Mar 15 ~ Mar 21 2026

America Alone…, America in Crisis?
石油高騰よりも深刻な事態が孤立したアメリカを襲う日?


石油1バレル当たりの価格が遂に110ドルを超え、インフレがエスカレートし、それを嫌った株式市場から8000億ドルが失われた今週のアメリカは、 イラン戦争が3週目に突入。アメリカ兵の犠牲者は13人、負傷者は約200人。 戦争開始から2週間の戦費は120億ドル~165億ドルで1日平均約20億ドル。国防省は新たに2000億ドルの戦費を議会に要求しており、 もしその予算通りにあと100日戦争を続けた場合、英国のエコノミストは自国内で200万人が失業すると警告。
今週にはトランプ大統領がホルムズ海峡に援軍要請をした英、仏、独、日本を含む国々がいずれも派遣を拒否したことから、 「これではAmerica Firstではなく、America Aloneだ」と言われたけれど、トランプ氏は同じプレス・カンファレンスの最中に 「同盟国の救けなど必要無い」と言ったかと思えば、「援軍を出すべきだ」、「派遣しなければNATOには恐ろしいことが起こる」とNATO離脱をほのめかす支離滅裂ぶり。
それらを報じるメインストリート・メディアに対しては、報道ライセンス取り消しをほのめかして、「もっと愛国的な報道をしろ」と脅しを掛けていたけれど、 情報統制はイスラエルやUAE(アラブ首長国連邦)でも行われており、UAEが先週から圧力を掛けたのはコンテンツ・クリエーターVISAで滞在するインフルエンサー達。 政府が発信する情報と異なる内容、法令に反する情報発信は、5万ドルの罰金と拘留刑の対象になると通達。 その途端にドバイのフェアモント・パーム・ホテルの爆撃は「生成AIによるフェイク画像」ということになり、「西側メディアのフェイク報道は信じるな」と言い始めたのがインフルエンサー。 ドバイでは攻撃被害のSNSポストで英国人旅行者男性(60歳)を含む20人以上が逮捕されており、「メディアに対する意識こそが、コミュニティを守る盾となる」と公共広告で謳うUAEは、 これまでドバイの広告塔であり、イメージメーカーであったインフルエンサー達をプロパガンダ・マシーンとして使い始めたことが報じられているのだった。



マレーシア、カナダの反旗、アメリカが直面する深刻な不足問題


今週アメリカでは火曜日に辞任を発表した国家テロ対策センター長で、超トランプ派だったジョゼフ・ケントが、その声明書でトランプ氏が「イスラエルとその強力な米国ロビー団体からの圧力で、米国の脅威ではないイランへの攻撃に踏み切った」と暴露していたけれど、戦争だけでなく、貿易面でも孤立しつつあるのがアメリカ。
トランプ政権が2025年4月2日に世界各国の輸入品に一方的に高い関税を課し、その後の交渉で税率下方修正に応じる引き換えに、トランプ政権が求める米国への投資を含む様々な条件を押し付けたのは周知の通り。 しかし2月に連邦最高裁がトランプ関税を違憲と判断。一律10%の関税が適用されるようになったことで「自国に不利な貿易協定など無い方が有利」と判断したマレーシアの貿易相が、米国との貿易協定を「無効」と宣言。再交渉ではなく、協定離脱を選択したのが今週。同時にアジア、ヨーロッパの諸国も、協定の一時停止や再検討に動き、協定署名の日程が迫っていたインドも先延ばしを発表。これらは各国が連携で動いており、アメリカが長期信頼に値する貿易パートナーではなくなった不信感から、各国がアメリカ市場に依存せずに成り立つ経済に動いているのだった。

特に注目されるのはカナダの動きで、世界第4位の産油国であるカナダは、アメリカの原油輸入の60%を供給する存在。アメリカは世界一の産油国とはいえ、世界の石油の20%を消費しており、 米国産原油の多くは軽質原油。そのため軽質原油を輸出し、重質原油を輸入する結果、輸入量が輸出を上回っており、アメリカは原油輸入国になっているのだった。
カナダは原油や天然ガスだけでなく、金属、木材、自動車部品をアメリカに供給する重要な貿易パートナー。そのカナダは昨年から中国、EU諸国、日本、オーストラリア等との貿易パイプを太くする動きに出ており、アメリカに依存しない貿易体制の構築に最も熱心。 でもアメリカにとってカナダが輸入物資以上に重要であるのは、カナダのブリティッシュコロンビア州から太平洋へと流れるコロンビア川の水流が、ワシントン、オレゴン、アイダホ等に水力発電用の水源を供給していること。しかもアメリカはカリフォルニアを中心に深刻化する米国内の干ばつ対策の水源としてコロンビア川を勝手に頼りにしており、トランプ氏がカナダを51番目の州にしたがる理由は山のようにあるのだった。
アメリカは今後10年以内に40の州が水不足に陥り、約3000万人が水の供給制限に直面するだけでなく、220万人が清潔な水道水を利用できないと予測されるけれど、今週のカリフォルニアは3月にして気温が30度に達する歴史的なヒートウェイブに見舞われ、ネブラスカ州では山火事も発生。過去数年続いてきた干ばつが一層深刻化することが懸念され、他にもテキサス、ネヴァダ、アリゾナ、ニューメキシコ州が既に水不足。カリフォルニアとテキサスはアメリカの農業を支える中心地で、アメリカの淡水消費の70%を担うのが農業。 それに加えて現在増設が進むAIデータセンターも既存の水資源への負荷を急速に増大しているのだった。



トランプ政権が追い込む農家経営… 


今週、イスラエルがイランの世界最大規模のガス油田、サウスパルスを攻撃したことから、それと並ぶカタールのラスラファン産業ハブが報復攻撃を受け、世界の天然ガス供給システムに 大打撃を与えたのは世界中の報道機関が伝えた通り。それによって脅かされたのが欧州、アジア諸国のエネルギー供給の要となる液化天然ガスの輸出。 天然ガスは窒素肥料の製造に不可欠な原料であり、その供給混乱が世界の農業に直接的に波及するのは言うまでもないこと。
要するに農家はエネルギーと肥料の価格上昇に同時に見舞われており、これは農作物の生産コスト増大、そして今後少なくとも数ヶ月の食料価格上昇を招く事態。 この事態は近年、気象変動による自然災害と闘って来た米国農家にとって最悪のタイミングで起こっており、それというのも昨年には年間20億ドルの農作物を買い取っていたUSAIDが イーロン・マスク率いるDOGE(政府効率化省)の陰謀とデマで潰されて安定収入源を奪われ、行き場を失った支援作物の損失を被ったのに加え、 バイデン政権が保証した環境フレンドリーな設備投資への援助をトランプ政権が取り消したことで、これまでに無く経営が悪化している状況。そして今、農家が直面しているのが深刻な人手不足。
そもそも240万~260万人と言われる米国農業労働者のうち、アメリカ人が占める割合は僅か30%。残りの70%を担って来たのが移民。中でも不法移民は、農家にとって不可欠な安価な労働力。 しかしトランプ政権の強硬な移民狩りを恐れて不法移民が去ったことで、2025年中から経営が苦しくなっていた農家、酪農家は非常に多く、 その深刻な人手不足を受けて、熱心に移民を追い出してきたトランプ政権は現在、密かにH-2Aヴィザで農業労働者を必死で増やそうとしている真最中。
選挙前にトランプ氏が打ち出していたのは、移民を追い出し、少数精鋭のアメリカ人労働者が従来より高額の給与で製造業から農業までを担う、 オール・アメリカンで経済が回る、あり得ないブループリント。しかし2025年に募集された41万5000件以上の農業求人のうち、 米国人からの応募は僅か182件。要するに41万5000件の仕事があっても 提示された給与や待遇でそれを引き受けるアメリカ人は182人しか居なかったということ。 暴力的な移民取締りや強制送還の物議以前に、社会構造の見地で既に崩れ始めているのがトランプ政権の移民政策。
そのアメリカのカロリーベースの食糧自給率は100%〜130%という世界トップクラスで、アメリカは世界有数の農業国。 しかしそれを支えるには、水と肥料、労働者がたっぷり必要なのもまた事実で、このままアメリカが孤立していけば、それらが入って来る保証は無くなるのだった。

こんな世の中では、戦争状況を含む世界情勢をいち早く知ることが、投資の行方、富の拡大に不可欠。 それを見越したトランプ政権が今週、超富裕層のドナーにオファーしたのが、トランプ政権のセキュリティ・ブリーフィング(政府方針、安全保障の最新情報やリスク、対策を共有する会議)に 出席する権限と引き換えに多額の寄附金を集めるという、合法性が疑われるファンド・レイジング。
セキュリティ・ブリーフィングに参加することで如何に効率良く儲けられるかは、トランプ氏の息子バロン・トランプが立証済で、 バロンは、先週トランプ氏が3月に予定されていた中国への外遊延期をSNSにポストする30分前に 3000万ドル相当のビットコインを購入。 その投稿がクリプト市場のボラティリティ(変動性)と相まってビットコインの急騰を招いており、強気のレバレッジを掛けていたと思しきバロンのクリプト・ウォレットは僅か24時間で1億9000万ドルに膨れ上がったことがレポートされたのだった。 この取引により、バロンは19歳にして母親、メラニアを上回る1億5000万ドル以上の個人資産を得たようだけれど、 暗号資産は今後も米中関係や規制動向を受けて市場が大きく上下するとトレーダーやアナリストは見ており、それに大きく影響するのがトランプ氏のSNSポストなのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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