Oct 23 〜 Oct 29 2023

X Ad, Reservation Resale , Bot Pharma, Etc.
X=イーロン・メディア, NYレストラン予約リセール, Bot薬剤師, Etc.


引き続きイスラエルとハマスの戦争が大きく報じられていた今週のアメリカで、下院議会がようやく漕ぎつけたのが辞職に追い込まれたケヴィン・マッカーシーの後任議長の選出。 3人の有力候補脱落後に選出されたのは 全く無名でルイジアナ州選出、保守系右翼のトランプ派の中でもエクストリームな保守右派のマイク・ジョンソン(51歳)。彼は今年1月に「人口中絶ゼロを目指す」と宣言。「州政府は同性間の逸脱した性交を禁止すべき」と ゲイセックスの犯罪化を謳い、2020年大統領選挙結果を覆そうとした中心人物。過去の功績が無く、ここまで極端な思想の持主が大統領、副大統領に次ぐ米国政府No.3のポジションに就いたことで、ワシントンは「ようやく下院が機能し始める」という安堵感とは程遠い不穏な空気で、民主党側は彼の極右思想、及び彼を支持した共和党議員の投票記録を2024年選挙の武器にする構え。 トランプ派であるとは言え、彼の議長選出が2024年の大統領選挙でトランプ氏に有利に働くかは、極めて微妙なのだった。
そのトランプ氏は、2020年大統領選挙のジョージア州での不正選挙裁判で、共犯として訴追されていた弁護団から今週4人目の弁護士が有罪を認めて司法取引に応じたことから、 益々不利になったのがその情勢。マグショット(逮捕時の写真)では満面の笑顔だったブロンドの美人弁護士、ジェナ・エリスは 2020年の大統領選直後、「2000人以上の死者がバイデン氏に投票した」というでっち上げを主張し、ソーシャル・メディアに拡散した張本人。罪状認否では涙ながらに罪を認めており、今後は更なる捜査に協力し、検察側の証人として出廷することになっているのだった。
一方NYで行われているトランプ氏、及びトランプ・オーガニゼーションに対する詐欺罪の裁判では、裁判関係者への個人攻撃を禁ずる判事の再三の命令を無視した トランプ氏に1万ドルの罰金が命じられ、腹を立てたトランプ氏が法廷を去る一幕が見られており、他の共和党大統領候補が3回目のディベートを迎える中、 トランプ氏は支持率を維持しながらも、4つの刑事訴追と闘う状況。 ライバルと見なされたロン・ディサンティスは大口ドナーが追加献金を打ち切ったことが伝えられる中、マイク・ペンス前副大統領の選挙活動は既に赤字が報じられ、 支持率が低い候補は予備選が始まる前に金銭面で脱落する可能性が見込まれるのだった。



あれから1年、ユーザーと広告主が離れるXがイーロン・メディアに


今週、10月27日でイーロン・マスクがツイッター(現在X)を買収して1周年を迎えたけれど、週明けにイーロン・マスクがポストしたのが、Xのプレミアム・サブスクリプションが間もなくスタートする通達。
それによれば サブスクリプションには2レベルがあり、安価な方はプラットフォーム上のフルサービスが利用出来るものの 広告が入るパッケージ、高額な方は広告が入らないパッケージ。 しかしその料金や、既に有料のツイッター・ブルーとの兼ね合い等、一切の詳細は未公開のまま。 サブスクリプションを希望しないユーザーは、投稿を読んだり、ビデオを視聴したり、アカウントをフォローするだけの「読み取り専用」アカウントの作成は可能で、 サブスクリプションが必要なのは Xに投稿するユーザーのみ。X側は有料化について「ボット(ロボット)・アカウントを排除するためで、収入目当てではない」と強調しているけれど、 ユーザーはこの措置に猛反発をしているのだった。
ツイッター買収前から「ボット・アカウント一掃」を謳って来たマスクであるけれど、事実ボット・アカウントは ミスインフォメーション、ディスインフォメーションの発信元。 世の中を扇動する意図から、一般ユーザーのアカウントよりもアクティブで、内容も刺激的であることからリツイートされる傾向も顕著。 AIを使用してソーシャル・メディア・アカウントを検証するCybra/サイブラ社によれは、2022年の段階でXの全アカウントの11パーセントがボット・アカウントであるという。
それとは別に今週、マーケティング・コンサルタントのEbiquity/エビクィティ社が明らかにしたのが、大手広告主の殆どが Xでの広告掲載をストップしている実態。 これはつい最近、XのCEO リンダ・ヤッカリーノとマスクが「大手広告主の90%が戻ってきた」と公式にコメントしたのとは完全に矛盾する内容。 エビクィティ社は 大手広告企業の上位100社中、70社をクライアントに持っており、そのうち現在Xで広告を展開するのは僅か2社。 世界最大の広告主の大多数はイーロン・マスクによる買収直後から広告掲載を停止して久しく、その中に名を連ねるのはグーグル、ウォルマート、GM等、文字通り超大手。 プライベート企業となったXにとって広告収入の激減はキャッシュ・フローの激減、すなわち経営難を意味するものなのだった。
マスクの経営下になってから減っているのはユーザーもしかりで、昨年9月に比べるとユーザー数は30%ダウン。ユーザーがXを閲覧する時間は前年比2%減、投稿数は4%減。 さらにはコスト削減を理由にレイオフを続けた結果、従業員数も80%減。「フリー・スピーチ」を謳うマスクが、セキュリティ&セイフティ部門を解散させたことから、 現在は戦争関連の過激な誤報の取り締まりを 各国政府からの圧力を受けても行えない有り様。
唯一増えたのはイーロン・マスク個人のフォロワー数と彼の投稿へのトラフィックで、こちらは昨年9月から96%アップしているのだった。
すなわち”ソーシャル・メディア”よりも”イーロン・メディア”になりつつあるのが現在のX。 つい最近出版されたイーロン・マスクのバイオグラフィーの著者、ウォルター・アイザックソンが、その出版インタビューで 「社会性が欠落し、人間心理が理解出来ないイーロン・マスクが ソーシャル・メディアを買収したのは、彼のこれまでの人生で最大の過ち」と語っていたけれど、現時点では全くその通りと言わざるを得ないのだった。



NYレストランを悩ませる予約リセール


NYで、昨年夏頃から盛んに行われるようになったのが、人気レストランの予約転売。 今やコンサート・チケットからオンライン販売のリミテッド・エディションのコラボ・プロダクト等を ボット・アカウントで買い占めて、高額の利益を乗せての転売するのは ビジネス・カテゴリーとして成立して久しいけれど、それがNYの人気レストラン予約でも盛んに行われていることが問題視され始めているのだった。
以前からレストラン予約の転売は小規模に行われてきたけれど、それは苦労して予約したレストラン・ディナーの直前にコロナに感染したようなケースで、 「予約に手間が掛かった分、キャンセルするより誰かに買い取って欲しい」といった程度のもの。 しかし昨今では、人気レストランのオンライン予約がスタートした途端に完売になるのが常で、メディアで評判のレストランに出掛けるには、 転売サイトから予約を買い取るしか手段がなくなりつつあるのだった。そんな転売が行われているのは”Appointment Trader”、”ResX”、”Dorsia”等の予約転売専門のウェブサイトで、 お値段は高いものになると300ドルを超えるケースもあるのだった。
レストラン側にとってこれがビジネスの打撃になるのは、転売で予約が売れなければ埋まらないテーブルが出てしまうこと、 その場合、転売業者は偽のクレジット・カード情報で予約を申し込むことからキャンセル料のチャージも出来ないこと。 また転売業者は、電話番号やEメール・アドレスも専用のフェイクを使っているので、レストラン側ではIDの特定が不可能。 そのため店側では オンラインで受ける予約を減らして、代わりにウォークインの受け入れを増やしたり、 前日に電話をして予約を確認するなどの対策を講じてはいるものの、人気レストランほど焼石に水の状態。
現時点でターゲットになっているのは、ミシュラン・スターを失ったもののセレブ顧客が多いウエスト・ヴィレッジのイタリアン、カルボーンや、 同じくイタリアンのドン・アンジー。2023年版世界のベスト・バー・ランキングで第2位に選ばれたダブル・チキン・プリーズ、トライベッカにあるワインバーのファーラ、 ジョージ・クルーニーのお気に入りでも知られるステーキ・ハウス、4チャールズ・プライム・リブ等で、確かに予約が極めて難しいレストラン。 転売予約を購入する大半は旅行者のようで、それ以外は記念日等のスペシャル・オケージョンのために高額を支払ってもゆとりがあるニューヨーカー。
カルボーンや4チャールズ・プライム・リブのように、予めレストラン側が常連客のためのテーブルを確保し、残りの予約をオンラインで受け付けているような店であれば、 転売予約に大金を投じても客層に失望することは無いけれど、ドン・アンジーのようなカジュアル・レストランの場合、夏休みやホリデイ・シーズンには旅行者に囲まれながら、 全くNYらしくない雰囲気でのディナーになってしまうリスクもあるのだった。
パンデミック以降、NYのレストラン・シーンは一向に盛り上がらない状態が続いているとあって、こうした予約転売はレストラン業界にとって深刻な問題。 そんな不振ぶりが影響して、つい先ごろ発表された「最もグルメ・レストランが多い米国都市のランキング」で、NYは屈辱の第6位。1位がサンフランシスコなのは当然としても、 マイアミにも抜かれてしまう情けない状態になっているのだった。



薬剤師の仕事もAIに奪われる!?


今週、GMのドライバーレス・カー部門、”クルーズ”が度重なる事故や問題を理由に、カリフォルニア州で営業停止となったニュースが報じられ、 テスラの自動運転テクノロジーも「命を預けるほどは信頼できない」と言われて久しいことから、「AIによって奪われる仕事リスト」から暫しの間は消えると言われたのが車の運転手。 逆に リストの上位にあることが今週報じられたのが薬剤師。
来週には 全米で薬剤師のストライキが予定されており、アメリカでは薬剤師は看護師同様に重労働な割には薄給で知られる職業。 近年 薬剤師は、処方箋薬の調剤に始まり、薬関係の事務業務、患者からの質問への対応を含むケア業務など、仕事が多岐に渡っており、 パンデミック中に辞めた人々が多いことから人手不足。しかもドラッグストア・チェーンの中には都市部を中心に24時間営業のビジネスもあり、長時間勤務を強いられることから、 過剰労働による ”Burn Out(燃え尽き)症候群”が 問題視されて久しい職種。
それを緩和するためにウォルマート、ウォルグリーン、ハイヴィー、コーボーンズなどの大手チェーンを中心に進んできたのが、処方箋の準備と包装をAIテクノロジーに依存する「セントラル・フィル」への移行。 処方箋薬の手渡し規定が無い州では、用意された処方箋薬をロッカーで受け取る完全無人化に移行しつつあるのが現在。 更に管理業務、事務処理、そして患者のケアをこなすロボット、AIアプリが徐々に開発された結果、大手であればあるほど こうしたバックエンド業務を確実にAIが担い始めているのだった。
そのAIプログラムは、患者の服薬量が守られているかのチェックに始まり、処方箋薬の在庫管理、ニーズの高い処方箋薬の需要を予測して発注する等の業務を人間より確実にこなすようになっており、 次の段階で進むのが 病院、スーパーマーケット、ドラッグ・ストア等、全ての薬局でAIを導入し、日常的な患者の質問や 心のケア等を AI搭載の人型ロボットが対応する完全無人薬局への移行。
薬剤ロボットの場合、路上運転のように不確定要素への対応が殆ど無い業務とあって、AI開発も比較的簡単のよう。加えてAIは人間より短時間に、休み無く、間違いのない仕事をこなしてくれるので願ったり叶ったり。 また性病治療薬やヴァイアグラのような薬品の場合、人間の薬剤師が絡まない方がプライバシーが守れる利点も指摘されるのだった。
現在の薬剤師不足も AI導入が早まる大きな要因の1つで、例え薬剤師の労働組合が来週からのストライキで給与のアップや待遇改善を勝ち取ったとしても、 その後は AI完全導入までの橋渡し業務になることは もはや避けられないのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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