Feb 11 〜 Feb 17 2024

Super Buzz, Toyota Beats Tesla, Tiger...
スーパーバズ、今やテスラよりトヨタ?、タイガー新ブランド


今週の経済ニュースでは、ドイツの2023年度のGDPが前年比6.3%アップの4兆4600億ドルとなり、日本(2023年度GDP 4兆2000億ドル、前年比5.7%アップ)を抜いて世界第3位になったことが報じられたけれど、 米国メディアの報道アングルは、ドイツの再躍進ではなく、日本の衰退にフォーカスしたもの。日本は2011年に それまで42年間維持し続けた世界第二位の経済大国の地位を中国に奪われたけれど、 この時は世界中が中国の市場規模と成長率に着眼していただけに、日本が劣勢になったというよりも、中国がその規模と勢いで日本を上回ったという印象。
しかし今回は日本の高齢化社会、出生率低下による人口減少、移民を受け入れず、かといってロボットの導入は未だ先の状態で、長時間勤務により疲れきった労働者が 先進国中最悪の生産効率で働く様子が報じられ、「システムを変えようとしても 国民性が変わらなければ、 まともな労働時間の人間らしい生活や、生産効率アップは難しい」という耳の痛い指摘が聞かれていたのだった。



スーパーボウル、その後の展開と思わぬバズ・リアクション


先週日曜に行われたスーパーボウルは、”テイラー・スウィフト効果”も手伝って史上最多の1億2300万人の視聴者を獲得。アメリカ史上、最も高視聴率を獲得したTV番組になったけれど、 中でも着眼すべきは女性視聴者数が500万人も増えたこと。
しかし今週、勝利したカンサスシティ・チーフスの地元で行われた祝勝イベントでは銃の乱射事件が起こり、死者1名、子供を含む22人の怪我人が出る惨事となり、 すっかり落ち込んでしまったのが ”テイラー&チーフスの経済効果”で 上昇気流に乗っていた現地のムード。
これらに止まらず、今回のスーパーボウルは後日談の多さでも群を抜いていたけれど、まず物議をかもしたのが 30秒700万ドルの放映料を支払って、 スーパーボウル中に大統領選挙キャンペーンCMを流したロバート・F・ケネディ・ジュニア。民主党からの立候補を取り下げて、インディペンデント(無所属)の出馬に切り換えた彼は、その時点でケネディ家の反発を買っていたけれど、 放映したCMはジョン・F・ケネディ大統領が1960年代に放映した選挙CMの写真の部分だけをロバート・F・ケネディ・ジュニアに入れ替えたもの(写真上左)。これは レトロ・アニメとケネディ家の名前で有権者にはインパクトがあったようだけれど、 自分の父親のCMならまだしも、伯父であるジョン・F・ケネディのキャンペーンCMをそのまま流用したこと、しかもそこに使用されていたケネディ家人々のイメージに使用許可を取っていなかったことから、 ロバート・F・ケネディ・ジュニアは週明け早々、謝罪を強いられ、後味の悪い高額CMになっていたのだった。
そのスーパーボウル中に TikTokデビューを果たしたのがバイデン大統領。TikTokは中国のバイトダンスが親会社で、他のソーシャル・メディアよりも多くの個人情報を盗むことから、 ホワイトハウス職員や軍関係者の公用スマホでは使用が禁止されているけれど、にも関わらずバイデン氏がTikTokにデビューしたのは、イスラエルVS.ハマス戦争以来支持率を落としている若い有権者にアピールするため。
公開直後からソーシャル・メディアでメガ・バズを生み出したのが、動画の中に2秒ほど 意味もなく登場した ”ダーク・ブランドン”の映像”(写真上中央)。 ダーク・ブランドンとは、バイデン氏がNASカーの観戦に訪れた際、スタジアムを埋め尽くした保守右派による「F#$k you, Biden」のチャンティングを 地元政治家が「Le'ts Go Brandon」と聞き間違えたことから始まったMeme。以来、特にトランプ支持派の間では「F#$k you Biden」の代わりに「Le'ts Go Brandon」というチャンティングが聞かれるようになったけれど、 トランプ支持者が 温厚でスローなイメージのバイデン氏のアルター・エゴとして、ダークで邪悪なイメージでクリエイトしたのがダーク・ブランドンのMeme。 ところが これがバイデン支持者の間では大人気を博し、バイデン陣営が開き直ってダーク・ブランドンでキャンペーン・グッズを製作したところ大ヒット。 これまでグッズが売れない政治家として知られたバイデン氏が一気にその巻き返しを見せており、TikTokのデビューはそのバイデン大統領が ”ダーク・ブランドン”と共演(?)した 初の動画として、トランプ陣営も真っ青のリアクション。 確実に言えるのはバイデン氏のソーシャル・メディア・チームが世論や世情の動向が的確に読める人材を要しているということで、”ダーク・ブランドン”は話題とパブリシティ、ソーシャル・メディア・バズを 生み出しながら、バイデン氏のイメージ戦略にも一役買っているのだった。
でも今年のスーパーボウルで最大のバズを生み出したのはベン・アフレック、マット・デイモン、引退したNFLクォーターバックのトム・ブレイディ、そしてジェニファー・ロペスをフィーチャーしたダンキン・ドーナツのCM(写真上右)。 ボストン出身のベン・アフレック、マット・デイモンはニューイングランド・ペイトリオッツ時代からトム・ブレイディの大ファンで、CMの設定は3人のチームがジェニファー・ロペスのダンス・オーディションを受けるというもの。 パフォーマンスのあまりのダサさにジェニファーが呆れ果てて、夫であるアフレックを叱りつけるものの、ブレイディだけは特別扱いというのがオチで、3人が着用していたピンク&オレンジのダンキン・カラーのトラック・スーツは 売り出し直後に完売。それだけでなく、3人のダサいパフォーマンスの楽曲は正式リリースが決定。 突如ダンキンのイメージが爆上がり状態になっており、改めて「スーパーボウルCMを上手く使うと、その広告効果は計り知れない」ことを立証していたのだった。



テスラ劣勢で、盛り返すトヨタ


このところEV市場の伸び悩み、イーロン・マスク個人に対する批判の数々で、テスラ投資家にとっての不安要因が増える中、 スーパーボウルの最中に放映されたのが テスラを批判するTVCM。
スーパーボウルCMの放映料は前述のように30秒で700万ドル。そのスポットを2つ買い取って放映された テスラへのアンチ・キャンペーンを繰り広げたのはテクノロジー起業家 ダン・オーダウドがバックアップする非利益団体、”ザ・ドーン・プロジェクト”。 広告はテスラのオートパイロットを批判する内容で、昨年12月にテスラが200万台以上をリコールする原因になったワシントン・ポスト紙によるレポートを引用。 テスラが不完全なオート・パイロットを実用化したことで33人の死者を出し、それ以外にも事故が起こってきたことを指摘。 テスラ側は 週明けにザ・ドーン・プロジェクトに対して 抗議と広告差し止めを求める書簡を送付したけれど、 アメリカでは自動運転車に対する敵意と不信感が高まっている真最中。つい最近にはサンフランシスコの路上で、群衆が自動運転車”ウェイモ”を花火で破壊する事件が発生したばかり。
そんなオート・パイロットへの不信感は、そのままEV売り上げ減速にも繋がっており、テスラは1月に 電気自動車販売トップの座を中国のBYDに奪われて、人気のモデルYの値下げを発表したばかり。 イーロン・マスクはこの値下げを 売り上げが落ちる冬場のみの措置と説明したけれど、今年の冬の寒さは 「バッテリーが持たない」、「充電に時間が掛かる」という電気自動車が冬場に抱える問題点を露呈しているのは以前のこのコーナーでもご説明した通り。
その一方で ウォール・ストリート・ジャーナルは、テスラの取締役の一部がマスクと親密な経済的関係を持ち、マスクの違法薬物使用を知りながら放置していたことをレポート。 それとは別にデラウェア州の裁判所は、2018年にマスクが取締役会に承認させた約560億ドルという彼に対する報酬パッケージが、「法外な高額ぶりで認められない」という判断を下し、 現在はマスクがそれに猛抗議をしている段階。そんなゴタゴタ続きで、テスラは S&P500を最高値更新に導いたマグニフィセント・セブン(アマゾン、アルファベット(グーグル)、アップル、メタ(フェイスブック)、エヌビディア、マイクロソフト、テスラ)の7社のうち、唯一の株価不振。ウォールストリートからはテスラ取締役会に対して、もっとイーロン・マスクをコントロールするようにとの圧力が高まっているのだった。
そんなテスラとは正反対に、昨今文字通り株を上げて来たのがトヨタ。 EVの問題点が露呈し、EVへの不信感を募らせるほど、評価が高まってきたのが 完全電気モデルよりもハイブリッドを重視してきたトヨタの姿勢。 今や気象変動を否定できないほど、自然災害が増え、その悪化が指摘されるご時世とあって、一度EVに切り換えたほどに意識が高い人々だと、 完全ガソリン車に戻るのは抵抗があるようで、テスラに見切りをつけた人々が購入し始めたのがハイブリッド車。 トヨタは3月の会計年度終了時に年間利益が300億ドルを超える予想で、これはトヨタにとって記録的な数字。 その好調はこの先も続くと見込まれるのだった。



タイガーの新ブランド立ち上げ


1月に27年間続いたナイキとの契約打ち切りを発表したタイガー・ウッズが今週お披露目イベントを行ったのが、彼の新しいライフスタイル・ブランド、 ”Sun Day Red / サンデイ・レッド”。
このネーミングは言うまでもなく、タイガーが長年日曜のトーナメント最終日に必ず縁起を担いで着用していた真っ赤なポロシャツから来ているけれど、 その製品生産を行うのは、ゴルフ・ブランドのテイラー・メイド。同社がタイガーに対して 過去数ヵ月に渡って行って来た猛烈なアプローチが、ナイキとの契約終了の原動力になったと言われるのだった。
実際に、何年続けようとゴルフウェア部門の契約アスリートに過ぎないナイキとのパートナーシップとは異なり、テイラー・メイドとのビジネスでは タイガーは企画や運営にも関わる経営陣の1人となり、売り上げのパーセンテージが収入になることから、膨大な利益が得られるのは言うまでもないこと。 そのサンデイ・レッドは、アパレル、シューズ等、幅広いアイテムを手掛けており、ポロ・シャツが115〜175ドル、カシミア・セーターが250〜350ドルというのがその価格帯。
現在、中小メーカーやVC(ヴェンチャー・キャピタリスト)の後押しを受けたスタートアップが、引退してもネーム・ヴァリューがあるアスリートをパートナーにビジネスを展開する傾向は顕著で、 テニスのセリーナ・ウィリアムスの ”Sバイ・セリーナ”、同じくテニスのロジャー・フェデラーはスニーカー・ブランド ”On / オン”を展開。 NFLの元クォーターバック、トム・ブレイディは、キム・カーダシアンをビリオネアにしたボディウェアの ”Skim/スキム”の共同設立者、ジェンズ・グレードとティームアップして、 ライフスタイル・ブランドを立ち上げる発表をしたばかりで、アスリートに限らず その名前でブランドが確立が出来るセレブリティに見込まれるのが同様のビジネス・チャンス。
特にスポーツ選手のブランド化はグローバルな長寿ビジネスになる確率が高く、そのことは その元祖サクセス例、アーノルド・パーマーが立証していること。 1961年に当時の人気ゴルファー、アーノルド・パーマーがゴルフ傘のトレードマークと共に設立したアーノルド・パーマー・エンタープライズは、 今も健在どころか、ありとあらゆる商品のライセンス・ビジネスに加え、昨今ではカクテルから缶入りアイスティーまでが彼の名前で販売される拡大ぶり。 タイガー・ウッズが目指すのもアーノルド・パーマーのようなグローバル・ライフスタイル・ブランドで、 今後は消費者による認識が希薄なデザイナー・ブランドは消え失せ、一部の老舗高級ブランドと、セレブリティのライフスタイル・ブランドだけが生き残ると予測する声は多いのだった。
タイガー・ウッズは、昨年サウジアラビアのLIVゴルフとPGAの合併の動き出した際に、PGAの取締役会にも加わっており、 そのPGAは アメリカ人投資家から15億ドルの資金調達に成功したことを報告をしたばかり。したがって今後、タイガーはPGAの役員としても巨額の株式報酬を得ることになるのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
Shopping
home
jewelry beauty ヘルス Fショップ 購入代行


★ 書籍出版のお知らせ ★



当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2023.

PAGE TOP