Aug 17 〜 Aug 23 2020

”Make America Pay For Us"
盲目的なトランプ支持者をターゲットにした”We Build The Wall”の完璧な詐欺


毎週のごとく木曜に発表されたのがアメリカの先週の新たな失業者数。その数はパンデミックがスタートして以来21週間ぶりに100万人を切った先週から逆戻りの110万人で、 労働省が予測した92万人を大きく上回るもの。 しかしそんなデータに全く影響されないのがテック関連株価。先週にはアップルCEOのティム・クックがビリオネアの仲間入りを果たし、 今週にはそのアップルが史上初の2兆ドル企業となって、金曜の終値でも史上最高値を更新。 ちなみにアップルが株式会社として史上初の1兆ドル企業になったのは設立から42年目の2018年8月。その僅か2年後に2兆ドル企業になった訳で、 その株価は過去12カ月間で133%アップしているのだった。
同様の株価急上昇を見せているのがテスラで、今週だけで株価が21%アップ。2020年に入ってから375%の上昇を見せており、金曜の終値は史上最高価格である2049.98ドル。 市場ではテスラ株式6000ドル説が囁かれて久しい状況で、アップル、テスラは共に株式分割が噂されているのだった。



民主党全国党大会のメッセージ


今週 アメリカのメディアで最も報道時間が割かれていたのは8月17日からの4日間の日程で行われた民主党全国党大会。 今回はパンデミックを受けて事前に撮影されたビデオに一部ライブ映像を加えたリモートとヴァーチャルで行われた異例の大会であったけれど、 全般的には予想外に好評を獲得。TV視聴率は前回2016年の党大会より若干低かったものの、時代を反映してストリーミングでの視聴が激増。 それを合わせると前回より10%前後視聴率がアップした計算になるのだった。
メディアが分析した民主党のメッセージは「Make America America Again」すなわち、「アメリカを本来のアメリカに戻そう」というもの。 ジョー・バイデンの弱者に同情し、その存在を重んじる姿勢や夫人を含む彼のファミリーのノーマルな側面がアピールされた一方で、 「トランプが再選されたら、アメリカは壊滅的な状況になる」、「今回の選挙はアメリカの民主主義を守るために歴史上最も大切な選挙」という危機感が煽られていたのだった。 中でもメディアが着眼したのは共和党議員、これまで共和党支持者だった人々が登場してバイデン支持を打ち出したセグメント。
先週のこのコラムで、今回の選挙はトランプVS.バイデンではなく、トランプVS.アンチ・トランプの闘いと書いたけれど、 実際にバイデン氏を嫌ってトランプ氏に投票するという人々はトランプ支持者の20%なのに対して、トランプ氏を嫌ってバイデン氏に投票するという人々はバイデン支持者の55%。 共和党支持者の中には既に3つの大きなアンチ・トランプ団体が存在しており、それらがトランプ再選を阻むキャンペーンをスタートしていることも報じられているのだった。



政府を利用した画期的な詐欺?


さて今週木曜に大きく報じられたのがクラウドファンディング・ウェブサイト、GoFundMeで募られた”We Build The Wall / ウィ・ビルド・ザ・ウォール”の基金 約2700万ドルを巡る 詐欺罪で、トランプ政権の元チーフ・ストラトジスト、スティーブ・バノン、基金創設者で元米軍兵士ブライアン・コルファージュを含む4人が逮捕されたニュース。
”ウィ・ビルド・ザ・ウォール”は、メキシコとの国境の間に建設する壁の費用30億ドルが議会から得られないフラストレーションをトランプ氏が露わにしていた2018年12月に、 イラク戦争で両脚、片手を失いパープルハートの栄誉を受けた帰還兵 ブライアン・コルファージュが「国民の寄付で壁を建築しよう」とスタートしたクラウドファンディング。
3日間で900万ドルを集めたことが当時大きく報道されていたけれど、この寄付が壁建設には使えないことが明らかになった段階で、 GoFundMe側はコルファージュに対して集まった基金をチャリティに寄付するか、寄付者に返金するしかチョイスが無いことを通達。 そこに乗り出してきたのが元ゴールドマン・サックスのスティーブ・バノンで、We Build The Wall Inc.という非営利団体を設立。 これがマネーロンダリングのトンネル会社の役割を果たし、 表向きには「運営はすべてボランティアで、一切給与は受け取っていない」としながら、コルファージュは毎月2万ドルを受け取り、 新しいボート、レンジローバー、インスタグラム・インフルエンサーの妻の美容整形とジュエリー、 クレジットカード負債の支払いに加えて、税金まで不法に着服した基金で支払っていたとのこと。
一方のスティーブ・バノンは100万ドルのフィーに加えて、高額のビジネス・エクスペンスをWe Build The Wall Inc.に支払わせていたけれど、 基金の一部が僅か3マイルの壁建設に使われていたのは事実。 その様子はFOXニュースに代表されるトランプ支持メディアのみで報じられ、その後の寄付集めのイベントに信ぴょう性を持たせていたと同時に、 現地は1人20ドルを支払えばプライベート・ツアーが出来る観光スポット兼収入源の役割も果たしていたのだった。



次に計画されていた詐欺とは?


この詐欺に信ぴょう性を持たせていたのはスティーブ・バノンの存在に加えて、ブライアン・コルファージュがホワイトハウスに招待されたり、 トランプ・ジュニアと共に寄付集めを行う等、トランプ・ファミリーとの親密さがアピールされていたこと。 その寄付者の名簿は 熱烈なトランプ支持者の共和党議員の選挙資金集め目的にも流用され、 英語でいう”ピギーバンク”、すなわち豚の貯金箱のように小銭調達の資金源にされていたのがトランプ支持者。
決して裕福な訳ではなくてもトランプ支持者が We Build The Wall Inc.に5ドル、10ドルを寄付するドライヴィング・フォースになっているのが トランプ氏への盲目的な支持に加えて、リベラルな世の中とマイノリティ人種への怒り。 トランプ政権が環境問題を否定しているのは周知の事実であるけれど、全米各州でプラスティックのストローの使用禁止が呼び掛けられると まずはトランプ氏が「紙のストローやリサイクル・ストローなんて使っていられるか!」と怒りのツイートをして、その2日後にはショップ・ドナルドトランプ・ドットコムで プラスティック製の”トランプ・ストロー”が10本15ドルという高額で売り出され それが完売するのが ”トランプ支持者=ピギー・バンク”のパターン。 その一方で ある程度裕福な人々は ホワイトハウスのプライベートツアーや、マー・ラゴのメンバーシップ等、 トランプ・ファミリーには一銭の出費もない恩恵を受けるために多額の寄付をしているのが実情。

それを理解しているブライアン・コルファージュがつい最近新たにスタートしたのが、「ブラック・ライブス・マターの抗議活動者を テロリストと見なす法手続きを行う資金」を集めるクラウドファンディング。 マスク着用を要求されて逆切れし、黒人層の行動を逐一警察に通報するような白人層が競って寄付をしそうなコンセプトであるけれど、 この企画はブライアン・コルファージュ逮捕の2日前にGoFundMeによってキャンセルされているのだった。
逮捕されたスティーブ・バノン、ブライアン・コルファージュは共に無罪を主張し、早速振りかざしたのが トランプ氏の決まり文句 「Politically Motivated / ポリティカリー・モチヴェーテッド(政治的意図による訴追)」。 たとえ自分の払った寄付金がブライアン・コルファージュのレンジローバーやその妻の豊胸手術の支払いに使われていても、 「Politically Motivated」と言われれば、事実を無視してまで訴追した側を責めるのが典型的なトランプ支持者。 詐欺を働く側にとってはこれほどカモリ易い人々はいないのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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