July 26 〜 Aug 2 2020

”These are Becoming Things of the Past"
パンデミックと経済不安の影響!? 今アメリカで過去の遺物になりつつあるもの


アメリカでは木曜に発表された2020年第2四半期のGDPが9.5%減、年率にして32.9%ダウンという史上最悪の数字を記録。 同じ日に発表された先週の失業者数は19週間連続で100万人を上回る140万人。 引き続き収まる気配のないコロナウィルスは、今週末にカリフォルニア州だけで感染者が50万人を突破。 そのカリフォルニアでは、コロナウィルスのテストで陽性が認められても症状がない人々が自主隔離をしていないことから、 きちんと自宅に留まっている感染者に報奨金を支払うという馬鹿げた案が浮上しているのだった。
また今週には支持率でジョー・バイデン元副大統領に水を開けられているトランプ大統領が大統領選挙の延期を提案して 物議を醸していたけれど、ヴァーチャルで8月17日から行われる民主党全国党大会の前の週に発表されるのが民主党副大統領候補。 既にバイデン氏が公言している通り女性であることは確実で、ブラック・ライブス・マターの抗議デモ以降、頻繁に聞かれるのが「黒人女性を選ぶべき」という意見。 しかしバイデン氏は既に黒人層の支持を獲得しているだけに、未だにバイデン支持に難色を示す民主党のプログレッシブ派、特にバーニー・サンダース支持者を取り込むために 「エリザベス・ウォーレンを指名するべき」との意見も根強いのだった。



アメリカ空前のコイン不足


さて、現在アメリカが見舞われているのが空前のコイン不足。 そのためアメリカでは国民「にコインを貯めずに使うように」と呼び掛けているほど。
コロナウィルス感染以降、殆どのショッピングがオンラインになった一方で、感染リスクを避けるために キャッシュのやり取りをしないストアが激増して、一気にキャッシュレス社会へのお膳立てが整ったのが現在のアメリカ。 それでもキャッシュを使っているのはもっぱら銀行口座やクレジット・カードを持たない貧困層で、 連銀が再生産に消極的であることから全米各地で不足しているのがコイン。
連銀が特にコインの生産に消極的な理由はキャッシュレス社会になる展望よりも むしろその生産コスト。 ペニーと呼ばれる1セント・コインの生産にかかるコストは2セント、ニッケルと呼ばれる5セント・コインの生産コストは7セントで、コインの価値より高いのが生産コスト。
「このことは財産をキャッシュで持っていると その価値がどんどん目減りすることを立証している」という指摘も聞かれ、今週ゴールドとビットコインの価格が大きく上がったのも 投資家のドル離れ資金がこれらに流れ込んだ結果と言われるのだった。
コイン不足に話を戻せば、政府が一向にコインを生産する意志がないことから、 アメリカの大手スーパー、クロガーではつり銭が出せない事態に陥り、つり銭用のデビット・カードを製作。 それに小銭額を入金するシステムで凌いでいるのだった。



多店舗展開、ダイヤのエンゲージメント・リングは過去のもの?


アメリカではコロナウィルスのシャットダウンで休業に追い込まれたストアの55%が閉店、撤退に追い込まれているとのことで、飲食店、サービス業、小売店等のレビューで知られる ウェブサイト”Yelp/イェルプ” によれば、2020年に入って7月までにクローズしたビジネスの総数は13万2500件以上。中でも最も多いのがレストランで2万6200件以上が閉店。
閉店ブームは大手チェーンも例外ではなく、マクドナルドが年内に全米の200店舗の閉店を、スターバックスが向こう18カ月間に全米の400店舗の閉店を発表。 ファスト・ファッション・ブランド、ZARAも今四半期の売り上げ 44%ダウンを受けて全世界の1200店舗の閉店を発表。 小規模なビジネスがどんどん消えて行く一方で、大手チェーンにとっても多店舗展開が過去のものになりつつあるのだった。

また先週にはダイヤモンドの最大手 デビアスが第2四半期の成績を発表しているけれど、それによればダイヤの原石の売り上げは僅か5600万ドルで、前年比96%減。 2020年上半期だけで1億ドルの損失を計上しているのだった。とは言ってもダイヤモンドの売上げ不振はコロナウィルス以前から顕著であった傾向。 その背景にあるのは精巧な人工ダイヤが市場に出回り、デビアスでさえ人工ダイヤ市場に参入せざるを得なくなった状況に加えて、 若い世代がダイヤのエンゲージメント・リングに価値を見出さなくなって久しい社会風潮。 コロナウィルス以降、更にダイヤの需要低下が見込まれることから、デビアスでは2万人の従業員の一部を解雇して生産を減らし、経営をタイトにする方針を打ち出しているのだった。



握手、ハグ、キスはしない、友達を家に呼ばない、ジムやスパにも行かない!


その一方でウェブサイト、”Slate / スレート”が6000人のアメリカ人を対象に行ったアンケート調査によれば、 コロナウィルス感染問題以降は89%の人々が「初対面の人と握手をしない」と回答。友達とキスやハグをするかについても53%が「No」。 「Yes」と回答したのは29%で、残りの18%は「分からない」という意見。
「自宅でディナーをホストするか?」については64%が「No」、友人宅のディナーに出席するかについては59%が「No」。 「自宅でパーティーをするか?」については89%が「No」と回答。感染を恐れる一方で、自分がホストしたディナーや パーティーで感染者が出ることを恐れる人々が多い様子を示しており、たとえコロナウィルスの問題が収まっても これがニューノーマルになるという意見が半分以上。 挨拶としてのキスについては、マスクをするようになってから「口の中の息がいかに汚いかを実感した」というアメリカ人は多く、 「今後はウィルス感染を理由にキスを拒む」という本末転倒的な意見も聞かれるのだった。

また同様に過去の遺物になりつつあるのがジム。 ニューヨークではシャットダウン解除の第4フェイズを迎えても未だにジムがクローズしているけれど、 そのシャットダウン中に人々が「エクササイズのためにジムに行く必要が感じられなくなった」という考えにシフトしてきているのだった。
写真上中央はセントラル・パークでのスナップで、私が頻繁に目撃するのがヨガやボクシング、クロストレーニングをパークで行っているニューヨーカー。 中にはマスクをつけてパーソナル・トレーナーと一緒にエクササイズをする人も居るけれど、結局のところ エクササイズを日課にしてきた人々は ジムがクローズしてもエクササイズを続けるもの。
逆にメンバーシップにお金を払うだけで殆どジムに出かけなかった人々は、ジムの経営を助けると同時に、 ジムのメンバーになっていることが健康やライフスタイル充実のバロメーターだと思い込んできたのがこれまで。 そんな人々が「出掛けもしないジムにどれだけお金を無駄にしてきたか」を悟るきっかけになったのがロックダウン。

フリー・レティックス社が2000人のアメリカ人を対象に行ったアンケートによれば、 過去3か月間に対象者がダンベル、ヨガマットを含むホームフィットネス器具に投じた平均額は約96ドル。 74%がフィットネス・アプリを使用したワークアウトを行ったと回答し、そのうちの40%がファーストタイマー。 ファーストタイマーが特に多いのはメディテーションとヨガで、ロックダウン以降34%がメディテーションを、29%がヨガを始めたという。
同様のことはスパにも言えるようで、「自宅で自分でトリートメントをする方が安上がりで、時間が掛からない」という人が増えた結果、 もう「フェイシャルには行かない」という声が非常に多いけれど、ヘアカットについては「頻度を落とす」と回答した18%を含む56%の人々が「利用する」と回答。
要するにコロナウィルス以降は必要性が乏しいもの、体裁で行っていただけのものから人々が離れている様子が窺えるけれど、 それは当然のことながら経済規模全体の縮小を意味するのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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