Nov. 1 〜 Nov. 7, 2021

"NY Marathon, Election, Metaverse, etc."
NYマラソン, 民主党敗北要因, エンデミックとメタヴァース,Etc.


今週日曜は今年で50回目を数えるNYマラソンが開催されるマラソン・サンデー。昨年 パンデミックの影響で歴史上2度目のキャンセルとなったNYマラソンが最初に開催されたのは1970年で、 この時の参加者は僅か127人。コースはセントラル・パークのループを4.25周するもの。翌年からそれがNY市の5ボローを走るものに変わり、 前回2019年には5万3508人のランナーが完走するイベントに拡大。毎年1万人のボランティアが参加し、200万人が沿道で声援を送る世界最大のスポーツ・イベントになったけれど、 今年はパンデミックの影響でランナーの数は3万人。 沿道にはありとあらゆるトラブルに備えて600台のカメラが設置され、コース上のドローンの飛行はもちろん禁止。ランナーの密集を防ぐためにスタート・ウェイブが例年よりも回数を増やして、少数のグループで行われており、 ウォーター・ステーションでのコンタクトを避けるために、今年初めて許可されたのが水やスポーツ・ドリンク入りのボトルを装着したハイドレーション・ベルトの着用。 今回はハンド・サニタイザーのステーションも設置され、ランナーに義務付けられているのがワクチン接種証明、もしくは48時間以内のコロナウィルス陰性テスト結果の提示。 またスタート地点と、ゴールの後はマスク着用がルールになっているのだった。



選挙のCulture Warで敗れた民主党


11月2日火曜日には、アメリカの多くの州で地方選挙が行われたけれど、その結果敗北を喫したのが民主党。 民主党にとって最も痛手となる敗北は、バイデン大統領自らが応援に駆け付けたヴァージニア州知事選挙で、現職民主党のテリー・マコーリフが共和党のグレン・ヤンキンに僅少差で敗れたこと。 ヴァージニア州は2020年の選挙でバイデン氏が10%の水を開けてトランプ氏に勝利した州で、 前回の選挙でバイデン氏に票を投じ、今回共和党のヤンキンに鞍替えしたと言われるのが郊外の白人女性票。 そしてヴァージニア州で選挙3ヵ月ほど前から突如大きな争点になっていたのが教育問題なのだった。
ヤンキンに票を投じた白人女性有権者の多くは、学校での子供のマスク着用義務に猛反対し、「トランスジェンダーは性転換前のトイレを使うべき」、「白人が罪悪感を感じる歴史的史実を子供達に教えるべきでない」と 主張する屈折したヘリコプター・ペアレンツ。特にテリー・マコーリフの命取りになったと言われるのが「親達は学校のカリキュラムに口出しすべきでない」という発言を、その前後関係を割愛して共和党に上手く使われたこと。 さらに選挙前のヴァージニアで物議を醸していたのがトランスジェンダーの学生が女子トイレで女子生徒をレイプしたという事件であったけれど、これは蓋を開けてみればトランスジェンダーと報じられていたのは 単に女子トイレに入るためにスカートを履いていただけのストレートの男子学生。でもその事実が報じられたのは選挙当日で、それまでレイプの被害者少女の父親がヒステリックに訴え続けた学校でのトランスジェンダー問題は LGBTQフレンドリーな民主党には圧倒的に不利に働き、選挙ではなくカルチャーと洗脳の闘いに敗れたと言われたのが現職民主党のテリー・マコーリフ。

でも民主党にとって更に悲惨と言えたのはニュージャージー州の上院選挙。ここでは同州の民主党No.2の実力者である現職 スティーブ・スウィーニーが、政治経験ゼロのトラック・ドライバー、 エドワード・ダーに僅少差ながら敗れる大どんでん返しが起こっているのだった。 特にショッキングなのはエドワード・ダーの選挙資金が僅か150万円程度だったことで、お金が掛かったキャンペーンなどせずに 自分の労働者階級としての主張だけで当選してしまった訳で、 この誰も何も知らなかった候補者の過去の人種差別、女性差別、ユダヤ人差別のツイートが浮上してきたのは選挙が終わった2日後のこと。 立候補する側も投票する側もどの程度やる気があったのか疑わしくなるのがこの選挙であるけれど、古い民主党の政治家よりも、 型破りで政治家でないことを謳った共和党候補が有権者によりアピールしたのは紛れもない事実なのだった。



1997年のアマゾンを探せ!?


先週木曜日にフェイスブックがその社名を”Meta”に改めてからというもの、突然メディアで取り沙汰されて 急速に知名度を高めたのが ”Metaverse / メタヴァース”。 メタヴァースはフェイスブックだけでなく、マイクロソフト、Memeストックとして知られるゲームストップまで、様々な企業が既に取り組んでいる次世代プロジェクト。 コンピューターやスマートフォンのスクリーンタイムが1日12時間を超える現代人が多い中、ヴァーチャルの3Dワールドがその生活&経済圏になるのがメタヴァース。 既にマイクロソフトは、パワーポイントを含むマイクロソフト・オフィス・ファイルのメタヴァースでのシェアに取り組んでおり、ヴァーチャル・リアリティ(以下VR)のアヴァターとそのワーク・スペース、 マイクロソフト・チームを使ったメタヴァースでのヴァーチャル・ミーティングが可能になるまでにはもう秒読み段階。 このメタヴァースの仕組みを理解して初めて クリプトカレンシーやNFT(Non Fungible Token / ブロック・チェーン上で ワン&オンリーとして認識され、コレクティブル価値が認められる存在。 詳細は2021年4月1週目のコラム参照のこと) などの点が線で繋がったという人も少なくないのだった。
先週には”NFT.NYC”という、NFTのコレクターが集まるイベントが複数日間に渡ってNYで行われていたけれど、NFTはもはやアンダーグラウンド・カルチャーではなく、 ナイキ、コカ・コーラ、NFLクォーターバックのトム・ブレイディ からマーサ・スチュワートまで参入してくるメジャーなビジネス。 2021年の第3四半期のNFTの売上総額は100億ドルで、前四半期から700%アップしており、ディープ・ポケットのメジャーなインヴェスターから一般投資家までもが NFT関連の何に投資をするべきかを模索しているのが現在なのだった。

そもそもメタヴァースが目指しているのは、現代社会のヴァーチャル版を 中間搾取や政府を始めとする中央集権型勢力を排除してリメイクすること。 NFTコレクターはその新しいヴァーチャル・ワールドにおける土地や登場キャラクター、アート&スポーツ・メモラビリアを含む財産価値を持つグッズに対してお金を払っている訳で、 これらが実際の世の中に実在しないのは言うまでも無いこと。 しかしごく近い将来に 実際の世界よりもメタヴァースでビジネスや人とコミュニケーションをする時代になった場合、その世界にエンターテイメント施設を作る土地、その世界で着用するブランド物の衣類やシューズは NFTで購入することになる訳で、それら全ての経済活動がクリプトカレンシーで行われることになるのだった。
一般人から見れば夢の話、もしくは20〜30年以上先の話に思われてきたメタヴァースであるけれど、 既に世の中のお金はその実現に向けて どんどん方向を変えて流れ始めている状況。 そんなメタヴァースへの投資を行う人達の間で言われるのが「1997年のアマゾンを探せ!」というスローガン。 2001年のドットコム・バブルが弾けた段階でインターネット企業が大きく淘汰されたのは周知の事実であるけれど、 それぞれの分野で勝者になった場合は「Winner Takes All」状態になるのはアマゾンが立証していること。 それだけにメタヴァースで伸びる企業、価値が上がるものに投資をすることが、 向こう50年間に富裕層として生きるカギとも見なされているのだった。



エンデミックがもたらすメタヴァースのお膳立て!?


世の中をメタヴァース実現に大きく近付けたと言われるのは何と言ってもパンデミック。 世界的にリモートワーク、リモート授業、オンラインショッピング、フードデリバリーで家から出ない生活が当たり前になり、コンピューターやスマートフォンのスクリーン・タイムが それらを使用しない時間を上回るライフスタイルになったのはメタヴァース時代のお膳立ての第一段階と言われるもの。
そしてエンデミック、すなわちパンデミックが終わりを迎えている現在はその第二段階で、それが何かと言えば以前と同じ生活に戻る難しさやリスクを実感させられる時期。 多くの人々が自宅勤務の継続を望み、渋々オフィオスに戻った人々は通勤だけで疲れ果てる毎日。 また人々が再びライブ・イベントや旅行に出かけ始めているけれど、 アメリカではレイバー・デイから先週のハロウィーンまで、旅行者が増える週末になると何故か大手航空会社が天候や人手不足を理由に1日千便以上のフライトをキャンセルし、 旅行者が空港で足止めになる事態が起こり続けており、機内の暴力事件は今年に入ってから10月末までの段階で5000件以上。 ガソリン代も大きく上がっているので車の旅も、空の旅もストレスフルな要素を抱えているのが現在。
スポーツ観戦を楽しむにしてもハイスクールやカレッジのフットボールの試合では銃撃事件や暴力事件が起こり、プロスポーツの試合やパフォーマンスに出掛ければ、 ワクチン反対派の抗議デモのせいで会場入りが遅れるのは珍しくないこと。 今週末ヒューストンで行われたミュージック・フェスティバルでは大勢の観客がステージに突進して8人が死亡する事故も起こっているのだった。

さらにアメリカでは都市部、郊外、地方を問わず犯罪が増加中で、特に増えているのが窃盗。サンフランシスコ等 幾つもの都市が窃盗犯への処罰を緩めたのがきっかけで、 ドラッグ・ストアから高級ブティックに至るまで、ギャング団が白昼堂々 並んでいる商品を盗んでいく犯罪が多発。 そうかと思えばNYでは深夜まで営業しているレストランのリッチな来店客の高額ジュエリーや時計を狙った犯罪が起こっており、 ブロンクスの窃盗団は4回の強盗事件で、リシャール・ミルの億円単位の時計2つを含む日本円にして4億円以上を荒稼ぎしているのだった。
こうした強盗事件増加は、企業が売り上げの悪いストアをクローズする格好の言い訳にもなっているけれど、 店を空っぽにされる被害にあったデザイナー・ブランドは保険料の値上がりを受けて、益々オンライン・ショップにシフトすると共に、昨今大きく傾倒しているのが 決して盗まれず 生産流通の手間が掛からず、コピー品も出回らないヴァーチャル・グッズ、すなわちNFTの開発。
今年のハロウィーンにしても、夏から続く物流チェーン崩壊の影響でコスチュームやデコレーション不足が嘆かれたけれど、そんな中 YouTuberやポッドキャスターの中には、 2〜3分毎に画面上でヴァーチャルにコスチュームやマスクが変わるアプリで 複数の奇抜なコスチュームを披露する顔ぶれも居て、ストアに3時間行列しても自分好みのコスチュームが探せない人達との違いを見せつけていたのだった。

第二段階で、現実の世界が何をするにも時間とエネルギーが掛かり、犯罪や事故、トラブルに巻き込まれるリスクを思い知らされた次に待ち受けているのは、 ヴァーチャル・ワールドならNBAの試合が常にコートサイドのどんなアングルからも観戦出来たり、これまで富裕層しか経験が出来なかった神秘的な旅行を家に居ながらにして体験出来たり、 自分の姿や年齢を思い通りに変えられるなど、夢や理想が叶えられるヴァーチャル・メリットを実感&体感するステージ。
今の世の中はかつて10年掛けて実現していたことが 18ヵ月前後で起こるペースにスピードアップしていると言われ、 そう考えると もうすぐ傍まで迫っているのがメタヴァースの時代。 そんな新しい時代を迎えるにあたって、全米の各都市が目覚め始めたのがクリプトカレンシーやNFT、VR、ゲーム関連の企業誘致が 地方自治体の盛衰を大きく左右すること。今週にはNYの次期市長に当選したばかりの民主党のエリック・アダムス、 マイアミのフランシス・スワレツ市長を含む全米の4人の市長が、給与をビットコインで受け取る宣言をして 競うようにクリプトフレンドリーな街をアピールしたばかり。
その一方でアメリカではこのところ仮想通貨取引所、コインベースのアプリがダウンロード数No.1の座を維持していて、 この理由は言うまでも無く Memeコインの爆上げやビットコインのETF取引開始を受けた最高値更新で、再びクリプトカレンシーへの投資熱が高まっているため。 でもメタヴァースまで話が大きくなると 少なくとも過去3年以上その存在が世の中に知られているクリプトカレンシーは、突如人々にとって比較的分かり易いコンセプトになりつつあるのもまた事実なのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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