Aug 21 〜 Aug 27 2023

End of WFH & USD, Nvidia, Etc."
自宅勤務&USDの終焉!?、エヌビディア&AIビジョン, Etc.


今週もアメリカでは次から次へと起こる自然災害のニュースに報道時間が割かれたけれど、 それ以外で大きく報じられたのがトランプ前大統領がジョージア州フルトン・カウンティの刑務所に出頭したニュース。いかにもトランプ氏らしく、プライム・タイムのライブ放映を狙った出頭で、 それまでの3回の刑事訴追とは異なり、今回はマグショットと呼ばれる逮捕時の写真撮影が行われ、それと共に囚人番号P01135809、自己申告の身長体重、目と髪の色等のIDが公開されたけれど、 それによればトランプ氏は身長190.5cm、体重97.5キロ。 2018年にホワイトハウスのドクターがレポートした時よりも、体重が約11キロ軽いことから、この数値はあくまで”自己申告”のものだという憶測を呼んでいたのだった。
その前日にはトランプ氏を除く 2024年共和党大統領候補8人によるディベートが行われたけれど、現時点で支持率第2位のフロリダ州知事、ロン・ディサンティスが 支持拡大に至らなかったのに対して、存在感をアピールしたのが 支持率第3位のインド系アメリカ人アントレプレナー、ヴィヴェック・ラマズワミー(38歳)。 彼にはディベート後24時間で約45万ドルの寄付が寄せられたとのことが伝えられるのだった。
ディベート中 にトランプ氏を批判したのは8候補中4人で、その顔ぶれはマイク・ペンス前副大統領(批判回数1回)、ニッキー・ヘイリー元国連大使(2回)、クリス・クリスティ元NJ知事(1回)、アサ・ハッチンソン前アーカンソー州知事(2回)で、アンチ・トランプ派のハッチンソンを除く3人は、トランプ政権に関わっていた顔ぶれ。 ディベートの視聴者数は1280万人で、これはトランプ氏が2015年に出馬した際の視聴者数2400万人の約半分。一方のトランプ氏は同じ時間帯にX(元ツイッター)上でタッカー・カールソンとのインタビューを放映。 こちらは”2億5000のビュー”を獲得したと言っているけれど、この数はフィードに出て来たポストを眺めただけでカウントされることから、実際に45分間のインタビューを視聴した人数は不明となっているのだった。



End of WFH, RTO or GTFO


このところ大手企業を中心に高まっているのが”RTO”、すなわちリターン・トゥ・オフィスの圧力。 理由はフルタイム・リモート・ワークの従業員の生産性の低さがデータによって証明されるようになったためで、大手企業ほどリモート・ワークが始まってから生産性だけでなく、 チームワーク、イノベーティブなアイデアの低下が指摘されて久しい状況。
スタンフォード大学の経済学者、ニック・ブルームの調査によれば、フルタイムのリモート・ワーカーの生産性は、オフィスワーカーに比べて10〜20%劣るとのことで、 これは労働統計局の調べで 過去数四半期に渡って 米国の労働生産性が鈍化しているデータと一致するのだった。
今週にはゴールドマン・サックスが改めて週5日のオフィス勤務の徹底を打ち出したけれど、同社はリモート・ワークを嫌うCEOデビッド・ソロモンの経営下で、 既に65%の社員が週5日オフィス勤務になっているとのこと。 他にアマゾンもコーポレート・スタッフに対しては週5日のオフィス勤務を義務付けており、J.P.モルガン・チェースはまずはエグゼクティブ、 その後 全従業員にオフィス勤務が義務付けられる見込み。フェイスブックの親会社メタも9月から週最低3日のオフィス勤務がスタート。 アップルも 「自社カルチャーであるフェイス・トゥ・フェイスのコラボレーションを取り戻す」として最低週3日のオフィス勤務を通達。 世界最大のアセット・マネージメント会社、ブラックロックも9月からNY本社勤務の社員に対して 週4日のオフィス勤務を義務付けているけれど、 そうでなければ同社はハドソン・ヤーズ内の15フロア、計9万3000平方メートルのオフィス・スペースが無用の長物になってしまうのだった。
同様のRTOのポリシーはディズニー、グーグル、IBM、セールス・フォース、スナップ、スターバックス、テスラ等の大手企業が次々と打ち出していて、 リモート・ワーク増加で業績を上げたZOOMでさえ、同社CEO エリック・ユアンが “RTO or GTFO.(Retirm to Office or Get the F#%k Out)” をマントラのように唱えているとのこと。 今週には ユアンが 「ZOOMチャットでは信頼を築くのは難しい」と自社ビジネスの限界を公言していたほど。
当初、大手企業は 従業員のバックラッシュを考慮して、RTOの生温いポリシーを打ち出していたものの、昨今ではユアンの言葉通り、「RTOを拒むのならば、”GTFO”、すなわち自主退社をしろ」という 強行ムード。従業員も 景気の先行き不安から逆らえない状況になっているのだった。
前述のスタンフォード大学の経済学者、ニック・ブルームの調べによれば、現在アメリカでオフィスに週5日のフルカムバックをしている従業員は全体の60%。週1〜4日オフィスに出向くというハイブリッド勤務は30%。 そして完全リモートで働くのは10%。ブルーム氏は今後長期的に ハイブリッド勤務が50%、フルタイム・オフィス勤務が40%、完全リモートが同じ割合で推移、もしくは若干減少すると予測しているけれど、 その実現にはリモート・ワークのモデル改善、およびテクノロジーの進化が条件として挙げられているのだった。



Big Short Part 2よりアメリカ経済を脅かすのは?


今週サウス・アフリカで行われたのがBRICS/ブリックスの首脳会合。ブリックスは、ブラジル、ロシア、インド、中国、サウス・アフリカの新興5カ国の経済協調関係を指す言葉で、 第15回目となる今回の会合の目的は、新たな共通通貨確立の検討、ブリックス新規参加に申し込んだ国の受け入れ、ブリックス加盟国間の支払いシステム、”De-Dollarization(ドル離れ)”対策、 そしてG7に対抗する勢力の確立。早い話が、米ドルを世界の基軸通貨とする現在の世界経済のシステムに終止符を打ち、アメリカが米ドルを武器にした経済制裁で 他国の人権問題や領土干渉に口を出して、世界を仕切る時代の終焉を目指すことを明確にしたのがブリックス。
G7諸国とはまだまだ格差があると思われてきたブリックスであるけれど、実際に今回の会合前の段階でG7の7カ国のGDPの合計は44.9兆ドル。それに対してブリックス5カ国のGDPの合計は、そのほぼ3分の2に当たる27.5兆ドル。 しかし国民1人当たりのGDPの伸び率では既にG7を上回っているのがブリックスで、 会合では ブリックス参加申請をしていた23カ国の中からアルゼンチン、エジプト、エチオピア、イラン、サウジ・アラビア、アラブ首長国連邦の6カ国を2024年1月1日から新メンバーとして受け入れることを表明。 これによってブリックス11カ国のGDP合計は30.5兆ドルとなり、グローバルGBDの36%、世界人口47%を擁する経済協調体制に拡大しているのだった。
最も注目されたのは、金本位制度に基づくブリックス共通通貨の確立に動くか であったけれど、今回は貿易にドルを使わず自国通貨を使う方針、すなわちドル離れを進めることで足並みが揃っただけ。 ブリックスのラインナップは新メンバーも含めて信頼や協調とは無縁の国々とあって、新通貨をクリエイトしたところで それが使用されるかはまた別問題。 そもそも経済状態が異なる複数の国で共通通貨を確立するのが難しいことは既にユーロの失敗が証明しているのだった。
アメリカにとって気がかりなのは、サウジ・アラビア、イラン、アラブ首長国連邦といった産油国が加わって、世界の原油市場の80%をブリックス諸国が握ることから、 それまで”Petrodollar/ペトロダラー(日本語で言うオイル・マネー)”の名称でドルで行われてきた原油取引が、今後は取引国間の通貨で行われるようになること。 そうなれば世界の国々が貿易目的でドルを保有する必要がどんどん無くなっていくことは明らかなのだった。
ブリックスは今回加盟に申請した23カ国だけでなく、全40カ国が参加に興味を示しているとのことで、今後もメンバーを増やしていくのは確実視されるところ。 前述のようにブリックス諸国は協調性のある顔ぶれではないものの、反米、反ドルを掲げて 「The enemies of my enemy is my friends」という括りで団結を保っているのが現状。 しかしその不安材料と言えるのが、ブリックス最大かつ、世界第二位の経済大国、中国が深刻な経済危機を抱えていること。
つい最近のUBS(ユニオン・バンク・オブ・スイス)のレポートによれば、中国の地方自治体の80%が 不必要な公共施設やインフラ整備建設を名目に借り入れた多額の借金の 利息さえも支払えないほどキャッシュ不足に陥っているようで、その負債総額は推定で10〜12兆ドル。 また先週には、過去2年間に800億ドルの損失を出した中国の大手不動産デベロッパー、エヴァ―グランデが NYで連邦破産法適用を申請。 中国に本社を構えるエヴァ―グランデがわざわざアメリカで破産手続きをしたのは、来年にかけ返済期限が迫る数十億ドルの負債の返済能力が無いためで、 複雑な再建プロセスを進めることにより時間稼ぎの必要があるとのこと。その負債総額は3000億ドル以上と言われるのだった。
中国のもう一つの不動産大手、カントリー・ガーデンも2023年上半期に76億ドルの赤字を計上する見込みで、 今週ウォールストリート・ジャーナルは “China’s 40-year boom is over(中国の過去40年間の経済ブームは終わった)” と第一面のヘッドラインで謳ったばかり。 同じく”エコノミスト”誌も “China’s economy won’t be fixed.(中国経済は修復不可能)”と宣言しており、 世界各国がドル離れをして、アメリカの世界のリーダーとしての地位が揺らいだとしても、中国がそれに取って代わることは無いと見込まれるのだった。



絶好調のエヌビディアとAIビジョン


今週2023年第2四半期の業績を発表し、前四半期から88%アップ、前年比で101%アップとなる135億ドルという記録的な売り上げを計上したのが 半導体メーカーのエヌビディア。 グーグル、メタ、オラクル等、大手IT企業 ほぼ全社をクライアントに持つエヌビディアの”モンスター級”とまで言われた業績の絶好調ぶりを受けて、今やAIは 1995年当時のインターネットのように 開発資金が押し寄せるドル箱業界。昨今では ”AIゴールド・ラッシュ”という言葉が頻繁に聞かれ、 トップAI企業が集中するカリフォルニアでは、パンデミック以降 すっかりホームレスの巣窟になってしまったサンフランシスコ復興のために AI企業誘致・優遇に動いていることが伝えられるのだった。
インターナショナル・データ・コーポレーションの見積りでは2022年〜2026年までの間に、 AI企業への投資は毎年27%ペースで伸び続けるとのこと。 これは1995年〜2000年までの間にIT業界に投じられた資金が毎年24%ペースで伸び続けていたのを上回る数字。
AI業界は現在、「携帯電話にとってのアイフォン登場時と同様の進化とエキサイトメントを迎えている」とのことだけれど、 実際にAIチャットボットは 今や労組と経営側の賃金交渉や雇用主と従業員の報酬パッケージの交渉にまで用いられる時代。 シリコン・バレーに本社を構えるペクタム社は、賃金交渉専門のチャットボットを開発。その叩き台になったのは ウォルマートが仕入れ業者と交渉する際に実用化しているチャットボットだそうで、既にAIが人間と駆け引きをする時代に突入しているのだった。
7月末に発表された米国労働市場動向調査のレポートによれば、2030年までに男性の仕事の60%、女性の仕事の80%をAIが取って代わり、 国内の総労働時間の3分1をAIが担うとのこと。 また経営コンサルティング大手、プライスウォーターハウス・クーパースは、「AI、ロボティクス、その他のスマート・オートメーションは、2030年までに世界のGDPに最大15兆ドル分の貢献をする」と予測。
ゴールドマン・サックスのレポートによれば、AIは世界の3億人の仕事に影響を及ぼし、その多くはホワイト・カラー・ジョブ。 アメリカ国内では 事務・管理サポート職がAIによって46%自動化され、次いで法務業務の44%、建築デザインおよびエンジニアリング業務の37%、 生命、物理、社会科学関連の36%、金融業の35%が AIに取って代わられるとのこと。 逆にAI オートメションの影響を受け難いのは、清掃、設置、メンテナンス、修理、建設、掘削業。
国別では香港、イスラエル、日本、スウェーデン、アメリカが最もAI普及で影響を受けるトップ5。逆に影響を受け難いのが中国本土、ナイジェリア、ヴェトナム、ケニア、 そして最もAIの影響を受け難いと見込まれるのは世界最多の人口を抱えるインド。 現時点ではAIオートメーションの拡大が 国にとって吉と出るか、凶と出るかは定かではないのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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