Dec 10 〜 Dec 16 2023

Abortion, Donation, Compartibility, Etc.
母体危険でも中絶不可?, 財界トップと大学, 恋愛における経済互換性, Etc.


今週火曜日にアメリカを訪れたのがウクライナのゼレンスキー大統領。昨年米国下院を訪れた際にはヒーローとして迎えられたゼレンスキー氏であるものの、 ウクライナ戦争支援に否定的な共和党が多数を占める下院での今年のリアクションは「ウクライナの闘いは、自分達がフォーカスすべきことではなくなった」という厳しい現実を突きつけるもの。 世論調査でも、「アメリカはウクライナ戦争にお金を費やし過ぎている」という意見が増え続けており、アメリカがウクライナ戦争にこれまで投じてきた資金や武器は現時点で750億ドル。 時間的にも、資金面でも終わりが見えない状況には、ウクライナに同情していたアメリカ国民もウンザリしつつあるけれど、 それでも米国下院は木曜に3億ドルのウクライナ支援を含む予算案を可決しているのだった。
一方ハマスと戦争中のイスラエルに対しては、停戦を求める国際的圧力がどんどん高まり、バイデン大統領は今週、イスラエルのネタニエフ首相に 「これ以上の攻撃継続は国際的な孤立を招くだけ」と警告。しかし、ネタニエフ首相は「ハマスを亡ぼすまで攻撃の手を緩めることはない」という意向で、 イスラエル国内でもネタニエフ首相の支持率は下降線を辿っているのだった。
また今週にはバイデン大統領の息子、ハンター・バイデンが銃不法所持に加えて脱税でも刑事訴追を受けたことに後押しされた下院が、僅少差で可決したのがバイデン大統領弾劾に向けて正式な捜査に入る決議案。 これはバイデン氏が副大統領時代にハンターが中国企業を相手に行っていたビジネスで、政治的ポジションを利用したかを問うもので、長きに渡って「疑いはあっても、証拠が無い」という理由で野放しにされてきた容疑。 それだけに共和党側の目的は、弾劾よりも大統領選挙でのバイデン氏にダメージを与えることで、民主党内部でも これを機に バイデン氏より若い候補者の擁立を目指す動きが少しずつ見られているのだった。





死産確実、母体が危険でも中絶が出来ない!?


今週、全米で大きく報じられたのが、妊娠中のテキサス州在住の女性が、 母体の危険を理由に人工中絶手術を受けようとしたところ、テキサスの厳しい妊娠中絶規制によって阻まれ、 やむを得ず州外で中絶を行う羽目になったニュース。
問題の女性はケイト・コックス(31歳、写真上左)で、妊娠21週目にして 胎児が致命的な疾患を抱え、死産が確実であること、 そして中絶手術を受けなければ将来子供を宿す可能性が無くなると医師に通達されたことから、人工中絶を希望。 テキサス州は「医療上の緊急事態」以外の中絶は基本的に認められないことから、先週木曜に地方裁判所から中絶認可を取りつけ、 裁判所は彼女が無事に中絶手術を受けられるよう、州政府に対して14日間の接近禁止令を出したのだった。
しかし翌日金曜に、テキサス州のパクストン司法長官(共和党)は「裁判所の判断とは無関係に、中絶に協力する医師や医療機関、手助けをする友人らに刑事訴追をする用意と可能性がある」と脅迫しながら、上告。 そして同日夜には、テキサス州最高裁判所が「上告審議中は中絶を行わないように」と命じ、週明け月曜には ケイトが抱える「医療上の緊急事態」について、 さらなる説明を求めるという引き延ばし作戦が繰り広げられたのだった。 ちなみにテキサス州最高裁は 9人の共和党保守派判事から構成されており、裁判所とは名ばかりの超右派保守機関。
ここで今さらのように問題となったのが、「医療上の緊急事態」が果たしてどのような状態を指すのかという定義づけで、 医療現場はそれを「主要な身体機能に重大な障害が生じるリスクがある場合」と定義。中絶をしなければ今後ケイトが妊娠出来ない身体になる危険があることから中絶が合法と主張。 しかし最高裁にとっての「医療上の緊急事態」は、あくまで「生命を脅かす事態」で、彼女の症状は「中絶を合法的に行うには値しない」という見解が下されたのだった。
ケイトはこの判決結果を待つ余裕が身体的に無かったことから、前述のように中絶手術を州外で受けており、 テキサス州では中絶に手助けをした人物に対して、一般市民が1万ドルの罰金を請求する訴訟を起こす権利が認められているとあって、 中絶の詳細は一切明かさない姿勢を貫いていたのだった。
ちなみにケイトは 「まさか自分が中絶を望む事態になるとは思わなかった」と語る2児の母親で、共和党と人工中絶撲滅を支持してきた人物。 果たしてこの問題が、盲目的に人工中絶に反対する人々の主張を軟化させるかは定かではないけれど、現行の曖昧な法律では、 「医療上の緊急事態」に際して、本来決定を下すはずの医療現場よりも、政治家と裁判所の判断が優先されることは明確になったのだった。



名門大学に財界トップが口出し出来るこれだけの裏事情


先週の米国下院聴聞会で、証言を求められたのがハーバード、MIT、ペンシルヴァニア大学という名門の学長たち。聴聞会の目的はイスラエルVSハマス戦争勃発と共にキャンパス内で起こった 反ユダヤ運動への対応不足についての釈明を求めるもので、その証言が顰蹙を買ったペンシルヴァニア大学学長は辞任。ハーバード学長のクローディーン・ゲイ(写真上中央)はポジションをキープしたものの、 この聴聞会は財界からの強力な圧力を受けて行われたもので、財界トップは名門大学経営に口も、お金も出したがることを改めて示す結果になったのだった。
中でも強硬派と言えたのがヘッジファンド、パーシング・スクエアの設立者で、”ベイビー・バフェット”の異名を取るビル・アクマン(写真上左)。 彼は「反ユダヤ活動を行った学生は卒業後に雇わない」と宣言。他のヘッジファンドや法律事務所が彼の扇動に従う形となったけれど、 今週NYタイムズ紙が報じたのが、そのアクマンが現在の問題以前にハーバード運営に不信感を持っていたと思しき状況。
記事によれば、ハーバード大学は2017年にインド生まれの経済学者で、ノーベル経済学賞確実とも言われるラジ・チェティ(写真上右)を スタンフォード大学からハーバードの公共経済学教授に迎えるにあたり、 そのリクルート資金の提供をアクマンに求めたとのこと。そこで彼は所有する未公開株1000万ドル相当を寄付し、「数年後に株式が公開され、価値が1500万ドル以上になった段階で、自分の承諾を得てから売却する」ことを条件に大学側と合意したという。 やがて2021年に その株式の価値が8500万ドルになった段階で、アクマンが売却指示を出そうとハーバードにコンタクトしたところ、大学側は既に彼に無許可で2020年3月に1000万ドルで株式を売却していたことを知らされ、 当然のことながら激怒。以来彼は大学側の経営姿勢を信頼していないというのがその記事の内容なのだった。 これについてアクマン自身はソーシャル・メディアを通じて、「今回の大学への不信感は自分の寄付の問題とは無関係」としながらも、「大学に資金を提供する側の意向をもっと大学経営に反映するべき」と語り、 今後の大学経営がアカデミックな功績より、経営手腕がある人材に委ねられる傾向を示唆していたのだった。
このエピソードで、ハーバード大学が決して投資には長けていないことを指摘する声が聞かれた一方で、一般庶民が驚いたのが アクマンのようなビジネス界のトップがハーバードのためにあっさり多額の寄付を行う様子。 イヴァンカ・トランプの夫、ジャレッド・クシュナーがハーバードに200万ドルの寄附金を支払って裏口入学したエピソード等は有名であるけれど、 庶民がこれまで描いていた寄附金はせいぜい100万ドル単位。しかしアクマンは、2017年の株式譲渡の前にも2500万ドルの寄付をしており、 ハーバードからの電話要請で、財界トップが1000万ドル単位で寄付をする実態を目の当たりにして、今週聞かれていたのが 「大学が大口ドナーの子供や孫の受け入れ枠を用意するのも やむを得ない」と納得する声。
また今週にはイーロン・マスクが1億ドルを投じてテキサスに新しい大学を設立する意向を発表。このことにもビジネス界のトップが 現在のアメリカの大学のリベラルに傾倒したWOKEカルチャーを嫌い、お金と口を出したがる状況が現れているのだった。
ちなみにアメリカでは、寄付をすればその分が税金から控除されるとあって、名門校の卒業生が母校に寄付をするのは極めてありがちで、それは大学の貴重な収入源。 またアメリカの大学及び、非利益団体は株式やETFでの寄付を受け付けており、これは寄付する側にとって効果的な節税対策。 キャッシュで寄付をする場合は株式やETFを売却し、そのキャピタルゲインに対する税金を支払うことになるけれど、 株式やETFをそのまま寄付をすれば、キャピタル・ゲインが減る分、それに支払う税金を減らした上で、寄付金分の税額控除を受けることが出来るのだった。



恋愛条件としての経済互換性


今週水曜にATH(All Time High/史上最高値)を更新したのがダウ工業平均株価。
その要因となったのは、その日の午後に連銀のパウウェル議長が、一連の利上げが一段落し、これからは利下げに向かう可能性を示唆したためで、 パウウェル議長は明言を避けたものの、連銀のメンバーの中から聞かれていたのが2024年中に複数回の利下げを見込む声。
それが意味するのは当然のことながら金融緩和で、ドル高が一段落し、再び融資が受けやすい状況となること。 ゼロ金利で嵩んだ借入金の利息で苦しんでいた企業にとっては明るいニュースで、 株式やクリプトカレンシー等に投資をする人々にとっても、再び市場にお金が流れ込むことを意味する大歓迎のニュース。
加えて2024年は大統領選挙の年。すなわち株価を下げる訳には行かない年とあって、市場関係者は既に来年のブル相場を予測しているのが現時点。 アメリカはパンデミック中に政府の助成金、外に出られずお金を遣わないライフスタイルで増えた預金を現時点までで丁度使い果たしたところで、 リセッションを避けて、金融緩和に向かう見通しは庶民にとっても朗報といえるのだった。
しかしそんな市場を「オーバー・コンフィデンス(自信過剰)」という声、「金回りの良さを庶民が実感するのは、まだまだ先」という慎重論も多かったのが今週で、実際に 庶民が2024年にまず直面するのがホリデイ・シーズンにクレジット・カードで支払ったショッピングやパーティーのツケが回って来ること。 アメリカは2023年に連邦債務総額が33兆ドルを上回ったけれど、クレジット・カード・ローン総額も史上最高の1.1兆ドル。 貧困層ほど、高額金利を払いながらリボ払いをしているのは世界共通。
今後貧困層にとって 更にその返済が厳しくなるのは、これまでならば手持ちのカードの限度額が一杯になれば、カードの限度額を増やすリクエストをしたり、別の新しいカードを作ったり、 金利の安いカードに支払い残高をトランスファーするなど、様々な凌ぎ方があったけれど、今後はそれがどんどんできなくなる状況。 今では新規のカード申請の約5分の1が通らず、カードの上限引き上げも14%が拒まれる状況。上限引き上げについては、 上げてはくれるものの利率も一緒に上がったり、上限額が100ドル程度しか増えないケースが多いので、数値に表れるよりも厳しい状況。
そんな中ノースウェスタン・ミューチュラルが、アメリカの約2740人を対象に行ったアンケート調査によれば、回答者の約3分の1が 「カップルになるにはルックスや知性レベルよりも ”エコノミック・コンパーティビリティ / 経済面での互換性” (経済的価値観やお金に対する意識)が大切」という意見を持っているとのこと。 特にジェネレーションZ世代は、ほぼ半分に当たる49%が、「経済的互換性は、外観の魅力や精神的な繋がりよりも大切」という考えで、 41%が経済面での考えが同じであることは、ライフスタイルや興味の一致よりも大切と回答しているのだった。 そしてジェンZの32%、ミレニアル世代の40%が、「カップルは関係が深まる前に、お互いの経済互換性をチェックするべき」という極めて地に足がついた考えを持っていることも明らかになっているのだった。
要するに、恋愛感情を取り沙汰する以前に、まずは経済面のビジョンをチェックするのが若い世代。
昨今は貧富の差が開いているとあって、アメリカはもちろん、世界の主要都市でプライベート・クラブや会員制レストランが増えているけれど、 そのトレンドについても、パンデミック以降、フェイス・トゥ・フェイスの出会いが減っている今、 「新しく人間関係を築くのなら、自分と同等の経済状態の人々から選びたい」と考える富裕層が、喜んでメンバーシップに大金を支払う傾向が強いことが指摘されているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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