Covid 19 NY Diary
5月3週目からCatch of the Weekのコラムを御休みさせていただく 3週間、 2020年のパンデミック中の7人のニューヨーカーを描いたストーリー、「Covid 19 NY Dialy」を
2チャプターずつ公開させて頂くことにしました。既にプレビュー公開しているチャプター1は、及びプロローグは 以下のリンクからお読みくださいませ。
3月9日、 月曜日
ルームメイトのソフィーが帰宅するや否や「今日ニュース番組に出ることになったけれど、何のセグメントだと思う? 景気の先行き不安の話」
と言いながら冷蔵庫からウォーターボトルを取り出して飲み始めた。
ソフィーはトランポリンを使った新しいスタイルのワークアウトのインストラクターをしている。彼女が務めるジムがコロナウィルスのせいで休業に追い込まれるリスクがあるようで、
彼女が教えるクラスをバックグラウンドに、オーナーが経営の先行き不安について三大ネットワークの1つ、NBCからのインタビューに応えたらしい。
私はNYのローカル・メディアのライター兼ブロガーなので、コロナウィルスの営業停止とは無関係な職業だ。
でも時折ラップトップを持ち込んでは、執筆場所に使っているスターバックスがピックアップのみになるのは影響する。
自宅よりも適度に気が散るスターバックスの方が執筆が捗ると感じるライターは私だけではない。
ソフィーは私にとっては理想的なルームメイトだ。朝は10時まで寝ていて、昼間以降はトランポリンのエクササイズや、ボクシング・クラスのインストラクターをして、
夕方からはトライベッカにあるステーキハウスで週5日、サーバーとして働いている。
それが休みの夜には、ブルックリンのバーでトリヴィア・ナイト(クイズ大会)のホストをしている。
同じアパートに住んでいる私でさえ、ソフィーのデイオフが何時なのかさっぱり分からない。それほど常に忙しい。
私達はチェルシー地区の家賃2990ドルのワンベッドルームのアパートをシェアして8カ月になる。
共有エリアはダイニング・キッチンとそれに面したリビングの一部、そしてバスルーム。
リビングにパーテーションを取り付けただけの、にわか作りのベッドルームを使っているのはソフィーで、
私は本来のベッドルームを自室にしている。アパートは再開発が進んだチェルシー地区の中では古い建物で、
間取りも決して広いとは言えない。でも今時チェルシーでワンベッドルームが3000ドルを切るのは極めて珍しい。
NYで高層ビル内のアパートを借りようとすれば、課税前で家賃の50倍の年収を証明しなければならない。
でも古くて、小さいアパートにはそんな縛りは無い。それでも約3000ドルの家賃は私には高過ぎるので、ルームメイトとシェアすることにした。
レントが高額なNYでは、年齢に関わらずルームシェアは珍しくない。「ニューヨーカーは常に仕事とアパートのアップグレードを模索している」と言われるけれど、本当にその通りだ。
ソフィーが出たニュース番組のセグメントは、決して明るい話題とは言えなかった。 クラスをエネルギッシュに指導するソフィーの身体のキレの良さをバックグラウンドに、
ジムのオーナーが語った 「ウィルスの感染よりも、ウィルスが経済に与える影響で、私やスタッフの生活が苦しくなることを考えなければならない」という言葉が、
多くの中小企業オーナーの不安を象徴しているようだった。
3月20日、 金曜日
NY州政府が3月16日からのレストラン、バー、ジムの営業停止を発表したので、ソフィーはジムのインストラクター、レストランのサーバー、トリヴィアのホストという3つの仕事を全て失った。
週明けからはずっとアパートにこもって失業保険の申請手続きをしているようだ。でも申請のウェブサイトはパンク状態。
電話の問い合わせも、数時間ホールドしても誰とも話せないらしく、ソフィーの部屋からは 時折フラストレーションで叫んだり、物を投げたりする様子が聞こえてくる。
私も仕事が来なくなることを心配したけれど、昨日になってローカル紙のエディター、グレースから「コロナウィルスで仕事や収入を失ったニューヨーカー」をテーマに
記事の案を出して欲しいと連絡があった。私が出したのは、「失業保険の申請が出来ないフラストレーション」、「失業したニューヨーカーのテスティモ二アルとプロフィール」という2案。
どちらもソフィーの様子からインスピレーションを得たネタだった。
グレースは2番目のアイデアを気に入ってくれて、異なる年齢、性別、バックグラウンドの失業者3人をピックアップし、インタビューをもとにした写真入りのプロフィール記事に仕上げることになった。
取材対象が失業中なので、協力の謝礼を300ドルで提案したけれど、200ドルでしかOKが出なかった。
記事で取り上げることにしたのは、まず1人目がソフィー。2人目はエディターの知り合いで、ハーレムでエアb’n’bを経営するトーマス。
3人目はそのトーマスが、長年の知り合いで、つい最近大手ホテル・チェーンから解雇されたエリザベスを紹介してくれた。
3人とも200ドルの謝礼で気持ちよく引き受けてくれた。
グレースからは 「多くのニューヨーカーが職を失っている時なので、失業したのは自分だけではないし、自分が悪い訳でもない。皆同じような境遇にあることを、感情を交えずにサバサバと伝える記事」という指示を受けていた。
通常であれば、取材はフェイス・トゥ・フェイスで行い、写真もその場で撮影する。でもCovid-19のせいで、インタビューはZoomかスカイプ。 写真はレイオフ前の仕事のイメージが伝わるものを本人から送付してもらう。
だから仕事の手間としてはいつもより楽になるだろう。
3月21日、 土曜日
ソフィーとのインタビュー。ソフィーは私より2歳下の27歳。収入の大半を得ていたのはトライベッカのレストラン・サーバーの仕事で、給与は週払いで、毎回2500ドル前後。
私はソフィーがサーバーの仕事でそんなに稼いでいることは知らなかった。
ふと考えると、ソフィーが働いていたのはセレブリティやリッチな金融マンの常連客が多い、誰もが知るステーキハウス。だから客単価が高い。
しかもソフィーは ボディコンの制服を見事に着こなすスタイルの良さで、しかもブロンドだ。 何かにつけて高額チップを受け取るらしい。
レストランでは、ハリウッド・セレブリティよりも VIPビジネスマンの方が、高いワインを何本もオーダーして、キャビア、トリュフ、ロブスター等の高額食材の料理をオーダーするので、
大切な顧客と見なされるという。
今やソフィーが務めていたようなNYの高額レストランでは、常連客の個人情報に加えて、好みの料理やワインの情報がしっかりデータベースに入力されている。
初めての予約客は、スタッフが事前にグーグルやSNSで検索して、ルックスやライフスタイルまでチェックするので、VIPエリアに座れるのは大金持ちか、極めてルックスが良いNew Comerだけ。
また有名スポーツ選手やハリウッド・セレブが来店する場合には、セレブ好きなビジネス界のVIPを近いテーブルに座らせるのは暗黙のルールらしい。
去年のUSオープン・テニスの期間中には、プロテニス選手のグループの隣のテーブルで食事をしていたビジネスマンが、3000ドルのワインをプレーヤーにプレゼントし、
それがきっかけで2人は連絡先を交換したそうだ。そうしたハプニングが起これば店側の売り上げはアップし、VIP顧客のロイヤルティが高まる、そしてサーバーのチップも増えるというシナリオだ。
ソフィーのレストランでは、支払いがほぼ100%クレジット・カードで、来店客が支払ったチップの合計をスタッフが分けて給与にするシステム。
でも常連客の一部は、それとは別にソフィーにキャッシュでチップをくれることが頻繁にあったようで、彼女がこれまで受け取ったチップの最高額を尋ねると、何と8000ドル。
「これは税金申告をしていないので記事に書かないで欲しい」と釘を刺されたけれど、何故そんな高額チップが貰えたかと言えば、
ソフィーが良く知る常連客のバースデー・ディナーの後、そのグループと一緒にストリップ・クラブに出掛けて、朝の3時まで彼等と飲んでいたため。
常連客が高額キャッシュを持っていたのはストリッパーにチップを払うためだったようで、カード払いが当たり前のNYでも
ストリップ・クラブではキャッシュのパワーがまだまだ健在のようだ。
そしてストリッパー嬢たちは、女性が同席するテーブルの方が男性客のマナーが良いと判断するので、サービスが良くなるらしい。
ソフィーの話が面白くて、すっかり取材が横道に逸れてしまったけれど、そんな話し上手なところも彼女のチップが高くなる要因なのだろう。
ソフィーが務めていたレストランは、大きく開いた貧富の格差の上層部の世界。でもCovid-19でレストランが休業になれば、瞬く間にレイオフされるのは小規模レストランのスタッフ同様だ。
レストランのサーバー、ジムのインストラクター、トリヴィア・ナイトのホストというソフィーの3つの仕事は、
全て「インディペンデント・コントラクター(個人契約業)」というカテゴリーに属するらしく、
失業保険を申請しても支払われるかは定かではないという。
「もしダメな場合は、貯金を食い潰しながらビジネスの再開を待つ他はない」と言うソフィーの貯金額は あえて尋ねなかったけれど、
彼女は時折ブランド物を身に着けるとは言え、贅沢をするタイプではない。
おそらく私より遥かに貯金額が多いはずだ。
私は銀行に4000ドルしか貯金が無い。もし仕事が途絶えたら、私の方が先に家賃が払えなくなるだろう。
3月23日、 月曜日
午後からハーレムでエアb’n’bを経営するトーマスとZOOMを使ってインタビューをした。
トーマスは現在49歳。4年前に購入した自宅タウンハウスの4部屋をエアb’n’bで貸し出し、これまでは毎月5000~6000ドルの収入を得ており、その中から月々の住宅ローンを支払う状況。
タウンハウスというとNYでは高額物件を意味するけれど、トーマスが購入したのは建物の傷みが激しく老朽化した物件。
それを建築業に携わっていたトーマスが、1年掛かりで自力で改装し、エアb’n’bで貸し出し始めたのは約3年前。
1部屋が1晩70~80ドルという手頃な価格、交通の便と治安の良さで、海外からの若い旅行者に大人気となり、この先も旅行者が増えることはあっても、減ることないと思っていたという。
ところがCovid-19のせいで1月から旅行者が激減。今ではゼロになってしまい、収入源はUberドライバーの仕事だけ。
幸いエアb’n’bが3月14日から31日までのキャンセル分については、その25%を負担してくれることになったそうで、
州政府も住宅ローン返済を向こう3ヵ月間延期する措置を3月20日に発表した。
だから「その間はローン返済の心配をする必要が無くなった」と胸を撫でおろしていた。
しかし貯金が殆ど無いことから、妻と自閉症の息子の3人家族が食べていくには収入が必要だ。
妻は息子の面倒を見るのが手一杯で仕事が出来ないそうで、旅行者が減っている今はUberの仕事も激減している。
トーマスも失業保険を申請しているけれど、保険が下りるかどうかは分からないという。
先週末には生まれて初めてフード・バンクに行列して食糧を貰ってきたそうで、
「まさか自分がフード・バンクに並ぶほどお金に困るとは思ってもみなかった」としんみりしたのも束の間、次の瞬間には
「生き残るためには、何でもする。親もそうやって自分を育ててくれた」と力強く語ってくれたのだった。
3月24日、 火曜日
この日は大手ホテル・チェーンのコンシアージュの仕事をレイオフされたエリザベスとのインタビュー。エリザベスは53歳。非常に頭が良く、私の質問に的確に答えてくれるだけでなく、記事のアングルを理解した話をしてくれる。それもそのはずで、彼女はコンシアージュの前は別の大手ホテル・チェーンのプレスの仕事をしていたらしい。
エリザベスは家賃3000ドルのクイーンズの2ベッドルームのアパートにティーンエイジャーの2人の娘達、そして娘達と血縁関係が無い2人目の夫と4人で暮らしている。
ZOOMインタビューでのエリザベスのバックグラウンドには、家族で撮影した写真が何枚も飾ってある。彼女が受け取っていた年収は6万ドル。
フェデラル・タックス(連邦税)、NY市とNY州の給与課税等を差し引いた毎月の手取り金額は3800ドル程度で、夫もほぼ同等の収入。
彼女の場合、生活に追われる理由は2人の娘達が共に一型糖尿病を患っており、インスリン代が嵩むためだ。
一型糖尿病は肥満とは無関係で、すい臓からインスリン出なくなり、生命維持に不可欠のインスリンが欠乏する病気。
アメリカでは過去10年ほどでインスリン価格が3倍以上にアップした。保険に入っていても2人のインスリン代は毎月2000ドルを超えている。
アメリカでは過去2年ほどの間で、インスリン代が支払えないため、その摂取量を減らして命を落とすケースが相次いでいる。
私は昨年その記事を書くためにリサーチをしたので、エリザベスと家族の苦しい状況は痛いほど理解できる。
アメリカで医療費と処方箋薬が高額なのは今に始まったことではないけれど、
インスリンに関しては台湾で8ドル、カナダでは16ドルで販売されているボトルが、アメリカでは290ドルという法外な価格になる。
この問題を改善しようとしても政治家、製薬会社、保険会社、中間業者がそれぞれに責任のなすりつけ合いをするだけで、一向に改善の気配がない。
Covid-19の感染が広がり始めてから、メディアではアメリカの医療崩壊が危惧されているけれど、庶民にとっての医療はとっくの昔に崩壊しているのだ。
エリザベスの貯金額は2700ドルほどで、失業保険が支給されるまでは家賃が支払えないという。娘達のインスリン代や生活費で夫の給与が消えてしまうのだから無理もない。
NYでは失業者の急増を受けて、向こう3ヵ月は家賃を滞納してもランドロードがテナントに立ち退きを要求できないことになった。
でも家賃を滞納すれば、どんなランドロードでもペナルティを請求する。通常は50ドル前後だけれど、レンタル契約によって異なる。
私はエリザベス一家のことが他人事ではなく、心配になってしまった。
3月27日、 金曜日
3人をフィーチャーした記事が今日付のローカル紙と、そのウェブ版に掲載された。ウェブの記事は州外からのアクセスも多く、第2位のトレンディング記事になっていた。
そのせいか、エディターのグレースが次の記事のアイデアを出して欲しいと言ってきた。
ちょうどその頃、NYを含むアメリカ各地で失業した人々が 4月1日のレント支払日を控えて、“#CancelRent/#キャンセルレント” のキャンペーンをツイッター等のSNS上で始めていた。
GOBankingRates社が、2019年12月に行ったアンケート調査データによれば、「預金額が1000ドル以下」と回答したアメリカ人は69%。
多くのアメリカ人が 「ペイチェック・トゥ・ペイチェック」、すなわち毎月の給与を使い果たしてして生計を立てる自転車操業だ。
だから失業した途端にレントが払えなくなってしまう。エリザベスのように夫婦でアクセク働いても、嵩む医療費のせいで貯金が出来ない人々も多い。
そんな人々をサポートする気持ちから ”#キャンセルレント” の記事を提案したけれど、翌日にはグレースが却下してきた。
ローカル紙は市政府と持ちつ持たれつの関係なので、市の財源が苦しい状態で#キャンセルレントを盛り上げようとする記事は困るらしい。
4月10日、 金曜日
定期的に執筆するオンライン・ブログサイトから、Covid-19時代のデート事情について記事の依頼が来た。
自宅勤務が増え、外出自粛が全米で呼び掛けられた直後からユーザーを増やしたのが Tinder/ティンダー、 Hinge/ヒンジ、 Bumble/バンブル といったデート・アプリ。
特にTinderは、デート相手探しの地域バリアを4月1日から解除していて、州や国境を越えたデート相手探しが可能になったばかり。
エディターには私自身がアプリをトライした体験談を書くように勧められたけれど、
2日前に同じような記事を読んだばかりだったので、Covid-19前からのデート・アプリ・ユーザーと、Covid-19感染が始まってから登録したユーザーを比較する記事を書くことにした。
インタビュー相手は友達の紹介ですぐに見つかった。Covid-19前からのユーザーは27歳の女性、エマ。Covid-19ロックダウン以降に登録したユーザーは34歳の男性、エリック。
どちらも週明け早々にインタビューをすることにした。今週末はイースター・ウィークエンドなので例年ならば
このタイミングで取材をセットするのは難しい。でもロックダウン中は誰もが予定が無いので、スケジュールは組み易い。
4月13日、 月曜日
午前中からエマとZOOMインタビュー。エマは某有名デザイナー・ブティックのセールス・アソシエート。
店は休業中でも、未だ給与は払われているらしい。でも何時レイオフの通知が来るかと思って、毎日ビクビクしながらメールをチェックしていると話してくれた。
エマは以前からティンダーとバンブルを使ってデートをしてきたそうで、ルックスはいかにも男性が好みそうなスポーティーな美人。
そもそもアメリカでは高額品のセールスをしている人は大体ルックスが良い。
エマは「デート・アプリを使うと、相手は比較的簡単に見つかるけれど、殆どがシリアスな交際に発展しない」とありがちな経験を語る。
COVID-19で外出自粛になってからは、直接会う訳には行かないのでZOOMデートをするのかと思ったら、男性達はアグレッシブなまでにソーシャル・ディスタンシングを無視して会いたがるらしい。
「自分は健康だし、感染リスクはゼロだ」とメッセージを送ってきて、「今から車で君のアパートに行く」というような強引なアプローチが多く、
断ると逆切れした男性も居たという。 彼女が唯一気に入ったのはバルセロナ在住の男性。
彼がエマにスペイン語を教えて、エマが彼に英語を教えるセッションを週に1回ペースで既に3回行ったらしい。
でも彼とのコミュニケーションは「ロックダウンの今だから続くもので、解除されたら続かないだろう」とも話す。
彼女はTinderを通じて出会った男性達と実際にデートをしてみて、ラウンジのサーバーに横柄な態度を取ったり、ステーキハウスで肉をナイフで刺して口に運ぶ様子を見て呆れた経験が何度もあったようで、
「何時間ZOOMチャットをしたところで、直接会ってみなければ、相手のパーソナリティは分からない」と断言する。
そして「ZOOMだけで相手を好きになれるのは、デート・アプリの世界を知らないアマチュア」と言い切る。
そこまで現実的なエイミーが、今もTinderやバンブルで相手探しするのは、「シャットダウンのせいで人とコミュニケートするチャンスが減ってきたから」だそうで、
今デート・アプリを使う目的は、話し相手探しのようだった。
午後にインタビューをしたエリックは、チェルシーにNYオフィスを構える大手IT企業のソフトウェア・エンジニア。
ZOOM画面で見るエリックは34歳よりも若く見えて、趣味は職業柄 ビデオ・ゲーム。
今までデート・アプリを使ったことが無かった彼がユーザー登録をした理由は、COVID-19のせいで少なくとも暫くは女性との出会いが無いと思ったため。
加えて自宅勤務になって以来、ポルノ・サイトにばかりアクセスしている同僚の話を聞いてウンザリしたとも語っている。
「ウィルスの問題が長引くってことは、エクスクルーシブなパートナーを持たない限り、独身者はセックスが出来ないということ。
それに万一コロナウィルスに感染した場合、看病してくれる誰かを確保することは、健康保険と同じくらい大切」と、
ロマンスとは無関係でも 筋が通った理論を展開するところがいかにもエンジニアだ。
このセンテンスでエリックが探しているのは恋愛相手ではなく、セックス・パートナー兼ケアテーカーであることが確認されたのだった。
4月15日、 水曜日
気乗りがしないまま書き上げたデート・アプリの記事がブログサイトに掲載された。アクセス数はさほど伸びず、シェアの数も少ない。
私の文章も冴えなかったけれど、グラフィック・デパートメントが使った写真も悪かった。それに似たような記事がインターネット上に多かったのもウケが悪かった原因だ。
この日はグレースではないローカル紙のエディター、デヴィッドからメールが来ていた。
数日前にグレースに提案してボツにされた ”フード・バンクで行列するニューヨーカー” の記事を進めて欲しいと言って来た。
この記事は、週末フード・バンクでボランティアをしているグレース自身が書きたいという理由でボツになったので どうしたのかと思ったら、グレースはレイオフされていた。
ショックだった。彼女はNYU(ニューヨーク大学)のジャーナリズムのマスター・デグリーを持っている有能なエディターだ。
ローカル紙の編集者ではもったいない人材で、私は彼女の下で仕事をするのが好きだった。
彼女でさえレイオフされるということは、私も何時仕事が無くなるか分からない。
グレースに比べるとデヴィッドは頭のキレが悪いし、仕事が鈍いので、仲間のライターには評判が悪い。何故彼が生き残って、グレースがレイオフされたかと言えば、
彼の方が上層部にとって扱い易く、しかも白人男性だからだ。
ローカル紙は政治とスポーツのセクションが強く、その分野は男性で占められている。社内の力関係も男性優位で、2019年には女性専属ライターが全員フリーランス契約になっていた。
デヴィッドには記事の締め切りは2日後と言われた。冗談じゃない!
4月16日、 木曜日
フード・バンクは、これまではホームレスと低所得家庭に食糧を提供する福祉施設で、支給する食糧の殆どが
近隣のレストランからの余った食材の提供、もしくは個人や企業からの寄付で調達されてきた。
COVID-19の感染が拡大してからのNY市内のフード・バンクは、何処も通常の3倍から4倍の大行列が出来るようになった。
そのうちバワリー・ストリートのフード・バンクは、グレースが週末にボランティアをしていると言っていたスポット。だからここを取材場所に選んだ。
この春のNYは気温が低い。フード・バンクに行列している殆どの人々は4月半ばだというのに未だダウン・ジャケットを着ている。
ここに行列する人の中には、ほんの数週間前までは普通に仕事をして、自費で食材を買っていた人たちが沢山含まれている。
取材に応えてくれた女性は、スーパーのトレーダー・ジョーズのイースト・ヴィレッジ店でレジの仕事をしていて、
来週からトレーダー・ジョーズはNY市内の店舗を1店舗ずつ1日休業にして、消毒殺菌の作業を行うそうだ。
NY市では今週に入ってから公共の場所でのマスク着用が義務付けられたけれど、それまではトレーダー・ジョーズのスタッフに対して
経営側から通達されていたのは「マスクをするな」との指示。女性はトレーダー・ジョーズの時給だけでは家族が食べていけないので、
仕事が休みの日はフード・バンクに行列しているという。
先週から支給が始まった政府からの1200ドルの支援金を いち早く受け取った人とも話したけれど、この金額はNYではさほど助けにはならない。
レントを払うには足りないし、あっという間に生活費、電気代、電話料金などに消えていく事情は同じニューヨーカーとしてよく分かる。
だからどうしてもフード・バンクに頼ることになる。 支援金をスピーディーに受け取れたのは、
タックス・リターン(税金の払い戻し)を銀行振込みで受け取っていた人々。
でも支援金が直ぐに必要な貧困層ほど銀行口座を持っていない。
そういう人達は5月過ぎの小切手による送付を待たなければならない。
行列の中には不法移民も多い。彼らは日頃は安い賃金でハードな仕事をこなし、
多くは不法移民とは言え税金を払っている。
しかし雇用主の経営が苦しくなれば、何の保証も手当も無しに突然クビを切られる。
不法移民の低賃金労力が無ければ経営が成り立たないレストランやホテル、清掃業者、建設業者は多いけれど、何か事が起これば真っ先に犠牲になるのが彼らだ。
取材を終えて家に向かって歩き始め、ユニオン・スクエアに差し掛かった時に、「アビィ、アビゲール」と聞き慣れた声が私の名前を呼んだ。グレースだった。
「Hi、フード・バンクの取材?」。さすがにグレースは察しが良い。彼女が書く予定だった記事が私に回って来たことをお見通しだ。
グレースには2人の子供が居る。夫は3月初旬に職を失い、ようやく失業手当を受け取り始めたという。
「しばらくは夫婦2人分の失業手当で生活することになる」と淡々と語る。
私はグレースの後任、デヴィッドの頼りなさを思わずこぼしてしまったけれど、グレースによればデヴィッドをキープして彼女をレイオフしたのは、上層部の政治的な決断だという。
ローカル紙は6年前に親会社に買収されて以来、経営側が意図するキリスト教右派の保守路線に偏る傾向にあって、
出来る限り中道路線を貫こうとするグレースが、頻繁に上層部と衝突していたのは私も知っている。
NYはリベラル派が多い街なだけに、リベラル路線を装って、リベラル崩しの報道が行われる現場を目の当たりにしてきた彼女は、
ジャーナリスト仲間とメディアの正当性や言論の自由を守るグラスルーツ的な活動を始めて久しいという。
確かにトランプ政権が誕生してから、しっかり取材で裏を取った正当なジャーナリズムが何の根拠も無しに「フェイク・ニュース」呼ばわりされる悔しさを私も感じていた。
今、メディアは過去に無いほど政治的圧力を受けている。 グーグルやフェイスブックが、膨大なユーザーの個人情報を駆使したアルゴリズムで、
広告費をどんどんメディアから奪い去って行ったのもジャーナリズムが弱体化した要因だ。
だからNYタイムズ、ワシントン・ポスト、ウォールストリート・ジャーナルは、デジタル版購読料を収入の柱にする経営に切り替わった。
でも購読料で食べていけるのは一握りの誰もが知るメディアだ。 COVID-19の感染が広まってからは、既にローカル紙が30以上閉鎖に追い込まれている。
中でもグレースがジャーナリスト仲間と問題視しているのは、プライベート・エクイティ・ファンドによるレバレッジ・バイアウト(以下LBO)だと話してくれた。
LBOは借金をして企業買収を仕掛け、買収成立後にその返済を買い取られた企業側に押し付ける手法だ。
買い取られた側は、自分が作った訳でもない借金を返済するために、レイオフを含む経費削減をし、不動産を所有していればその売却を迫られ、
利益率の高い部門が切り売りされるので、資産をむしり取られるだけでなく、その手続きに掛かる膨大な手数料をプライベート・エクイティ・ファンドに支払うことになる。
その結果、買収された企業が倒産しても誰も責任を負う必要はない。プライベート・エクイティ・ファンドにとってLBOは、ローリスク・ハイリターンのドル箱ビジネスだ。
私も以前、ディスカウント・シューズの大手だった“ペイレス・シューズ”や、ウェディング・ドレス・メーカーの最大手だった“デヴィッズ・ブライダル”が
会社更生法を申請した時に、LBOについて記事を書いたことがある。
LBOのターゲットになるのは、既に経営難で 買収に応じるしか生き残りの道が無い企業だ。
そうでなければ倒産リスクが10倍になるような買収に応じる自殺行為をするはずがない。
過去10年間にプライベート・エクイティ・ファンドのLBOによって、失われた仕事の数は59万7千以上。
Covid-19の感染が深刻化してから会社更生法を申請した高級デパートのニーマン・マーカスもLBOの犠牲者だ。
そしてLBOによって潰されたり、骨抜き状態にされつつあるのが全米のローカル・ニュース・メディアだ。
メディアの世界で働く人間ならば、ローカル・メディアの重要性は誰もが熟知している。
地方政治家の職権乱用や汚職、キリスト教牧師による児童虐待、チャリティ基金の不正などが暴かれるきっかけになるのがローカル・メディアの取材と報道だ。
ローカル・メディアがなければ、人々は自分が住むエリアで何が起こっているかを把握することさえ出来ない。
アメリカは全米ネットのニュースに頼るには広過ぎる。
現在、全米の町や郡の半分がたった1つの零細ローカル・メディアに頼り、225の町や郡が全くローカル・メディアを持たない。
ローカル・メディアが無い町では、町民が選挙の日程さえ知らず、有権者が投票所に殆ど現れなかった事態も起こっている。
グレースはここ数年のローカル・メディア潰しが、単なる利益追求のLBOなのか、それとも政治目的、すなわち事実を隠蔽して一般大衆を扱い易くするために、大きな力が動いているのかが分からなくなってきたという。
でも結果的には同じことだ。
「今のメインストリート・メディアは政治と大手企業のプロパガンダ・マシンになってしまっている。
だから大衆が自分の本当の敵が誰だかも知らないまま、その敵の奴隷になろうとしているのは本当に嘆かわしいし、すごく危険だと思う」とグレースは熱っぽく語る。
本来だったらこんな突っ込んだ会話は、近くのスターバックスに入ってするところだけれど、今は立ち寄れるコーヒーショップさえない。私達はユニオン・スクエアのベンチに座ったまま話し続けた。
何か私に出来ることは無いかとグレースに尋ねると、「まずはフード・バンクにもっと寄付が集まるような記事を仕上げて」と言われた。
確かに 今ではフード・バンクに行列する人々が全米各地で増えているのに、寄付は以前より減っている。
レストランが休業しているので、これまでフード・バンクに寄付されていたレストランで余った食材が集まらなくなった。
アメリカの食糧需要の50%は飲食業界が担っている。そのレストランの多くが休業する今では、
卸売りフードの行き場が無くなってしまって、野菜から牛乳までが大量に破棄されている。その事も記事にしなければと思っていたところだ。
「あまり自分にプレッシャーを掛けないようにね。正義感がある人ほど世の中が辛く感じられる時があるから」と言ってくれたグレースに別れ際に尋ねてみた。
「COVID-19で世界は変わると思う?」
「1人1人の人生が変われば、世界全体も変わらざるを得ないと思う。でも世の中には結末がある訳じゃない。人類が存在し続ける限りは、
どんな出来事も歴史の1ページではあっても、結末ではないから」。
グレースの言う通りだ。私は記事を書くという仕事柄、直ぐに結末を求めてしまう。
でも実際の世の中はそうじゃない。 「COVID-19のせいで、先が見えない時代を生きている」と思い込んでいたけれど、
COVID-19は 「先のことなど、誰にも分からない」ことを悟らせてくれただけだ。
そんな世の中で自分を見失わずに生きるには、グレースのように自分の正義と信念を貫くしかない。
まずは良い記事を書こう。 人の心が動かせなくても、人々に事実を伝える記事を書こう。 それがジャーナリストとしての私の正義なのだから。
3月5日、 木曜日
JFKからの旅行者をマンハッタン、ミッドタウンのプラザ・ホテルまで送り届けて、この日の仕事は終わりだと思っていたら、事務所に連絡するようにメッセージが入った。
ウォール・ストリートのエグゼクティブを自宅まで送り届ける仕事だったが、「風邪を引いていないか?」、「体調は良いか?」としつこく聞かれ、
「1回でも咳をしたら、このクライアントを失うから気を付けてくれ」という馬鹿げた指示を受けた。
クライアントのB氏と連れの女性を午後3時過ぎにピックアップしたのはフォーシーズンス・ホテルだ。
フォーシーズンス・ホテルはミッドタウン57丁目にもあるが、出向いたのはファイナンシャル・ディストリクトにある
フォーシーズンス・ダウンタウンだ。B氏はそれまで同僚のスティーブが専属ドライバーをしていた。
だがこの日の朝、スティーブがB氏の目の前で咳を3回連発したらしい。スティーブは前の週に、ミラノから戻ったばかりのB氏の友人をコネチカットの自宅までドライブしていたこともあって、
B氏はスティーブがウィルスに感染したものと決めつけていた。ミラノは今コロナウィルスがアウトブレークしている真最中だ。
この日は、まずB氏をミッドタウンのコンドミニアムの自宅に送り届け、その後、連れの女性をアッパー・イーストサイドのアパートに送り届けて仕事が終わった。
その直後に「明日もB氏と家族の仕事をするように」とボスからメッセージが届いていた。
3月6日、 金曜日
B氏のマンハッタン宅は、現時点で西半球最高層のレジデンシャル・ビルディングと言われる432パーク・アヴェニュー内のペントハウスだ。ここはアレックス・ロドリゲスとジェニファー・ロぺスが一緒に物件を購入したことでも知られている。ヴァレット・パーキングがあるのでリムジンでのアクセスはし易い。
今日はまずB氏をウォール・ストリートのオフィスに送り届け、その後夫人と10歳の娘、8歳の息子をイースト・ハンプトン邸に送り届け、再びマンハッタンに戻り、今度はオフィスからB氏をイースト・ハンプトンに送り届けるのが仕事だ。
「何故家族一緒に一度に動こうとしないのか?」とも思うが、こちらはその分収入が増える。
それにB氏一家は週末からコロナ感染が一段落するまでイースト・ハンプトンに滞在する。 ハンプトンズでは自家用車を使うはずだから、こちらは仕事が無くなる。その前に少しでも稼いでおいた方が良い。
NYではコロナ感染者第1号が出る前から 金持ちのマンハッタン脱出組が多かった。
行き先はマーサス・ヴィンヤードやハンプトンズのような夏の高級リゾート地やマイアミだ。
一部の大金持ちは、早々とコロナウィルスの感染情報を得ていたのか、1月末にはハンプトンズ入りしていた。
だから通常この時期は地元の人間しかいないハンプトンズは賑わっていて、地元のレストランは大歓迎しているらしい。
こういう情報はもっぱら運転中に耳にするクライアントの会話から入ってくる。クライアントのために運転している時は音楽を聴く訳には行かないから、
パッセンジャー・シートとの間仕切りの防音スクリーンを使わない限りはどうしても会話が耳に入ってくる。
リムジン・ドライバーの中には、クライアントの会話を聞きかじって株を購入して大儲けした奴も居る。クライアントの会話は有益な情報源だ。
2017年には客の会話を聞きかじったドライバーが、ビットコインを買って僅か2カ月で3倍以上になったというエピソードもある。 このドライバーがラッキーだったのは、娘の結婚式費用を払うためにビットコインを売却した時が相場のピークだったことだ。
B氏のオフィスまではイーストリバー沿いのFDRを下ってスムースな道のりだった。B氏が降りる間際に「昨日のレディ・フレンドのことだが…」と切り出したので、
「昨日の送迎は貴方お1人でした」と答えると、無言で頷きながらも、目では「お前は馬鹿じゃない」というシグナルを送ってきた。
その後、午前11時にB氏の夫人と2人の子供達をピックアップするために10分前に432パーク・アベニューに到着し、5分前に到着を告げる電話をした。
3人がドアマンに付き添われながら、幾つものルイ・ヴィトンのトラベル・バッグをカートに乗せたポーターと共に現れたのは11時23分のことだった。
金持ち夫人は使用人に急かされるのを嫌う。この仕事は待つのがストレスだったら務まらない。
スティーブはB氏夫人を “クイーンB”と呼んでいたので、自分も頭の中では夫人をそう呼んでいる。
クイーンBはイースト・ハンプトンまでの1時間40分の間、何本も電話を掛けていて、中には簡単な連絡事項もあった。
「テキスト・メッセージってものを知らないのか?」とも思ったが、スティーブが 「クイーンBはラッパーのカーディーBのような長いネール・チップをつけているから、スマートフォンではタイプが出来ない」と話していた。
クイーンBはハンプトンズのワイン・ショップに電話をして、「高くて有名なワインを3ダース。レッドとホワイトは半々」という、いかにもワインの知識が無い金持ちという感じのオーダーをしていた。
ワインを銘柄や産地、ブドウの種類でオーダーする知識が無いのは構わないが、ワインは「ダース」じゃなくて「ケース」と言ってオーダーするものだ。
次に子供達のナニー(世話役)に指示を与えてから、女友達等とひっきりなしに喋っていた。
「今年はこんな寒い時期からハンプトンズに行くなんて思ってもみなかったわ」。「マイアミに行くチョイスもあったけれど、夫が飛行機はもう危ないって言っているのよ。それにマイアミはスーパーボウルの時に1週間滞在していたから」。
会話の内容から子供達の学校はチェルシー地区の10番街にある Avenues/アベニューズ のようだった。
アベニューズは、以前にもクライアントの子供達の通学のために毎日ドライブしていたから良く知る学校だ。
設備が整った理想的なプライベート・スクールだそうで、通っているのは大金持ちの子供達だ。学費が年間5万5000ドルと言われるので無理もない。
そんな大金持ちが通う贅沢な施設の学校が、低所得者住宅と通りを隔てた向いにそびえ立っているのは貧困層へのあてつけのようにも思えていたが、
2020年6月の学年末を最後に アベニューズは閉鎖される。
理由は創設者が、経営難のレンタル・オフィス会社、”WeWork”のCEOカップルで、もう学校事業に注ぐ資金が残っていないためだ。
子供達はイースト・ハンプトンへの道のりでは大人しく、予想したより行儀も良かった。
エアポッドをつけてアイパッドでビデオを観た後、2人とも眠っていた。社内で何かを食べたような形跡も無く、降りた後の掃除が楽だった。
その後ハンプトンズとマンハッタンをもう1往復して、この日の仕事は終わった。
3月12日、 木曜日
ボスから連絡があり、しばらくB氏の仕事を担当するように言われた。とは言ってもB氏の送り迎えではなく、B氏一家のためのメッセンジャー・サービスだ。
432パーク・アベニューのコンドに届いた荷物や郵便物、忘れ物、マンハッタン内のストアに注文した物をイースト・ハンプトンまで運ぶのが仕事だ。
郵便物は大切な荷物が届くまでは転送サービスに出来ないらしく、その大切な荷物が、実は買い占めたマスクやハンド・サニタイザー、ハズマット・スーツ(防護服)だったことは後から知った。
この日から車種が 同じ黒塗りでもSUVに替わり、毎日大量の荷物をハンプトンズまで運ぶことになったのだった。
432パーク・アベニューのペントハウス内にあるものをピックアップする場合は、アイフォンのZOOMアプリかフェイスタイムで夫人や子供達とビデオ会話をしながら、432パーク・アベニューのコンシアージュ立ち合いもとで ペントハウスに入ることになる。
ペントハウスは天井が高く、広くて明るい。窓からのビューは圧巻だ。モダンなキッチンからでもそのビューが眺められる。
冷蔵庫の中に残してきた食材を捨てる程度の作業は、メイドを雇わなくても ビル側が住人へのサービスの一環として行っている。
コンシアージュによれば、ただでさえ海外からのバイヤーが多いビルなので、全126ユニットのうち、現時点でテナントが滞在しているのは僅か2ユニット程度だという。
この日は息子が置き忘れたというビデオ・ゲームのガジェット探しに20分を要した。息子が「置き忘れた」と主張する部屋のデスクの上に無かったことから、ベッドの下、棚の中等、あらゆる場所を探したが見つからない。
ZOOMの画面に映った息子はフラストレーションで、隣に居るクイーンBに怒鳴り始めている。
「こんなアパートが買える親なのだから、もう1つ買って貰え!」と思い始めたところで、コンシアージュがリヴィングのクッションの下に埋まっているのを見つけてくれた。
こんな忘れ物探しがこれからも続くかと思うと気が重い。
この日はイースト・ハンプトンで初のコロナウィルス感染者が記録された。70代の女性だそうだ。
3月18日、 水曜日
今週からマンハッタンのレストランはデリバリーとテイクアウトのみの営業になっている。B氏の家族からのリクエストの中には
特定のレストランやベーカリーからのテイクアウトも多い。
「ここのコレじゃないとダメ」というのがとにかく多い家族だ。
この頃にはハンプトンズのスーパーの棚が空っぽになってしまったこともあり、マンハッタンの食材店からのピックアップの量が増えた。
フラットアイアン地区の高級イタリアン・スーパー、イータリーのレシートを見たら総額が7980ドルだった。
デリバリーを受け取るのはハウスキーパーだが、この日からマスクと手袋をしながら裏口の扉の前で受け取り、
折りたたみ式のテーブルを広げて、全ての食材の消毒作業をしないと家に入れることは出来ない。
クイーンBが決めた新しいプロトコールだと迷惑そうな顔で説明してくれた。
3月28日、 土曜日
この日はオフのはずだったのにボスからメッセージが届いて、「明日からB氏の家族のハンプトンズでの移動も担当出来ないか?」と打診してきた。
B氏が運転嫌いで、ハンプトンズではクイーンBがずっと運転していたらしい。だが、前日にクイーンBが車をロータリーに入れる際に敷地内の樹木に激突した。
幸い怪我は無かったが、原因は酸欠だそうだ。 N95のフィルターを2枚重ねたマスクをして、見場が悪いので マスクをエルメスのシルク・スカーフで覆って運転していたらしい。
普通の人が耳を疑うようなエピソードは、大金持ちの世界では全く珍しくない。
この仕事を引き受けると、暫しの間はB氏のイースト・ハンプトン邸の使用人コテージで ハウスキーパーやメンテナンス・スタッフ達と一緒に生活することになる。
断れば暫くは仕事が無い。今は旅行者が来ないし、大金持ちは郊外や州外に逃れている。
平民でも郊外や州外の実家やウィークエンドハウスに逃れている時期だ。引き受けるしかない。
ボスには前任者のスティーブに、B氏とその家族についての注意点を聞いておくように言われ、週明けの月曜から住み込みドライバーの仕事がスタートすることになった。
3月29日、 日曜日
スティーブに電話をすると、コロナ感染が疑われていた割には至って元気だった。B氏の住み込みドライバーになった経緯を説明すると、「酸欠になってもマスクを外さないのはいかにもクイーンBらしい」と大爆笑していた。
スティーブはクイーンB本人に対しても、時々「クイーンB」のニックネームを使うらしい。そもそも「クイーンB」とはビヨンセのニックネームで、夫人はそう呼ばれて悪い気はしていないらしい。
だがスティーブは「クイーン・ビッチ」という意味を込めて呼んでいるという。
クイーンBはB氏の3人目の妻で、B氏は1人目、2人目の妻との間にも子供を設けているが、スティーブはクイーンBとの間の2人の子供以外は見たことが無いという。
クイーンBはとにかくプライドが高く、女友達との競争心が旺盛で、子供には甘く、スティーブを含む使用人のことは奴隷同然と思っているそうだ。
B氏はそんなクイーンBの横柄な態度を許しているが、スティーブに対するビッチな態度には申し訳ないと思うようで、
クイーンBに八つ当たりされる度にスティーブはB氏からエクストラ・チップを受け取っていたらしい。
だからクイーンBの横柄な態度や我がままは「収入源」と思って我慢してきたらしい。
クイーンBの年齢は恐らく30代後半、B氏は68歳なので、親子並みに歳が離れているが、
大金持ちの世界でその程度の年齢差は全く珍しくない。
10歳の娘は母親同様にショッピングが大好きで、グッチを着用している時はいつもラッパー、リル・パンプの「グッチ・ギャング」を口ずさんで、周囲に自分がグッチを着ていることアピールする。
8歳の息子はビデオ・ゲームをやっている時は大人しいが、それ以外の時はかなり我がままらしい。クイーンBは2人を甘やかすだけでなく、子供のことになると非常に神経質になり、
理不尽な性格にさらに拍車が掛かるらしい。
B氏が「レディ・フレンド」と呼ぶアッパー・イーストサイドの女性は愛人で、かつての秘書。 彼女が住むコンドミニアムはB氏が購入したものだ。コロナウィルスの感染さえなかったら、デートのペースは週2回。
「B氏は他の金持ちほどケチではなく、B氏もクイーンBも、自分が言ったことを翌日には忘れているニワトリ程度の記憶力なので、何を言われようと聞き流すように」というのがスティーブからの有難いアドバイスだった。
3月30日、 月曜日
マンハッタンからの配達分をピックアップしてから、イースト・ハンプトンのB氏宅に到着したのは正午のこと。
到着するや否や、ハウスキーパーに体温をチェックされたが、仕事前の体温チェックは毎日のルーティーンだそうだ。
敷地内では必ずマスクと手袋の着用をすること、使用人はB氏家族が暮らすメイン・ハウスのバスルームを決して使わないこと、
手を洗う場合もキッチンを含む、ありとあらゆるメイン・ハウスのシンクを使わないようにという指示を受けた。
さらにハンプトン内をドライブする時は、B氏が所有するランドローバーを使うようにと言われた。
リムジン会社の黒塗りのSUVだと、いかにもよそ者が乗り込んできたという印象になる。
病院が少ないハンプトンズでは、地元民が マンハッタンからの脱出組がウィルスを運んでくるのを恐れており、
NY市からハンプトンズ入りした住人には14日間の自主隔離を呼び掛けている。
本来なら自分もその対象になる筈だが、使用人は人間というより付属物だ。
B氏の秘書からは、万一、B氏一家が体調を崩した場合の主治医の連絡先、B氏夫妻のハンプトンズのお気に入りスポット、親しい友人宅の住所リストが送られてきていた。
友人リストには誰もが知る実業家の名前が入っているが、セレブリティとのご近所交友は無いようだ。
イースト・ハンプトンと言えば、ビヨンセとジェイZのビーチハウスがジョージカ・ポンド・エリアにあり、アレック・ボールドウィン、ロバート・ダウニー・ジュニアといったハリウッド・セレブや、
料理家のアイナ・ガーテンなどが有名な住人だ。
先週からB氏家族に頼まれる食材ピックアップが減っていたが、理由は高級食材の卸売り業者が
ハンプトンズの邸宅、特にプライベート・シェフが居るような家庭に直接デリバリーをするようになったからだと知った。
いずれもコロナ前まではマンハッタンの有名レストランに肉や野菜を卸していた業者だ。
今のマンハッタンでデリバリーやピックアップのみの営業をしている多くは大衆的なレストランで、一流店や有名店は殆ど休業している。
だから行き場を失った高級食材がハンプトンズの個人宅に流通するようになったようだ。
食材だけでなく、マンハッタンの有名レストランのシェフも、自分のハンプトン邸のキッチンと少数スタッフを使って、ハンプトンに逃れた金持ちクライアントを相手にケータリングやデリバリーを始めた。
明日一番の仕事はそんなシェフの自宅キッチンから、ブレックファストをピックアップすることだった。
3月31日、 火曜日
某シェフの自宅キッチンは近い。片道10分ほどのドライブで朝食をピックアップした。
午後にはB氏夫妻を知人宅に送り届けたが、その間、
クイーンBは家族がコロナウィルスに感染した場合に備えて、呼吸器を2台は買っておくべきだとB氏に迫っていた。
ハンプトンの医者は、呼吸器が必要なほど深刻な病状になると、大病院への入院を勧めるだけなので呼吸器は持って居ない。
ニュースでは連日ように病院での呼吸器不足が大問題として報じられているので、クイーンBは ”マイ呼吸器” をエルメスのバーキンのように欲しがっている。
イタリアでは医師が、助かる確率が低い高齢者よりも、若い患者を優先して呼吸器をあてがったことで 「エイジズム(年齢差別)」だと批判を受けていたが、
クイーンBはウィルスに感染して死に瀕している患者達よりも、自分達の備えのための呼吸器が優先して確保されるべきだと考えている。
それだけじゃない。クイーンBは症状が無いのにコロナウィルス感染テストを受けようと躍起になっている。
3月半ば頃から、アメリカではコロナ感染テストが 特に症状もないカダーシアン一家やプロスポーツ選手などの富裕層に対して優先して行われ、
一般人は症状が出ても、検査キット不足でテストが受けられない。
クイーンBの交友関係では、テストを受けて陰性だったことを自慢するのがちょっとしたステータスで、
ライバルの女友達が家族だけでなく、使用人にまでテストを受けさせた話を聞いて、悔しくてたまらないようだ。
B氏は渋々スマホを取り出して、掛かりつけのドクターにコロナウィルス感染テストが何時受けられるかを尋ねている。
若い妻の我がままを聞き入れるのは年老いた夫の宿命だ。
そういえば「レディ・フレンド」はどうしているのだろうか。
コロナウィルスのような事態が起こると愛人の立場は弱い。
4月3日、 金曜日
朝10時にB氏の主治医をピックアップに行き、ナースと共に連れて来た。コロナウィルスの検査のためだ。
ナースはB氏邸の玄関前で、手慣れた様子で折り畳み式の作業台を広げ、その上にテスト・キットを並べている。
ドクターもナースも手袋とマスクをつけて、準備が整ったところで邸宅内に居るクイーンBに電話を掛ける。どうやらテストは屋外で行うようだ。
待ちに待った検査の日にクイーンBがどんな出で立ちで現れるかと思ったら、ハズマット・スーツ(防護服)を着用し、マスクをした上からフェイス・シールドをつけている。
検査のためには、鼻の奥まで細長いスワッブを突っ込むので、フェイス・シールドを外すだけで時間が掛かる。
B氏と子供達にフェイス・シールドを外す旨を伝えようと玄関の扉を開けたら、
B氏と子供達までハズマット・スーツ姿で立っていた。
こちらは笑いを噛み殺すので必死だ。ここまで馬鹿な金持ちは珍しい。
世の中は皮肉だ。こんな馬鹿どもの方がずっと稼いでいるなんて。
ドクターは1人当たりのテスト代として1000ドル、ナースを含めた出張料を別途請求する。正確な合計金額は知らないが、大体の予想は付く。
馬鹿げた金額だが、金がある奴には払わせておけば良い。
4月15日、 水曜日
同じハンプトンズに家を構えていても、1年中の殆どをハンプトンズで過ごす住人は、5月のメモリアル・デイから
9月のレイバー・デイまでの夏休みしかハンプトンズで過ごさない人間のことはよそ者扱いだ。
特にマンハッタンからコロナウィルス感染を逃れてハンプトンズにやって来たニューヨーカーに対しては厳しい目を向けている。
そんなNYからの流出組ほど、イベントが無いと退屈してしまうので、毎週パーティーやグループ・ディナーを楽しんでいる。
だが今のご時世は、人が集まることが立派な違反行為だ。
特にハンプトンズではパーティーをすると、何台もの車が1軒の家に集まるのでバレてしまう。
そのせいで警察に通報されて、お開きになったパーティーの噂を聞いた。
とは言えハンプトンズに家を持つ白人の大金持ちを警察が逮捕するはずは無い。注意をするのがせいぜいだ。
それでも騒ぎは避けるに越したことはないということで、今ではパーティーやイベントへのゲスト達のピストン輸送も仕事に含まれるようになった。
大体1回のディナーやパーティーに集まるのは、ホストを除いて3~6カップル。ウィルス感染テストで陰性を確認した者同士が集まっている。
ハンプトンズの生活が長くなり、曜日の感覚が無くなってきたこともあり、通常なら週末に集中するパーティーや集まりが、
平日でも行われるようになってきた。
自分を含めた使用人たちは、既に今の生活にウンザリしている。コロナウィルス感染が一段落しても、
9月までB氏家族がマンハッタンに戻ることは無いだろう。
例年ならサマー・キャンプで3週間はいなくなる子供達も、今年はずっとハンプトンズで夏を過ごすことになる。
今のまま9月まで殆ど休み無しで働くなんて冗談じゃない。
だが辞めれば次の仕事が無い。だから辞められない。皆同じ立場だ。
使用人にとっては、B氏家族のことを陰で馬鹿にするのが唯一のストレス発散法だ。 特にクイーンBは評判が悪い。
「ショッピングにも行けず、夏のバケーションにも行けない」と文句を言いながら、高額ジュエリーを買い漁っているらしい。
一流宝飾店も今の時期は定価の30%オフで上級顧客にジュエリーを売っている。実際にはハンプトンズまで出張販売にやってくる。
払える資産がある人間のところには、こんな時でもビジネスが寄って来る。
貧しい側は、毎週何百万人もが職を失い、全米のフードバンクに大行列が出来ている。そんなニュースを観ても、呆れるだけで、クイーンBは寄付もしないし、同情もしない。
「寄付やチャリティなんて、貧乏人がするもの」というのが口癖だ。
実際には大金持ちほど税金控除を得るために多額の寄付をする。
そして金持ちや有名人ほどチャリティ団体を設立する。自分の家族や親戚をチャリティのエグゼクティブに据えて、集めた寄付で高額給与を払うためだ。
4月22日、 水曜日
B氏に朝からマンハッタンへのドライブを頼まれた。432パーク・アベニューのペントハウスに届いている大切な書類にサインをして、直ぐに送り返さなければならないそうだ。
だがこれはB氏が 久々にレディ・フレンドのところに行くための口実だった。
レディ・フレンドが「コロナウィルスの感染テストを受けたいのに、マンハッタンではテストキットが不足していて受けられない。感染が怖いから病院にも行きたくない」と泣きついてきたようで、
B氏のハンプトンズの掛かりつけドクターのところでテストを受けさせるのがマンハッタン行きの目的だ。
スケジュール的には、B氏を乗せてマンハッタンに向かい、レディ・フレンドをピックアップしてハンプトンズに連れて来る。
B氏のことは直ぐに邸宅に送り届け、その後レディ・フレンドをドクターのところに連れて行き、テストを受けさせたら、マンハッタンまで彼女を送り届けて戻るという2往復だ。
こうすればB氏は1回目の復路の車内でレディ・フレンドと暫し密会が楽しめる。
2度目のマンハッタンへの往復は、B氏が432パーク・アベニューに忘れ物をしたので、それを取りに自分だけが出掛けるという口実が用意されていた。
こういうオケージョンなので、久しぶりに黒塗りのSUVを運転することになる。ハンプトンズで使っているランドローバーでは、後部座席の2人のプライバシーは守れない。
レディ・フレンドを迎えに行くまでの道のりで、B氏は浮気の後ろめたさからか、クイーンBの若さやエネルギーを好んでいても、レディ・フレンドの大人の女性の優しさが必要だと話している。
「1人の相手に全てを求めるなんて、所詮は無理な話だ」と言いながら、今日の2往復のチップとして1万ドルの小切手を手渡してくれた。
チップの金額から、この日レディ・フレンドに会うのをB氏がどんなに心待ちにしていたか、そしてこれがバレたら如何に大変かが分かる。
レディ・フレンドのアパートに到着すると、まず渡されていた検温器で彼女の体温をチェック。平熱を確認してからSUVの扉を開けると、B氏は満面の笑顔で彼女を迎えている。こんな嬉しそうなB氏は見たことが無い。
ハンプトンズへの道のりでは約1時間半のドライブだった。おそらく2人にはあっという間に感じられたに違いない。
まずB氏を邸宅に送り届けたが、クイーンBと子供達が外出しているのは予め確認済みで、誰にも見られていなかったと思う。
その後は段取りに従ってレディ・フレンドを医師のところへ連れて行き、テストは書類の記入なども含めて全行程が20分ほど。
支払いはもちろんB氏だ。全てが順調に進み、レディ・フレンドを送り届けてイースト・ハンプトンに戻ったのは午後3時半のことだった。
4月25日、土曜日
B氏のドクターのナースと思しき人物から突然電話連絡があった。レディ・フレンドがコロナウィルスのテストでポジティブ(陽性)だったという。
ハンプトンズは救急医療施設が少なく、感染にナーバスな大金持ちが多数暮らしているとあって、感染が認められた場合は 直ぐにトレーシングを行って、
接触者に14日間の自主隔離を促す。同じ連絡をB氏も受けているはずだ。
ハンプトンズでレディ・フレンドと接触したのは医師とナースを除いては、B氏と自分だけだ。
自分は終始マスクをしていたし、レディ・フレンドが車内に居た時は、ずっとパーテーション・スクリーンで空間を隔てていた。
だから感染はしていないだろう。発熱を含む症状もない。しかしB氏はコンタクトの度合いと年齢を考えるとリスクが高い。
暫くするとメイン・ハウスが物々しい雰囲気になってきた。昨夜頭痛を訴えて早く休んだB氏が咳と息苦しさを訴えているそうだ。
おそらくウィルスに感染したのだろう。クイーンBはハチの巣をつついたような大騒ぎをしている。
どうやら自分の感染が疑われているようで、ハウスキーパーにはマスクをつけていても「絶対にメイン・ハウスには近寄らないよう」にと言われた。
程なくボスから電話があり、今日からスティーブが再びB氏のファミリーの担当となること、そして自宅で14日間の自主隔離をするように言ってきた。
クイーンBはこういうことに関しては行動力がある。ちょうどこの仕事には嫌気が差していたので渡りに船だ。1万ドルのチップのお陰で、暫くは仕事が無くても食べていける。
荷物を纏めてSUVでB氏宅を出たのはその30分後だった。 誰にも別れの挨拶などしなかった。
仕事をして、それが終わったから帰る。ただそれだけのことだ。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |
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