July 31 〜 Aug 6 2023

" Indictment, Therad, #NoBarbenheimer, Etc."
3度目の訴追, スレッド苦戦, #NoBarbenheimerの物議, Etc.


今週のアメリカで最大の報道になっていたのが、トランプ前大統領に対して3度目の刑事告訴が行われたニュース。 今回の訴訟は2020年の大統領選挙での敗北を知りながら、トランプ氏がその結果を覆そうとした4つの容疑を問うもの。 木曜にはワシントンDCの裁判所に罪状認否のために出廷したけれど、前回のマイアミの裁判所の罪状認否とは異なり、 アンチ・トランプ派が多いDCではトランプ支持者の出迎えは無く、裁判所周辺で観られたのはもっぱらアンチ・トランプ派の抗議活動。 トランプ氏は罪状認否の際、裁判官が「President Trump(アメリカでは大統領任期を終えてからもPresidentの名称で呼ぶのはごく一般的)」ではなく「Mr. Trump」と 呼んだことに腹を立てていたことが伝えられるのだった。
その数日前にはトランプ氏が ホワイトハウスからの書類持ち出し事件で、FBIから提出を求められたトランプ氏の私邸 マー・ラゴのセキュリティ映像の削除を トランプ氏に依頼された使用人の訴追も行われたけれど、選挙絡みの容疑でも今後ルディ・ジュリアーニを含むトランプ氏弁護団を含む7人が共犯として 訴追される見込み。 トランプ氏に対しては、同じく2020年の大統領選挙の際、選挙結果を覆すための画策をした容疑で ジョージア州でも8月中に刑事訴追が行われる見込みで、大統領選挙が行われる2024年にトランプ氏が抱える刑事裁判は4件。
トランプ氏側はこれらを選挙妨害を目的とした 「政治的な魔女狩り」といつもながらの反発を展開。既に自らが 大統領に返り咲いた暁に掲げているのが大統領権力の拡大、及び司法省の権限縮小。 同様のことは、同じく刑事訴追をされながら首相の座を守ったイスラエルのネタニアフ首相が既に行ったばかりであるけれど、 そのせいでイスラエルは民主主義が脅かされる大混乱状態に陥っているのだった。



スレッドのその後と、Xの横暴


7月6日にリリースされて以来、史上最短の僅か6日間で1億5000万人ダウンロードを記録したのが "ツイッター・キラー”の異名を取るメタのアプリ、”Thread / スレッド”。 ちなみにそれまで1億5000万人ダウンロードの最短記録を保持していたのは”ポケモンGO”の33日。
デビュー1週目のアクティブ・ユーザー数は9300万人で、これはトランプ前大統領がスタートしたトゥルース・ソーシャルの週間アクティブ・ユーザー数の86倍に当たる数字。 スレッドはインスタグラムに付随したアプリとあってそのポストの内容は平和そのもの。プロダクトやライフスタイルに関わるポストが多く、差別や陰謀説等の問題ポストが無いことから 広告主には好まれると思われたのも束の間、 2週目にはそのアクティブ・ユーザー数が半分以下に当たる4400万人に激減して、現在では1人の平均ユーザーは800万人。ユーザーがスレッドを使用する時間もスタート直後は1日に14回のチェックで、19分を費やしていたけれど、それが今週までには1日2〜3回のチェック、僅か2.9分を費やすまでに激減。
そうなってしまう原因は、ツイッターのように政治や社会問題をめぐる論争や、それらを風刺したユーモアやMemeなどが見られないことから、ユーザーの感情を逆なでしない分、ユーザーを夢中にすることも無いためで、早くも「スレッドはツイッターにはなれない」、「スレッドはパンデミック中のClubhouse同様に打ち上げ花火で終わる」という声が聞かれているのが現在。
でもツイッターに慣れないのは、その名をツイッターから改めた”X”も同様。 今も1日でに全世界の1億人がデイリー・ユーザーであるとは言え、改名以来、その紛らわしい一文字ネーミングのせいで "X formerly known as Twitter" とメディアが記載しており、 社名の知名度が下がったことを考慮して 以前より安くなったのがその広告掲載費。しかし定期的に広告掲載をしない広告主からは オーセンティシティを証明するチェックマークを剥奪するという強気の姿勢を示しているのだった。
新社名”X”に対する大方のリアクションは、賛否の否の方が多く、それと共に批判されているのが古臭いデザインと、一般大衆へのアピールが弱い新ロゴマーク。 さらに問題視されていたのが”社名変更をする段階で、”@X” のハンドル・ネームを 2007年から使用してきたフォトグラファー、Gene X Hwang氏から一方的に奪った横暴ぶり。 ツイッターの1文字アルファベットのハンドル・ネームは、過去に5万ドルで売却されたことがあり、価値があると見なされるもの。 それをEメールの通達であっさり奪い取ったのが ”X”で、利用規約ではトレードマーク違反を除いてはソーシャル・メディア側がユーザーのハンドル・ネームを 勝手に変更や剥奪が出来ないことになっているのだった。 そのためイーロン・マスクがどのような形で商標登録をしたかが憶測を呼んでいたけれど、実際に”X”のフェデラル・トレードマークを2019年に取得しているのが他ならぬメタ。 そのためメタがXに対して法的アクションを起こすことが見込まれているのが現在。
Xへの社名変更にはそれ以外にも、サンフランシスコ本社のツイッターのロゴの取り外し、Xのサインの設置で警察と揉めたり、 アップルのアプリ・ストアの「2文字以上のネーミングのアプリしか受け付けない」ポリシーを曲げて貰うなどの手間やトラブルが生じているけれど、 確実に言えるのはIT業界のネーミングが一般大衆にとってどんどんややこしくなっていること。
2015年にグーグルが会社本体をアルファベットと改名し、2021年にフェイスブックが社名をメタに改め、 今度はツイッターがXになった訳だけれど、いずれものケースでも未だにマジョリティが使用しているのがオリジナルのネーミング。 グーグルでは ”Is Alphabet Inc and Google the same?”、 ”Why Facebook is called as Meta?” という質問が依然として頻繁に検索されており、 ツイッターとXについては ”What is the X in Twitter?” が最もトレンディングな検索になっているのだった。



#NoBarbenheimerの物議!?


8月に入ってアメリカのメディアで報じられるようになったのが、日本で「バーベンハイマー」のMemeが物議を醸して、X(元ツイッター)上で#NoBarbenheimerが トレンディングになっているというニュース。特に問題になったと報じられているのが写真上左の映画ファンサイトがクリエイトしたMemeで、 それにバービー配給元のワーナー・ブラザースが バービーのアカウントから 「It’s going to be a summer to remember」とレスポンスしたことが物議をかもし、 ワーナー・ブラザース・ジャパンがアメリカ本社の心無いツイートを謝罪。アメリカ本社も日本からの苦情を受けて謝罪表明をしたことが、 原爆の史実と共に報じられていたのが米国のメインストリーム・メディア。
これがX(元ツイッター)上になると、日本のユーザーと思しき文法が少々あやふやな英語で「バーベンハイマーというネーミングそのものがふざけている」という意見、「原爆をエンターテイメントにするなんて」という批判が見られたのに対して、ネイティブ・スピーカーと思しきユーザーからは前者に「許容範囲のユーモアのセンス」、後者には「日本の”食わず嫌い”」という反応、もっと感情的なレベルでは「原爆以前に、パールハーバーはどうなんだ」といったレスポンスが見られ、改めてX(元ツイッター)がユーザーを感情レベルを刺激するソーシャル・メディアであることを思い知らされたのだった。
「バーベンハイマー」という言葉については、7月21日に封切られたこの夏の最大の話題作「バービー」と「オッペンハイマー」の2本が、全く正反対の内容にも関わらず 同じように映画ファンにアピールし、公開1週目の週末には20万人以上ものムービーゴーワーが双方の前売りを購入。その多くが1日に5時間以上を掛けてこの2本を見るというハードなスケジュールをこなすまでのフェノメノンになっており、その2本の映画に対するエキサイトメントを2本のネーミングをくっつけた「バーベンハイマー」と呼んでいただけの話。アメリカに暮らしている日本人として、 私はこれを特に不謹慎とは捉えたことは無いのだった。
また「バービー」という映画は観ていない人が頭に描いているような 下らないガーリー・コメディではなく、「オッペンハイマー」という映画も 世界を破滅に導きかねない発明プロジェクトを率いる量子物理学者のバックグラウンド、時代背景、核兵器開発を巡る政治的駆け引きや個人の思惑がメインの映画。 「オッペンハイマー」の映画のメッセージは、ネタバレになるので内容はあえて書かないけれど、映画の最後に登場するロバート・オッペンハイマーと彼のメンターとも言えるアルバート・アインシュタインの会話に集約されていて、それは戦争や核兵器とは切り離されたレベル。これを認識していないと、日本人の中には映画の本質を捉え損ねて腹を立てる人や、 映画を観ずして批判する人も出て来るように思うのだった。
原爆を扱ったエンターテイメントを製作することについては、私は興味の入口が何であれ、原爆について多くの人々がどんな形でも認識を高めるのは大切だと思う立場。ナチス・ドイツについても「シンドラーズ・リスト」や「ライフ・イズ・ビューティフル」等、数えきれないほど存在するナチス絡みの映画から様々な知識を得た若い世代が多いのは紛れもない事実。私自身、映画を観るまで日本が唯一の被爆国だと思っていたけれど、実際には”トリニティ”と呼ばれる原爆実験が行われたニュー・メキシコ州ホワイトサンズ・ミサイル射撃場、及びその周辺エリアも立派な被ばくエリア。同エリアは2022年から史跡として年に2日だけ一般公開されることになったけれど、1990年に放射線被ばく補償を勝ち取るまでは 1945年の実験から45年間もの間、周辺住民に対して政府は何の計らいもしておらず、その補償も2022年7月11日に期限切れ。しかし周辺の78の町、数十の牧場では今も放射線レベルが高く、一部のホットスポットは公共エリアで許容される基準の1万倍の放射線が認められているとのこと。当然の事ながらガンを含む病を患う住人も多く、映画「オッペンハイマー」を観るまで多くのアメリカ人が このアメリカ国内の被爆地の存在を知らずに居たのだった。 映画の影響で次にホワイトサンズが一般公開される今年10月23日、2024年4月6日には多くの人々が現地を訪れると見込まれているけれど、 これについても「観光気分」などと批判するよりも、一般市民が史実を知ろうとする興味や好奇心として奨励すべきだと思うのだった。
トランプ前大統領は任期中に米軍上層部に何度も「何故核兵器を使わないのか?」と尋ね、その都度軍関係者が「核兵器は使うためにあるのではない」と説明しなければならなかったことが 伝えられているけれど、米軍最高司令官である大統領が何処へ移動する際も持ち歩くと言われるのが、コードネームで”フットボール”と呼ばれる核兵器のスウィッチ。 原爆に関する映画を含むカルチャー、エンターテイメントをタブー視し続けていると、今後もアメリカやその他の核保有国で原爆に対する認識が甘い指導者が生まれる可能性が高まる訳で、 私は日本が被害者としてのセンシティビティを訴えるより、被爆国であるからこそできる原爆被害の残酷さのアピールを世界に発信することにより、そのリスクを認識してもらう方に努めるべきだと思うのだった。



今週のマネー & カルチャ―・ ニュース


アメリカでショッキングに報じられたのが、大手信用格付け会社フィッチが8月1日にアメリカ国債の格付けを最高のAAA からAA+に格下げしたニュース。 フィッチのアナリストによれば格下げの主な要因は政治の激しい二極化で、「民主・共和の双方が、債務上限引き上げや 税金、連邦支出 等において、根本的に合意に取り組む意欲が無い」状況、 そして2021年1月6日の議会乱入のような事件が起こることも米国政府の債務返済スコアを引き下げる要因とのこと。更には財政赤字の悪化、債務負担の増加という要因も加わって、 直ぐに格付けを挽回できる可能性は低い様子も指摘されているのだった。
これに対してJ.P.モルガン・チェースCEO ジェイミー・ダイモン、バークシャー・ハサウェイのウォーレン・バフェットは心配は不要というスタンスで、ジャネット・イエレン財務長官は「正当な根拠に乏しい」と抗議の姿勢。アメリカ国債が格下げされたのは2011年にS&Pグローバルが長期国債をAAA からAA+に格下げしたのに続いて2度目のこと。これを受けて短期的にもドル安に向かうと見る声が高まっているのだった。

映画「バービー」のヒットで、バービーコアのトレンドが継続する中、遂に登場したのがバービー・ピンクの棺桶。 これをクリエイトしたのはメキシコの業者で、初回にクリエイトした在庫を完売し、今週には大きくメディアで取り上げられているのだった。 ピンクのカラーが表現するのは「愛に満ちた人生のエキサイトメントや華やかさ、忘れがたい幸せ」とのことで、 ”Now you can rest like Barbie (バービーのように永眠出来る)” がそのセールス・ピッチ。
ちなみにこれは単に通常の棺桶をバービー・ピンクでクリエイトしただけなので、バービー・ドール販売元であるマテル社や、映画配給元であるワーナー・ブラザースに対する ライセンス料の支払いなどは無しに バービーコアに便乗したヒット・プロダクトになっているのだった。

アップルが今週水曜に発表したのが2023年第二四半期の決算。 それによると売り上げは198億8000万ドルで、前年同期を僅かに上回っているものの、その半分を占めるアイフォンの売り上げが不調。 アイパッドに至っては20%も売り上げが落ち込んでいるとのこと。逆に今四半期8%売り上げを伸ばしていたのはアップル・ミュージック、アプリ・ストア、アイクラウド、アップル・ニュース、アップルTV等の サービス部門で、特に有料サブスクライバーの数は世界で10億人を突破。すなわち消費者は高額のハードウェアの購入を控えるものの、少額の サービスにはお金を払い続けているようで、サービス部門は粗利が70%というドル箱ぶり。 来年初頭にメタヴァース対応のヘッドセットの販売を控えるアップルであるものの、徐々にハードよりソフトがビジネスのメインになる気配を感じさせているのだった。



執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2023.

PAGE TOP