Mar. Week 4, 2023
Lonliness and Anxiety
孤独と将来の不安に襲われています


少し長い話になりますが、私にもご相談をさせて下さい。
私の両親はある専門性の高い家業を営んでいます。子供は姉と私の2人なので、早くから両親は父親が育てた弟子というか、右腕の男性を婿養子にする形での姉との婚姻を計画してきました。 姉は典型的な真面目な長女の性格で、両親は早くから家業を継ぐ男性の妻として姉を厳しく育てて、 姉もそれに応えて成績優秀を続け、親の希望で地元の大学に進学し、才色兼備で有名な自慢の娘でした。 父の右腕の男性は、姉より8歳も年上でしたが「ぞっこん」と言えるほど姉を気に入っていて、 私は姉が特別に好きでもない人との結婚が全て決められていることを気の毒に思えることもありました。 でも両親の関心が姉に集中していたことが私にとっては楽なことで、大学進学と共に実家を離れて一人暮らしを始め、自由に生きてくることが出来ました。
成績優秀だった姉は、大学時代にの夏休みに無料の海外留学プログラムの参加に選ばれ、それがきっかけで少しずつ価値観が変わり始めたようでした。 この頃の私は家族とは離れて住んでいたので、姉がどう変わったかまでは詳しく知りませんが、その約3年後に姉は両親の反対を押し切って 駆け落ちのような形で恋愛結婚をして家を出てしまいました。 姉は勘当同然だったので、両親はもちろん結婚式には出席しませんでした。私は大人しいと思っていた姉の大胆な行動に驚いたものの、 親とは離れて住んでいたこともあり、内緒で式に出席しましたが、義兄の実家がかなり裕福で、お式の規模も大きかったので驚きました。 義兄家族は父親の仕事の関係で、海外の赴任地を転々としていたらしく、義兄の妹さんは国際結婚をしているバリバリのキャリア・ウーマンです。 結婚式では義兄のご両親が海外の結婚式みたいに仲睦まじくダンスをしていて、私の実家とは全く別世界に姉が嫁いだ印象を受けたのを覚えています。

その後姉は子供が出来ないことをボヤいていた時期がありますが、義妹さん夫婦の間の人形のように可愛い双子ちゃん達の面倒を見るのが生き甲斐になってしまいました。 姉夫婦と義妹さん夫婦、姉の義実家はスープが冷めない距離で暮らしていて、義妹さん夫妻は夫婦で仕事に忙しいとあって、姉に双子ちゃんの面倒を見て貰えるのは万々歳で、 姉が断っても 子供の世話代を払ってくれるような きちんとした方達だそうです。
私も一度だけ、双子ちゃんを連れてデパートに行く姉に同行したことがありますが、 構ってくれる大人達にニコニコ顔で愛嬌を振りまいて、「この年齢の子供ってこんなに頭が良かったっけ?」と思うような賢さがあり、時々言葉に英語が混じったりして、 私も心を奪われてしまう可愛らしさでした。 姉はそんな双子ちゃんに 「○○(姉の名前)ママ」と呼ばれるのが嬉しくてたまらないようで、 「子供が出来なかったら、この子達でいいわぁ」と言うほどでした。
ですが1年ちょっと前に会った時の姉は、自分の身体が原因で子供を授かることが出来ないことが判明して かなり落ち込んでいて、 義兄が子供を欲しがっているのが分かるから 「自分が離婚して身を引くべきか…」と悩んでいたようでした。 姉は真面目で優しいので、そういう考えになってしまうのです。 もし離婚をすることになったら義兄家族と離れてしまうこと、特に双子ちゃんのママ代わりが出来なくなることを寂しがっていて、 「確かに離婚となれば 親に絶縁された姉は 何処で、どうやって暮らして行くんだろう」と私も薄っすら考えました。
そのせいで ある時、母親と久々に電話をした時に 日頃は姉のことを話題にしないようにしていた私が 口を滑らせて 「姉が離婚するかもしれない」と話してしまいました。 そうしたら舞い上がった両親が、未だ姉のことが忘れられない父の右腕男性にそのことを話してしまい、勝手に「バツイチの出戻りだったら、大人しく右腕男性と結婚して、生涯尽くすだろう」と思い込んでしまいました。その時右腕男性は、ようやく恋人と呼べる女性が出来たらしかったのですが、その女性とも別れてしまいました。
ところが姉の方はその後、海外に住む義兄家族の知人女性への人工授精で義兄のDNAが入った子供を授かり、義実家のサポートを得ながらその子と双子ちゃんの面倒を見ていくことで すっかり丸く収まっていました。
姉が出戻らないことを知った両親と父の右腕男性は、最初こそ姉夫婦に腹を立てていましたが、そのうち怒りの矛先を 余計な情報で翻弄した私のせいにするようになり、 私はすっかり悪者になってしまいました。姉が戻らないだけでなく、子供も産めないということで、父は右腕男性と養子縁組をして家業を継いでもらうことを決心して、右腕男性は別れた女性と復縁しました。 そして右腕男性は父の養子になる条件として、私に実家の遺産を放棄するようにと言ってきたことを知らされました。
右腕男性はこれ以上 うちの都合に振り回されたくないのと、実家にあまり寄り付かない私が両親の老後の世話などするはずがないと思ったようで、 家業と両親の老後の世話を引き受けるのだから、私に遺産を放棄して欲しいという事でした。 一応打診ではありましたが、私には断る権利がない形で突きつけられたので、受けるしかありませんでした。姉は既に勘当状態ですので、遺産放棄は既に宣言済です。

私の実家は頑固な父と保守的な母、家業やその跡取りのせいで、かなり歪んだ家庭環境だったと思います。 私はそんな家庭事情の犠牲になって育った姉に同情しながら、被害が及ばない形で家族と上手く距離を保ちながら、まともに育ってきた自信のようなものがありました。 でも現状を考えると、実家は跡取りの養子縁組で全てが丸く収まり、 これからは養子夫妻にとって実子の私は煙たい存在だと思うので、益々疎遠になると思います。
姉の方も双子ちゃんのお世話に 新生児が加わって、「目が回る忙しさ」と言いながら、絆の固い義実家ファミリーの一員として幸せそうです。 私が「姉が離婚するかもしれない」と 余計な事を母に言ったせいで、姉夫婦には惑をかけてしまったので、姉とも以前と同じように付き合えないように思います。 ふと考えると、私だけが誰も居ない天涯孤独のような状況になってしまいました。
そのことが不安で、心細くなってしまったので、婚活パーティーに出掛けたり、マッチング・アプリを使ったりもしましたが、結婚や交際どころか もう1度会いたいと思う人さえいないことに絶望しています。 私はアラサーで、年収や学歴、身長などに条件は設けていませんし、高望みをしている訳ではないと思うのですが、 生理的に受け付けない男性や、オレ様型の男性との恋愛や結婚は絶対に無理です。
友達に相談したら 「私には結婚願望はなく、今は孤独になった焦りで婚活をしているだけだから、今結婚しても相手を見誤って不幸になるだけ」と言われ、 婚活パーティーに一緒に出掛けた友達からも 私の様子が「嫌々参加しているみたいに やる気が無いから、男性が引いちゃうんじゃない?」などと言われて、落ち込む毎日です。 どちらの言うことも図星ですが、今の私にはどうすることも出来ません。
不安を解消して、もっと晴れやかな気持ちで婚活に取り組むにはどうするべきなのでしょうか。 タロット占いから、結婚コンサルタントにまで相談しましたが、気休めや表面的なアドバイスが多いので秋山さんにご相談しようと思いました。
変なご相談だと思われるかもしれませんが、私は真剣です。きつい事をはっきり言って頂いて構いませんので、よろしくお願いします。

- K -


状況を眺める傍観者の生き方


Kさんのメールを拝読して 私が興味深く感じたのは、ご相談がご本人の問題であるにも関わらず、 その内容が ご実家、お姉さまとその義実家の状況や 事の成り行きに終始していて、 Kさんのプレゼンスが殆ど感じられないことでした。 お姉さまの離婚の可能性を お母さまに伝えてしまったことを除けば、このご相談文は Kさんの存在が最後まで登場しなくても成り立つ内容です。
そして最後に 登場人物の状況が上手く鞘に収まったことを喜ぶのではなく、 「そのせいで私は独りぼっち」と不安になり、「だからと言ってその孤独を解消する相手が簡単に見つかる訳じゃない」 と更に悩む様子をご相談頂いた形になっていました。

この文章には、Kさんのこれまでの生き方が少なからず現れている印象を受けます。 それは「あえて渦中には足を踏み入れず、一歩引いて状況を眺める傍観者」としての生き方です。
ご両親の過干渉と跡取り問題がお姉さま 1人に降り掛かっている様子をこれ幸いと、ご実家と距離を置いて自由を味わいながら生きていらしたKさんは、 同様の姿勢を人間関係全般に持ち込んでいらっしゃるのではないでしょうか。
勘違いしないで頂きたいのは、その生き方が悪い訳ではないのです。 人間関係というものは 他人に合わせている限りは 不愉快な思いやストレスを感じたり、気乗りがしない事に巻き込まれたり、余分な金銭出費を強いられるなど、 プラスの面よりも マイナス面の方が大きくなるのです。 だからこそ自分に正直に、そして理性的に人間関係をコントロールすることは幸せな人生には不可欠で、それは家族関係とて例外ではありません。
メールの文面から、Kさんは 人に構うのが苦手な性格とお見受けしましたので、必要以上に人間関係に首を突っ込まずに生きることは Kさんのお人柄に合っているようにお見受けしますし、ご自身もこれまではその生き方に満足していらしたはずです。

私の見解では、Kさんが 孤独と将来の不安に陥った原因は、家族のトラブルを傍観者として眺めるだけで済んでいた精神面の優越性が、 その問題が解決して 全てが丸く収まったことによって覆され、 「皆は楽しくやっているのに、自分だけ誰も居ない」という劣等感に変ってしまったためです。
でも頭を冷やして考えて頂けば、事態が丸く収まる前も 今も、Kさんの置かれた状況や立場は全く変わっていないのです。 Kさんはそもそもご実家とは疎遠でしたし、お姉さまやその義家族との距離も以前とは変わっていないはずです。 お姉さまの離婚について余計なことを口走ってしまった罪悪感で、ご実家とも お姉さまとも以前よりも距離が出来てしまったと思っていらっしゃるかもしれませんが、 そう考えているのはKさんだけで、今となってはご実家もお姉さまも Kさんの発言は 「跡取り問題決着のきっかけを作った出来事」程度にしか考えていないはずです。 見方を変えれば、それが深く感情レベルで関わって来なかったKさんとご家族の距離感でもあるのです。
今はそれを寂しく思うKさんとて、ご両親の老後の面倒をみようとは思っていらっしゃらないと思いますし、養子縁組によって罪悪感無しにそのお役目から解放されたことはむしろ喜ぶべきことです。 お姉さまにしても、完璧な解決策に恵まれたことは歓迎すべきことであって、Kさんが疎外感や孤独を感じるべき状況ではありません。
大変失礼ながら Kさんは成長過程で、お姉さまが跡取り問題の犠牲になって下さることで守られる自分の安泰を感じるうちに、誰かの犠牲やトラブルが存在しなければ 自分の安定や幸福が認識できないメンタリティが育まれてしまっているように見受けられます。 すなわちKさんは、状況に関わらない傍観者でありながら、当時者とは「相手が下がれば自分が上がり、相手が上がれば自分が下がる」というシーソーの関係を 無意識のうちに築いてしまっています。それはアグレッシブな形で表面化すれば競争心や嫉妬心に繋がる感情に他なりません。
ですが幸福というものは そんなゼロサム・ゲームではなく、分かち合ったり、祝福し合ったり、モチベーションやインスピレーションを授かることによって大きくなっていくものです。 Kさんが人生で安定した幸福感を得るには、先ず現在の幸福感の出所を変えなければなりません。 それが出来ない限りは、 自分以外の人間に愛情や思いやりを注いだり、自分を愛してくれる人と信頼で結ばれることはほぼ不可能と言わなければなりません。

幸せの最短の達成法とは…

私がKさんの現状でご提案するのは、ペットを飼う、もしくは植物を育てるなど、愛情や関心を毎日注ぐ対象を持つ生活をすることです。 動物や植物も苦手であれば、副業の起業でも構いません。自分の献身によって育ち、その成長が楽しめるものを持つことをお薦めします。
またお姉さまに 「これまでの 家族と親身に関わって来なかった生き方を改めたい」とお話して、Kさんに出来る形での育児サポートを申し出て、 自分に心地好い距離感で お姉さまの義実家と親戚付き合いを始めるのも良いかもしれません。 そうやって自分の世界を広げながら、愛情を注ぐ対象を増やして行けば、自分に幸せをもたらすソースも自然に増えて行くのです。 一度その状態になれば、愛情の対象と今の幸せを楽しむことが最優先になりますので、将来の不安で自分自身を追い詰めることも無くなるはずです。

私がこのコーナーや、プライベート・セッションで寄せられるご相談を通じて感じるのは、 多くの方々が幸せというものを 日々の生活の中に見出すよりも 将来の目標として掲げることによって、 「幸せのためには犠牲や苦労は付き物」、「幸せは苦しい状況を乗り越えたところにある」と、 あえて不幸や苦労に甘んじる傾向があることです。
私はこれを「蟻とキリギリスのメンタリティ」と呼んでいますが、 そもそもイソップ物語の「蟻とキリギリス」は人生の計画性について説いたストーリーであって、「苦労をすれば報われる」と約束するストーリーではありません。 以前のこのコラムにも書きましたが、苦労や困難を美徳とする人ほど 不幸を招き入れて、幸せへの道を閉ざして生きています。 そんな生き方をしている限り、幸せは「絵にかいた餅」のように 味わう事が出来ない偶像に過ぎません。 ようやく幸せに辿り着いたとしても、それを楽しむことよりも 失う恐れや不安で常にビクビクしてしまい、幸福を満喫することができません。

幸せになるには、幸せを日常のノーマルにするのが最短かつ最速、そして最も確実に幸せになる方法なのです。 毎日幸せを感じながら、それをステップアップ、グレードアップさせる方が、幸せを目指して苦労をする人生よりも遥かにエフォートレスで、実りも大きいのです。 愛情でも、人間関係でも、幸せでも、元手になるものを大きくしていく方が遥かに効率が良いのは投資と同じです。 成功のために苦労や困難と向き合う人生は、言わば 貯蓄だけでコツコツと大金を貯めようとする努力と同じで 複利が無いのです。
基本的に世の中では、良い物も 悪い物も、それを既に持っている人のところに集まる傾向が顕著です。 幸せは 幸せな人に訪れるもので、お金はお金持ちに寄って行きます。 不安を感じれば更なる不安がやってきますし、苦労や困難を覚悟していたら お望み通りの苦労や困難に見舞われます。 愛情や思いやりを持って生きれば、同じ気持ちを持つ相手を惹きつけること出来ます。 世の中とは至ってシンプルなものです。
よく自己啓発セミナーなどで 「大金持ちになりたい人は、お金に対する考えを 大金持ちのように切り替えるべき」というレクチャーがされていますが、それは本当です。 金銭的に貧しい人ほど お金が悩みの根源と考えていたり、お金は遣って無くなるものと考えていますが、 裕福な人ほど お金を財産と捉えて 「管理して増やすもの」として取り組んでいます。 自分が望む人間になりたければ、自分が望む人間として生きるのが一番の近道なのです。
ですがこの心理的アプローチは、卑屈で後ろ向きな考えの人や、潜在的にも不幸に甘んじた方が楽だと感じる臆病な人には通用しません。 これが有効なのは 幸せに生きる勇気があって、人生を楽しんでいる人だけです。 要するに気持の持ち方が人生に大きな影響を与えるということで、気持を変えれば顔つきも 発するオーラも異なります。 その変化には まず運気が敏感に反応して、それが状況や周囲の人々を動かします。 特にこれまで不安や不運、逆境に悩んでいた人は、運を味方につけた時こそが上昇気流の始まりです。
気持を切り替えて、毎日を幸せに生きることは お金が掛かる訳でも、何等かの犠牲を伴う訳でもないので、 馬鹿にせずに 誰もが真摯な気持ちで取り組んでみるべきだと私は考えています。

Yoko Akiyama


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執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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