Oct. Week 4, 2021
”Norma Kamari, Again”
ノーマ・カマリ、今シーズン再び…


2021年の秋冬もクロップトップ、カットアウト、フラッフィー・サンダル、シアー素材といった先シーズンからの トレンドが継続しているけれど、それに加えてプラットフォーム、デニムの上下、ヴェスト、デイタイム・シークィン、レオパード柄のコート、そしてストレッチ・ヴェルヴェットというのが 新たにカムバックしたトレンド・アイテム。 私もこの秋は久々にストレッチ・ヴェルヴェットのドレスが着たいと思ったので、リサーチをしていたところ 久々にその存在を思い出したのがノーマ・カマリというデザイナーなのだった。
ノーマ・カマリがファッション界にセンセーショナルにデビューしたのは1980年代。 スウェット素材でドルマン・スリーブのトップや、フレアースカートのマキシドレス等、ドレスアップできるようなアイテムをクリエイトして大旋風を巻き起こしたのが彼女。 日本にもレナウンを代理店にして上陸したので、当時からNYに憧れていた私はその当時ノーマ・カマリのアイテムを購入して、それをNYに移住した際も持ってきたのを覚えているのだった。




そしてNYに留学生としてやって来た私が、FIT(ファッション工科大学)でクラスを取ってきた時にはノーマ・カマリのアトリエで働く女の子とクラスメートになって いろいろ話を聞かせて貰ったけれど、ノーマ・カマリは独得のアンテナとビジネス・センスの持ち主。
前回ストレッチ・ヴェルヴェットが大流行したのは1990年代半ばであったけれど、当時 私が何度となく着用していたのがノーマ・カマリのストレッチ・ヴェルヴェットのスリップ・ドレス。 そして2008年のリーマン・ショック直後には ”カマリ・クチュール” というジャージー素材のコレクションから、ドレスを2枚購入して 素材の表面に繊維玉が出来るまで愛用したのを覚えているけれど、 私だけでなく世の中的にもノーマ・カマリの発信するスタイルに波長が合ってきたのが今シーズン。 現在HBO/Maxが製作中の「セックス・アンド・ザ・シティ」の続編、「And just like that...」の中で サラー・ジェシカ・パーカー扮するキャリーがノーマのシグニチャー・ドレスのうちの1枚を着用している他、 ジェニファー・ロペス、マイリ―・サイラス、テイラー・スウィフト、カイリー・ジェナーらもノーマの作品を着用した姿がソーシャル・メディアにアップされている状況。
そのノーマが決してアウト・オブ・トレンドになったことが無いカテゴリーと言えばスイムウェア。 今年のスポーツ・イラストレーテッド誌の表紙でナオミ・オオサカ選手がノーマのスイムウェアを着用しているけれど、 スイムウェアと言えば アメリカではどんなスタイリストでも先ずチェックするのがノーマ・カマリのラインなのだった。






ノーマ・カマリ自身は非常にヘルス・コンシャスで、エクササイズを欠かさないヘルシーなライフスタイル。今年で76歳を迎えるものの 今も若々しい容姿を保っていて、近年のアスリージャー・ブームが来る前から ストリートで着用できるエクササイズ・ウェアを手掛けて来た存在。 そもそも彼女を有名にした80年代のスウェット素材のコレクションにしても、40年前からアスリージャーを手掛けていたと言えるライン。
その意味で モダンなライフスタイルをクロージングに反映させた先駆者と言えるデザイナーであるけれど、 私がノーマ・カマリを好む理由の1つが その常識的なプライシング。 ドレスが200ドル前後、コートが400ドル、ジャケットが300ドル、トップが100~200ドルというお値段で、 ドレスアップが可能なアイテムでありながら、どんなオケージョンにも気軽に着用できるプライスは大きな魅力になっているのだった。




私がストレッチ・ヴェルヴェットのラインから選んだのが、ワイドレッグ・パンツとドレスであるけれど、 それ以外にもジャージー素材のオープン・ショルダーのトップやタートルネックのトップ等、 コーディネートし易いアイテムが出揃っているのが今シーズンのノーマ・カマリ。
もう服にお金を掛けるご時世ではないとは言え、やっぱり新しいアイテムを買い足さないと 気分が変わらないし、外出も楽しくないのは紛れもない事実。 ふと考えると私がこれまで購入したノーマ・カマリのアイテムがクローゼットに1枚しか残っていない理由は、 時代遅れになったから処分したのではなく、散々着用してお役御免になったため。
私の生涯を振り返ると、最もお金を無駄にしてきたカテゴリーがダントツで服の購入であったけれど、 クローゼットの中には90年代から着用して もうすぐ30年が経とうとしている服もあって、それらは着用機会が少ないけれどタイムレスで上質なアイテム。 それ以外のものは着心地が良くて、レイヤーや着回しが効くものを着潰すのが最もお金を無駄にしないファッションの楽しみ方。 ノーマ・カマリは、そんな着潰すほど活躍するステイプル・アイテムを提供してくれる有難いデザイナーだと思うのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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