今週明けは米軍が身柄を拘束したヴェネズエラのニコラス・マデゥーロ夫妻、及びヴェネズエラの暫定政権の行方に関するニュース一色だったアメリカ。
各国のSNSインフルエンサーが「米国のヴェネズエラ侵攻の目的は実は石油だった」と暴露のように語る様子が滑稽に見えたほど、
トランプ政権がオープンに語っていたのがヴェネズエラの石油を含む豊富な天然資源取得について。
今週には米軍が更に2隻の大型石油タンカーを拿捕。「押収した石油の利益はヴェネズエラ国民のために役立てる」と謳いながら、
その利益を財務省ではなく、オフショア銀行口座に入金する計画が発覚。その一方でヴェネズエラに攻撃を仕掛けた1月3日は、
100万ページに及ぶエプスティーン・ファイル残留分公開の締め切りで、司法省がこれを完全に無視したことから、「攻撃のタイミングはエプスティーン・ファイルから国民の関心をそらすためのもの」との声が多かったのがアメリカ国内。
しかしヴェネズエラ及び、今後のグリーンランド、コロンビアへの侵攻報道が完全に吹き飛んだのが水曜にミネソタ州で起こったICE(移民捜査局)エージェントによるレネー・ニコル・グッド(アメリカ国民、37歳)射殺事件。
同じビデオを観て政治ポジションによって人々が全く異なる見解を語る様子は、映画「羅生門」のようであったけれど、犠牲者グッドをドメスティック・テロリストと呼んだノエム国土安全保障省長官、
及びトランプ氏、MAGA勢力の見解は ICE捜査官の「車から降りろ」との警告を無視し、グッドが捜査官を轢き殺そうとしたための正当防衛の射殺というもの。
しかし現場の目撃者は複数のICE捜査官が始めは「早く車を出せ」、途中から「車から降りろ」と、異なる指示をグッドに与えていたと証言。「彼女は立ち去ろうとしただけで、轢き殺そうとした訳ではない」というのが現場住人や、MAGA以外の国民の言い分。しかしトラブルのきっかけが何であったかは、何本現場ビデオが浮上しても不明なまま。
事件をめぐって地元だけでなく、その日のうちに全米各地で抗議活動が起こったけれど、その背景にあるのは同事件だけでは語れない複雑な事情。まずICEエージェントの大半が
正式な訓練を受けておらず、全米各地で理不尽かつ暴力的に市民にからみ、時にアメリカ国民の身柄まで不当に拘束してきたこと。
またミネソタ州は1990年代から2006年にかけて8~10万人のソマリア難民を受け入れており、その補助金を打ち切りたいトランプ氏が昨年から事ある毎に
ソマリア移民とミネソタ州を「Garbage!」と文字通りゴミ呼ばわりしてきたこと。
でもこの問題の最大の引き金になっているのは ”独立捜査ジャーナリスト”を自称する極右陰謀論者兼インフルエンサー、ニック・シアリーが、「ソマリア系アメリカ人がミネソタで経営する10軒以上の保育所が多額の政府補助金を受け取りながら、実は子供不在のゴースト施設だ」というビデオをXとYouTubeで発信。それをイーロン・マスクやヴァンス副大統領がリツイートした結果、あっという間に1億6500万のビューイングを獲得し、トランプ政権が大量の捜査官を送り込む事態に発展したこと。
しかしこのビデオは後に、シアリーが既に閉鎖されたセンターや、センターに子供が居ない時間を狙って撮影し、証拠の裏付けが殆ど無いことが発覚。多くのセンターはきちんと運営されていたものの、
「真実が靴を履いている間にウソは世界を半周する」というマーク・トゥエインの語録通りの事態が起こっており、かねてからのトランプ攻撃に加えて、そのデマで集中砲火を浴びた
2024年大統領選の民主党副大統領候補、ティム・ウォルツ州知事は来年の中間選挙で再選出馬をしない意向を表明。
ニック・シアリーはメインストリート・メディアからのインタビューや証拠提示のリクエストには無視を決め込むものの、「自分1人でティム・ウォルツを倒した」と高らかに勝利宣言をしていたのだった。
もちろんミネソタの住人は彼のデマビデオに腹を立てており、そんなモヤモヤした州民感情が巻き起こる中で、大量のICEエージェントが送り込まれた直後に起こったのが今回の事件。
ICEは事件直後に現地の高校で学生に向かってペッパースプレーを使用する暴挙にも出ており、一部では これがアメリカ内戦に発展しうると危惧する声も聞かれるのだった。
2025年はAIが機能を拡大し、企業がエントリーレベルの業務をAIで賄い始めた一方で、生成AIが リアルと見分けがつかない程にクォリティを上げて、一般人が普通に使いこなすまでに普及。
また人々がレシピから法律や医療アドバイスまでをAIに頼るようになった結果、これまで料理研究家、医師、弁護士、投資アドバイザー、保険仲介業といった専門職にお金を払って得ていた知識を、
何時でも ジャンルを問わずAIが提供する時代が到来。今週チャットGPTの親会社、オープンAIはよりパーソナルな医療アドバイス専門とするチャットボットのリリースを発表しているのだった。
そのチャットGPTは今も最も利用者が多いとは言え、グーグルが機能で上回るGemini 3をリリースして以来、利用者の多くがジェミニに流れており、
AIは使いこなす努力をしなくても、勝手に進化してくれる時代を感じさせているのが現在。
そんなことから2026年にはAIが更に人間生活に深く入り込むと予測する声が聞かれる中、
2025年後半からジワジワ盛り上がって来たのがAIバックラッシュ。そのバックラッシュの要因は以下の5点に絞られるのだった、
雇用の喪失と経済的不安:
AIが人間の労働を自動化し、大規模な失業を招くAIレイオフが遂に現実になったのが2025年。世論調査では米国人の大半がAIによって永久に雇用が失われ、
人間の経済生活が成り立たない社会を懸念しているとのこと。昨年にはゲーム感覚で外国語が学べると謳う学習アプリ”Duolingo/デュオリンゴ”が、
人間の契約社員をAIに置き換えたことで世論の猛反発を招いており、2026年はそんなバックラッシュを恐れて、AI導入をオープンにしない企業が増えると見込まれるのだった。
環境問題とインフラへの負担:
AIシステムを稼働させるためには巨大なデータセンターと、膨大な電力、及び水が必要。そのデータセンターが既に建設されたエリアは騒音、夜光問題、環境汚染が起こっていることから、
米国からアイルランドに至るまで、建設予定地では住民の反対運動により建設が延期、中止になるケースが増加中。また気象変動により暑さ、寒さが厳しくなり、年々電気料金が上がる中、
電力会社が大規模発電所建設費用を電気料金値上げによって一般庶民に負担させていることもAIへの悪感情に繋がっているのだった。
AI依存による人間能力の低下:
2022年11月にチャットGPTが登場した途端に、これを使い始めたのが全米の大学生。その用途はもっぱら論文執筆やレジュメ(履歴書)作成。
そうしたAIへの学習依存が小学生にまで広がった今では、AIを利用する子供ほど学力が低下しており、本来なら脳がどんどん成長し、記憶と学習の能力が高まる時期を
AIに頼ることで 無駄にするリスクが教育関係者の間で危惧されてきたのが昨今。
AIに対する懐疑論:
2024年からアメリカでレポートされてきたのが、チャットボットとの会話でティーンエイジャーが自殺に追い込まれたり、人々がチャットボットと真剣に恋愛をしたり、
孤独な老人がチャットボットを生身人間と思い込み、居るはずがない相手を探し求めて失望するなど、人間心理がAIに弄ばれるトラブル。
さらにAIにパスワードや個人の秘密を明かすことことで起こるトラブル、AIによる特定思想への洗脳、AIに騙されたり、
自分で決めるべきことをAIに判断されてしまうなど、距離が近くなればなるほど人間にもたらすリスクが大きくなることが認識されてきたのがAI。
そもそも開発段階で、AIほど人類を脅かすリスクが想定されたプロダクトはかつて無かったと言われ、もうすぐ到来する”AIがAIを作る時代”には、AIが
人類を滅ぼす計画に走ることが確実視されているのだった。
創造性と知的財産:
アーティスト、作家、その他のクリエイターは、許可や報酬なしに自分の作品を使って学習したAIに強く反発し、知的財産権に関する法的および倫理的な問題を提起しているのは周知の事実。
2025年にはYouTubeを始めとするSNS上に 生成AIによる量産コンテンツ、それもクォリティが低く、AIの処理能力に頼った短く、意味のない動画が溢れたことから、辞書の大手メリアム・ウェブスター社は、
2025年の言葉に「slop (粗悪品)」を選んだほど。
生成AIでクリエイトされた企業CMも不評で、マクドナルドやコカ・コーラは 生成AIでクリエイトしたオンライン広告に大バッシングが寄せられ、取り下げを余儀なくされているのだった。
理由は 生成AIでは 人間のアニメーターが作った映像に見られるSpirit、Heart, Soul (心や魂)が欠落し、感情移入が出来ない無機質な仕上がりになるため。
インスタグラムの最高責任者も 「ユーザーは人間がクリエイトした本物のコンテンツを望んでいる」とコメント。動画から書籍に至るまでのコンテンツ・クリエーターとしては
AIより人間の方が「魂を揺さぶる」という点において 優っているのが現時点。
そうかと思えば、Xの生成AI、グロックは SNSにアップされる女性や子供のごく普通のスナップから、衣類を除去してポルノ写真やアダルト動画を生成する機能が猛批判を浴びており、その生成ペースは1時間当たり
約6,700件。例え生成でも勝手に画像を使用され、ネット上でシェアされた一般女性達は訴訟を検討中で、生成AIのせいで女性や子供がSNSに写真1枚投稿できない時代になっているのだった。
これらの5点以上に大きなAIバックラッシュの火種となり得るのは、生成AIによって、見極めが難しいディープ・フェイクのプロパガンダがクリエイトされること。
前述のミネソタ州の射殺事件でも、僅か数時間のうちにネット上に拡散されたのが いかにもその場を捕えたスクープ映像を装ったAIによるディープ・フェイク。
これに騙されて頭に血が上った人々は、画像がフェイクだと知った後でも 決して持論を曲げることは無く、
今のアメリカで誰もが熱くなる政治関連のディープフェイクは 簡単に人々を騙し、扇動してしまうのだった。
加えて現在の 社会の上層部が、自分にとって都合が良い情報であれば 出所が分からなくても、事実確認をせずに拡散する無責任さは常軌を逸したレベル。
そのため2026年のAIに望まれるのは、AIのセカンドオピニオン、すなわち専門分野のアドバイスや時事報道に至るまでの事実確認や訂正機能。
要するにAIバックラッシュまでもが AI機能に求められるのが2026年なのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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