル世代の61%が「友人と同等のライフスタイルが保てれば、自分は裕福だと思う」と回答。 しかしこれに同意するベビーブーマー世代はその半分の31%。 またジェネレーションZとミレニアル世代の54%は「ソーシャル・メディアで自分のライフスタイルを友人等と比較している」とのことで、 ジェネレーションZの53%、ミレニアル世代の51%が「裕福の基準はソーシャル・メディアの影響を受けている」と回答。 これに対してベビーブーマー世代の同様の意見は僅か13%。
要するに若い世代ほど、周囲の目を気にして、友人と同等のライフスタイルを送ることで自分を裕福だと認識したがる願望が強く、 当然のことながら他の世代よりも多くなるのが インスタグラムやTikTokビデオ等に影響された 短期展望かつ 無駄な出費の割合。 昨今のコンサートやミュージック・フェスティバルのチケットの高額ぶりは、この世代のFOMO(周囲に取り残されたくない強迫観念)に支えられているのは紛れもない事実なのだった。

次に「自分を大金持ちと認識するために幾らの個人資産が必要か?」との問いに対しては、全世代の回答の平均は220万ドル。とは言ってもアメリカの個人資産の平均は2019年の段階で75万ドル。 140万ドルの資産があれば アメリカではトップ10%の富裕層になれるだけに、この金額はかなりの高望み。 これが「自分が豊かであると認識できる個人資産」になると かなりハードルが下がって、ジェネレーションZは41万4000ドル、ミレニアル世代で53万1000ドル、ジェネレーションXは最も少ない4万1000ドル、 そしてベビーブーマー世代は62万2000ドル。当然のことながらベビーブーマーの金額には働けなくなってから必要な蓄えが含まれているのだった。
そのベビーブーマー世代はリタイアを先送りにしたり、リタイアから仕事に復帰する傾向が顕著であるけれど、 その理由のNo.1は「もっとお金が必要」、2位は「やることが無い、退屈だから」、3位は「インフレで出費が嵩む」、4位は「老後の蓄え不足を恐れている」というもので、 突き詰めていくと「お金が必要だから、働けるうちに働いておきたい」という意見が圧倒的。
昨今アメリカで取り沙汰されるワーク&ライフ・バランスについては、72%が「キャリアに情熱を注ぐ」よりも、「充実した私生活を過ごす」ライフスタイルを支持。 そして調査対象の大半が「周囲の人よりも多額の資産を持つ」よりも「お金のストレスを感じないこと」、 「多額の資産を持っている」よりも「家族や愛する人と健全な人生を楽しむこと」を望むと回答。 過去何年にも渡ってメディアを含む様々な角度から現代人に擦りこまれている「お金では幸せになれない」という認識が浸透しているのは紛れもない事実。
しかしながら金銭的な尺度を幸福の意識に持ち込んだ場合は、やはり数字が優先される傾向は否めず、 「お金では幸せになれない」が まだまだ持たざる者の希望や慰めの域を出ていない様子を垣間見せているのだった。



グローバル所得格差が減少、米国スーパーパワーの終焉!?


世界格差研究の第一人者であるブランコ・ミラノビッチがフォーリン・アフェアーズ誌に寄稿したエッセイで述べたのが、 「21世紀に入ってから世界所得格差が狭まり、現在は1875年以降で最も格差が少なくなっている」という最新の調査結果。
世界の収入格差の目安になるのはジニ係数。これは最低値のゼロが 格差が全く無い平等を意味し、最高値の100が1人の独裁者が世界の富を独占する状態を意味する指数。 2000年には69であったジニ係数は、2018年には60に下がり、2023年現在では更なる減少を見せているとのこと。 また国家間の不平等も1988年の63から2018年には47にまで低下。 しかしながら各国内における不平等は 1990年代から2倍に拡大しているようで、このことは世界各国の人々が貧富差の拡大という形で実感している通りなのだった。
この調査結果がアメリカの有識者の間で注目を集めた理由は、そのデータがアメリカのスーパーパワーの終焉を予感させるため。
例えば1970年代には、世界のGDPに占めるインドのシェアは3%未満だったのに対し、ドイツのシェアは7%。 ところが2021年を迎えるまでに その数値が入れ替わったのがこの2国。 そしてドイツ経済が衰え、インドの経済が拡大した主要ファクターと言えるのが人口。 その意味では現在世界人口の僅か4%にしか満たないアメリカの経済力も、今後は中国やインドに抜かれることが確実視されているのだった。
2018年の段階で、米国の平均所得以上を稼ぐアメリカ人100人に対して、同額の収入を稼ぎ出す中国人の割合は約25人。 それが20〜30年後までには、中国人がその数でアメリカに追いつくだけでなく、米国平均年収以上を稼ぐ中国人の方が多くなるというのがミラノビッチ氏の見通し。 そんな経済力が 世界への影響力、技術力、カルチャー面等、広範囲で大きな影響をもたらすのは容易に想像がつくところ。
アメリカがスーパーパワーを失い、やがては複数の強国の1つに甘んじるというビジョンは、 BRICS(ブラジル、ロシア、インド、中国、サウジアラビア)が進める世界貿易におけるドル離れを語る際にも指摘されることで、 世界基軸通貨である米ドルの立場が徐々に脅かされていることは 今週ジャネット・イエレン財務長官も指摘したばかり。 米ドルというアメリカにとって最大の武器が衰えた場合、アメリカが世界に誇れるのは先端技術とエンターテイメントやスポーツを含むカルチャー面での影響力。 しかしPGAツアーがサウジ・マネーで買収され、ソーシャル・メディアやクリプトカレンシー、AIを含む先端技術に対して政府が適切な規制が行えていないのが現在のアメリカ。
ミラノビッチ氏のエッセイは、「裕福な国民を多数抱える国ほど、国としてのパワーも強力」と結論付けており、現在そのパワーは 世界の広範囲に分散しつつあるとのこと。 すなわち2020年12月からスタートした風の時代が象徴するディセントラリゼーションが確実に進んでいるということになるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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