Aug 14 〜 Aug 20 2023

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マウイ経済ダメージ、ビッグショート2?、End of TV, Etc.


今週アメリカで大きく報じられていたのが、ジョージア州で2020年の大統領選挙結果を覆そうと画策した容疑で、トランプ前大統領が過去3ヵ月間で4度目の刑事訴追を受けたニュース。 同時にその共犯容疑で弁護団を含む18人が合計41の容疑で訴追されたけれど、トランプ陣営にとって致命的な証拠になっているのが、「選挙結果を覆すだけの票を探してくるように」とトランプ氏自身が ジョージア州務長官、ブラッド・ラッフェンズパ―ジャーに依頼する1時間以上に渡る電話のやり取りの録音。 今週APとNORCが共同で行った世論調査によれば、アメリカ国民の53%がジョージア州司法省の刑事起訴を支持。 ABCニュースとIpsosが共同で行った世論調査によれば、トランプ氏の容疑を「極めて深刻」と捉える声は43%、「深刻」と捉える声は16%で、63%の有権者が今回の訴追を 妥当としており、逆に「深刻ではない」、「全く深刻ではない」という意見はそれぞれ10%、15%。 トランプ氏が「大統領選挙キャンペーンを中止すべき」という意見は50%で、「するべきでない」という意見は33%。トランプ氏が主張する通り「この訴追は政治的意図に基づくもの」という 意見は49%。
そんな中、今週木曜に起こったのがジョージア州でのトランプ氏訴追を決めた大陪審のメンバーの名前と住所が意図的にインターネット上に漏洩され、トランプ支持者から命を狙う強迫が寄せられる事態。 そのため現在は全員に警備が付いており、漏洩した犯人については警察が捜査中。 同じ日には、2021年1月6日の議会乱入事件の首謀者としてのトランプ氏の裁判を担当する黒人連邦裁判官に対して、 テキサス在住の白人トランプ支持者が 殺害をほのめかす脅迫と共に、「stupid slave / 馬鹿な奴隷」と人種差別的な罵倒をするヴォイス・メールを送り付けて逮捕されているのだった。
共和党大統領候補選びは、引き続きトランプ氏がトップを走っており、現時点で2位のフロリダ州知事 ロン・ディサンティスを猛追しているのが、 インド系移民の2世で アントレプレナーのヴィヴェック・ラマズワミー。ディサンティス陣営は来週の共和党候補のディベートで ”ラマズワミー叩き”の秘策を練っているとのことで、トランプ氏は大量リードを保っているとあって ディベートには不参加を表明しているのだった。



マウイ山火事のエコノミック・インパクト


先週から引き続き、今週も大報道になっていたのがハワイ、マウイ島の山火事の大被害のニュース。 今週末までに確認された死者数は110人を超え、まだまだ捜索が続く中、現地の被災者の間で徐々に盛り上がっているのが様々な怒り。
その怒りの1つは、救援関係者を上回る数の旅行者が、壊滅的なダメージを受けたラハイナ以外のマウイのビーチを訪れ、これまで通りシュノーケリングや日光浴等を楽しむ様子。 交通閉鎖がされている島内はそんな旅行者の移動のせいで渋滞が起こり、救援物資の遅れを含む問題が生じているのだった。 しかし収入の80%を旅行産業に頼るマウイでは、これについての島民の意見が分かれており、ハワイ州知事ジョシュ・グリーンは「復興のためにも 収入源となる旅行者を引き続き迎えるべき」という意見。
その州知事は、アメリカ史上最悪の犠牲者を出した今回の山火事について、第三者機関による正式な捜査を行う意向を発表。 現時点で山火事の原因として有力視されているのは、先週ハワイを通過したハリケーンの強風でなぎ倒された電柱のパワーコードの火花が、 例年になく乾燥していた樹木に着火したという説。 ハワイの電力システムの老朽化、及びそのアップグレードの立ち遅れは、問題視されながらも野放しにされ続けており、現地の電力会社に対しては今週住民から集団訴訟が起こされているのだった。 また脆弱な電柱やパワーコードがハリケーンの強風でダメージを受け、それが原因の山火事が起こるリスクが予測されていたにも関わらず、 早い段階で送電をカットしなかったことに対しても島民の批判が集中。 しかしこれに対して電力会社側は、病院設備から消火作業に至るまでに電力が必要であることを強調。送電カットというオプションが無かったことを説明。
それ以外に島民の怒りと批判が集まっていたのが、山火事を知らせる警報アラームが意図的に使用されず、そのために島民の避難が遅れたこと。 これについても、マウイの救急部門は「マウイで警報アラームが使われるのはもっぱら津波の際。そのため警報を使用して 市民が津波だと勘違いをした場合、 高台に逃れようとして、逆に山火事エリアに向かって避難してしまうことが懸念された」と釈明したものの、金曜には責任者が辞任。
アメリカの他州では洪水や大気汚染、子供が誘拐された際のアンバー・アラートまでがスマートフォンで通達されることを考えると、警報に頼ること自体に無理があるようにも思えるけれど、 遺体回収が出来ない人々も含めて今回の山火事の犠牲者の総数は1300人に上る見込み。ちなみに2020年の国勢調査によればマウイ島の人口は1万2000人。 2200の建物が焼失し、ラハイナだけで面積にして2,170エーカーが焼失。週末の段階でラハイナの山火事鎮火率は約90%。 マウイの西側斜面で発生した別の山火事では678エーカーが焼失し、週末の段階で鎮火率は80%。 島内の他の2件の火災は完全鎮火が伝えられる中、マウイ島の再建にかかる総費用は少なく見積もっても55億ドル。そのうち保険で賄われるのは32億ドル。 しかしこれだけの災害が起こった後では、カリフォルニア州のように今後保険会社がハワイのビジネスから手を引くケースも十分にあり得る状況。
マウイの山火事は自然災害に加えて、インフラ整備を放置した人災の側面もあるけれど、昨年2022年だけで自然災害が世界経済に与えた損失額は 3,130億ドル。 このうち保険が適用されているのは1,320億ドルのみ。 これから先は世界的に自然災害対策、及び自然災害に耐えるインフラ整備が、国の経済と将来を左右する課題になることが確実視されるのだった。



Big Short Part 2よりアメリカ経済を脅かすのは?


今週アメリカの金融メディアが注目したのが、2008年にサブプライム・ローン破綻によるファイナンシャル・クライシスを予見したショート取引で一躍注目を浴びたサイオン・アセット・マネジメントの創設者、 マイケル・バリーが、再びアメリカ経済破綻に賭けた大勝負に出たというニュース。 2008年のショート取引は「Big Short (邦題:マネー・ショート 華麗なる大逆転)」というタイトルで映画化されたのは周知の事実。 映画の中でクリスチャン・ベールがそのキャラクターを演じたマイケル・バリーは、近年「Big Short Part2」を目論んでいると語り、再び大々的なショート取引を行うと公言してきたけれど、 今週の月曜に公表された証券取引書で明らかになったのが、彼がS&P500とナスダック100の下落に16億ドルを賭けるオプション・トレードに出た様子。
金融業界では、来年早々見込まれていたリセッションが「緩やかなソフト・ランディングになる」という見通しから、「回避できる」との強気の姿勢が強まる中、 今週にはS&P500が「史上最高価格更新は時間の問題」と言われながらも値を下げていたことから、 メディアが「マイケル・バリーの読み通り、これから米国市場破綻が起こるのでは?」と危機感を煽っていたのだった。
マイケル・バリーは2001年のドットコム・バブルがはじけた際にもハイテク株の空売りで大きな利益を上げたことから、 空売りのエキスパートとして扱われるけれど、サブプライム・ローン破綻の際は3年前の2005年から空売りに出るという早過ぎるタイミングで、 逆に苦しんだ様子は映画に描かれていた通り。また近年では、テスラ株が743.44%というメガ・リターンを記録した2020年に 同社株を空売りする失策を演じたのは有名なエピソード。 事実、右上のビジュアルが証明する通り、マイケル・バリーの市場の読みは 世間が思い描くほどは正確ではないのが実際のところ。
そんなマイケル・バリーの空売りよりも、今週 経済&金融界がこぞって危惧したのが中国経済の突如の減速。 中国はそもそも政府による経済データが 実際よりも良い数値で発表されることで知られるけれど、少し前からデフレに陥った中国では 小売り成績から、工業生産、固定資産投資までが、 いずれも目標値を下回り、失業率が上昇中。特に16〜24歳という若い世代の 今年6月の失業率は何と21.3%。大学生は就職を避けて、大学に居座るために わざと成績を落す一方で、「両親の面倒を見る」と称して、働かずに自宅に引きこもる若者が急増中。 中国人民元が米ドルに対して15%価値を下げていても、国内需要の衰えでデフレ現象が起こっているのだった。
アメリカにとって中国は長きに渡って第1位の貿易パートナーであったけれど、生産力、消費力の双方が衰えたことを受けて、目下その地位に取って代わったのがメキシコ。 更に減速が続けば「第2位の貿易パートナーの地位はカナダに移る」と言われるけれど、 テスラの売り上げの22%、アップルの売り上げの19%、ナイキの売り上げの14%を担う中国の消費力低下は、確実にアメリカ経済の減速を招くもの。 もちろん中国政府はその対策として、利下げを含む金融緩和策を急いでいるけれど、アメリカが危惧するのは中国が所有している多額のアメリカ国債売却に動くこと。
そんな中、アメリカ国内ではパンデミック中に増えた平均世帯の過剰貯蓄が今四半期に枯渇すると見込み。そこへ来て10月から再び支払いが始まるのが パンデミック以降、一時的に支払いが保留されていた学費ローンの返済。そのため学費ローンを抱える人々が、様々な支払いをクレジット・カードに依存すると見込まれるけれど、 2023年第2四半期に総額1兆ドルを突破したことが報じられたばかりなのがアメリカのクレジット・カード・ローン。その支払い滞納率は7月の段階で、2012年以降最高値となる7.2%。
そのためマイケル・バリーが予測するまでも無く、アメリカ経済は安泰には程遠いけれど、 多くの経済専門家が「先進諸国の中では、破綻までに最も時間を要する」と予測する程度に底力があるのがアメリカ経済。 そのため次なるファイナンシャル・クライシスがやって来る場合、サブプライム・ローン破綻と同様に、「マイケル・バリーの予言から3年は掛かる」という冗談交じりの指摘が聞かれたのが今週。 それと同時に「3年もタイミングがずれた場合、果たしてそれが正しい経済予測と呼べるのか?」という声があるのもまた事実なのだった。



End of TV、ジュリアーニがまたトラブル、恐るべきAI


アメリカで視聴率調査を行うニールセンのリサーチ結果から明らかになったのが、 2023年7月にアメリカ史上初めて ブロードキャストとケーブル局の放映が TVディスプレーの総使用時間の50%を切ったこと。 すなわちストリーミングを含むインターネットのビデオ・コンテンツの視聴が、歴史上初めて 従来のTVチャンネルの視聴を上回ったのが先月。 中でもネットフリックスやアップルTV+に代表されるストリーミング・サービスはTV使用時間の38.7%占めていて、こちらは増加の一途。
スーパーボウルやNBAファイナルのような視聴率が高いスポーツ・イベントが開催される場合は、未だ強さを見せるのがブロードキャストやケーブル・チャンネルの放映。 しかし7月は女子ワールドカップ開幕で若干TVチャンネルの視聴率がアップしただけで、夏の期間はアメリカ4大プロ・スポーツのうち、試合が行われているのは ホッケーに次いで視聴率が低いベースボールのみ。加えてヴァケーション・シーズンであることも手伝って TVチャンネルの視聴時間が減る時期であるのもまた事実。
しかしエンターテイメント業界では、ブロードキャスト&ケーブル局は既に沈みゆく船。3大ネットワークの1つであるABCや、ケーブル大手のFX、ディズニー・チャンネル、ナショナル・ジオグラフィック、 ESPN等をTV部門を持つディズニーは、これらのチャンネルにマーケット・ヴァリューがあるうちに売却を考えている真最中。 ワーナーブラザース・ディスカバリーについては、合併時にケーブル局であるディスカバリーのパワーが強かったこともあり、まだTVチャンネルにコミットする方針を強調しているけれど、 もはや現代人のTV離れはトレンドではなくライフスタイル。逆戻りは見込めないと言われるのだった。

今週ジョージア州でトランプ氏同様に刑事訴追されたのが元NY市長で、トランプ氏の個人弁護士を務めるルディ・ジュリアーニ。 彼は裁判費用を捻出するために、昨年オフィス兼自宅にしていたNYのコンドミニアムを売りに出しており、トランプ氏に対しても嵩む裁判費用の援助を求めたことが伝えられるのだった。 そのジュリアーニを相手取って、今週新たに起こされたのが彼の詐欺行為に対する訴訟。訴状によれば、ジュリアーニは熱心なトランプ支持者の農民グループから、 アンチ・バイデンのドキュメンタリー製作費として多額の資金を集め、そのうちの30万ドルを着服。 しかしドキュメンタリーが一向に製作されないことを怪しんだ農民達が調べた結果、全く話が進んでいなかったことを突き止めたというもの。
同様の詐欺行為には、トランプ氏のアドバイザーであったスティーブ・バノンも、「メキシコとの国境にトランプ支持者の力で壁を建設する」として寄付金を集め、 僅かに建設された壁のエリアのツアーを行っては出資者を欺いていた”We Build the Wall”チャリティがあるけれど、 トランプ氏が大統領任期中にバノンに対して恩赦を与えていたことから、裁きが下ることが無かったの彼に対する連邦訴追。しかし大統領恩赦の権限が及ばないNY州司法省が 同じ容疑で 昨年9月にスティーブ・バノンを訴追しており、こちらは現在公判待ちになっているのだった。

AIが人間の声や容姿のディープ・フェイクをクリエイトすることは周知の事実。そのためパスワードの代わりにヴォイス・レコグニションのシステムを使用するリスクが 指摘されているけれど、今週報じられたのが キーボードをタイプする音からAIがパスワードを盗むことが可能であるという事実。 この能力はZOOMチャットやスカイプ等でのコミュニケーション中に捉えた音声でも発揮されるとのこと。そのためパスワード・マネージャーを使用する方が、いちいちパスワードをタイプをするよりも セキュリティが守られるようなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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