イラン戦争が始まって4週間目を迎えたアメリカで水曜に爆弾判決として報じられたのが、インスタグラムを傘下に収めるメタとYouTubeを傘下に収めるグーグル(アルファベット)によって、
SNS中毒に陥れられたという女性被害者がロサンジェルス地裁に訴えた訴訟で、2社の有責の認められ、女性に対して600万ドルの賠償金支払いが命じられたこと。この判決はニュー・メキシコ州で、インスタグラムやワッツアップが幼児性愛者に子供達へのアクセス手段を提供している訴えが認められ、メタに対して3億7500万ドルの賠償金支払いが命じられた翌日のこと。
メタは「青少年の精神疾患はアプリが原因ではない」と反発、グーグルは「YouTubeはソーシャル・メディアではない」と反論し、何方も控訴の意志を示しているけれど、この判例は現在1500件以上の同様の訴訟を抱えるメタ、グーグル、TikTokを含むSNS企業にとって致命的なダメージになり得るもの。
法律専門家は、巨大IT企業が”タバコ産業の二の舞”になる可能性を示唆しており、タバコの中毒性と有害性が裁判で認められた結果、莫大な費用をかけた賠償責任、事業見直しを強いられた事態をIT大手がリピートする懸念を表明。
しかし大手IT各社はこうした訴訟や政府規制を逃れるために第二期トランプ政権に大金を支払ってきており、同じ日の別の裁判では連邦最高裁がテクノロジー企業に対する法的保護を支持する意向を示したばかり。
SNS企業にとって米国で法の盾になっているのは、1996年に制定された通信品位法第230条で、「SNS側はユーザーが投稿したコンテンツに起因する法的責任を負う必要はない」と定められていること。
しかしメタやYouTubeが、アルゴリズムよってユーザーが長時間プラットフォームに留まるようデザインしていることは、今週の裁判の内部資料が立証済。
株式市場はこの判決を嫌って、メタの株価は8%、アルファベットの株価は4%下落していたのだった。
先週のこのコラムでトランプ氏の息子、バロンがトランプ氏が訪中を延期するSNSポストの直前に3000万ドル相当のビットコインを購入し、僅か24時間で1億9000万ドルになったことを書いたけれど、
今週も起こったのがトランプ発言によるマーケット・マニュピレ―ション(市場操作)。
先週末、イランに交渉に応じるまでの48時間の猶予を与え、拒めばイランの石油精製施設に壊滅的なダメージを与えると脅しを掛けたトランプ氏が週明けにポストしたのが、
「イランとは交渉が進んでおり、有益な成果が得られている」、「イランに更に5日間の猶予を与える」という、戦争終結が近いと匂わせる投稿。
それを受けて、暴騰していた原油の先物価格が大暴落、逆にS&P先物が急上昇したけれど、この投稿の15分前に5億8000万ドル相当の原油先物が売られ、逆に1億5000ドル相当のS&P先物が買われており、
これは事前に情報を入手していない限りはあり得ない取引。
その後イラン政府は「アメリカとは一切交渉していない」と発表したけれど、この時点で既に大儲けをしていたのが大手機関投資家やビリオネア。
イラン政府とトランプ氏の何方がウソをついていたことになるけれど、トランプ氏は第一期政権下だけで3万573回、1日平均で約21回のペースで事実と異なる発言をした記録の持主。
イランはイスラエルへの攻撃を続けたことで、交渉に応じていない様子を立証しており、トランプ氏の発言を利用したインサーダー取引が行われたのは明らか。
同様のインサイダー・トレーディングはKalsi等の予測市場でも起こっていたことがレポートされているのだった。
そんな大儲けとは縁が無い庶民の生活に降りかかっているのは止まらないガソリン価格の高騰。SNS上では「昨日もタンクの中にあったガソリンの価格が、何故翌日に上がるのか?」という指摘もあるけれど、
石油はゴールド等と一緒でその日のマーケット・プライスで小売り価格が決まってしまうもの。
航空運賃も値上がりしており、今週にはFedExやUSPS(米国郵便局)が送料に追加料金を含めると発表。
さまざまな製品の生産コスト、ガス電気代も軒並み値上がるので、既に生活苦だった庶民の生活が更に追い込まれている状況。
逆にパンデミック時代を超えるペースで大儲けをしているのが一握りの超富裕層。
彼らはパンデミック中に42兆ドルの富を蓄積しているけれど、トランプ第二期政権下では、搾取の構造が既に出来上がっている低所得者ではなく、
ミドルクラスの個人投資家や401Kを始めとするリタイアメント投資からどんどん利益をむさぼって行くことが指摘されるのだった。
トランプ氏は第二期政権がスタートして以来、イラン戦争までにナイジェリア、シリア、イラク、ソマリア、イエメン、ヴェネズエラと合計7カ国に軍事アクションを起こしてきたけれど、
「アメリカ・ファースト」を謳うトランプ氏が何故他国を軍事攻撃するかを明確に説明したのが、先月末に欧州首脳陣を前にマルコ・ルビオ総務長官が行ったスピーチ。
「西側諸国は第二次世界大戦までは、何世紀にもわたって領土を拡大し、繁栄してきた」というくだりで始まったスピーチで、ルビオ長官は
「現在トランプ政権が行っているのは、コロニアリズム(植民地政策)復活の歴史的な大改革である」と高らかに宣言。
実際今回のイラン侵攻も、イスラエルのネタニアフ首相及び、極右のシオニスト達が長年目指してきたグレート・イスラエル(聖書に記された「約束の地」の神授の権利に基づき、中東の広大な地域をイスラエルが治める概念)
実現のための領土拡大が目的と言われ、トランプ政権を裏から牛耳るビリオネア、ピーター・ティールにしても、10年以上前から世界統一国家を唱えて来た人物。
トランプ氏が新たに軍事作戦を仕掛けると見られるのが、今週だけで2回、3月に入って3回の大規模停電に見舞われ、国としての機能を失いつつあるキューバ。
キューバは共産主義のカストロ政権が樹立されて以来、アメリカとは敵対関係。過去数年はそのアメリカからの燃料封鎖に加えて、
発電所を含む電力インフラが壊滅的なまでに老朽化。そこへ来て、これまでキューバに石油を供給してきたヴェネズエラのニコラス・マドゥーロ大統領の身柄が米軍に拘束され、
同国の石油利権をアメリカが握ったことで、ヴェネズエラからの石油が途絶えたのが現在の最悪の状況の始まり。市民は停電で冷蔵庫が使えなくなるのを恐れて食糧の備蓄が出来ず、
冷房が使えないので、窓を開けて眠るため盗みが横行。給水車がやって来ると市民が争うように1日分の水をコンテナに入れて持ち帰る状況。しかしこれは
女性や高齢者にとっては辛いタスク。手術や出産が困難を極める病院も経営が立ち行かなくなっており、そんなキューバを「攻撃してどうするつもりですか?」という記者の問いに
トランプ氏は「どうにでも、自分の思い通りにする」という過激な返答をしたのが今週。
そのキューバにはようやく民間団体が食糧や生活物資を船で運び始めた様子が報じられているけれど、
週末にはアメリカ軍がエクアドルの酪農家を麻薬カルテルの施設と間違えて爆破していたことが明らかになり、いつどこを攻撃するか分からないのが現在のトランプ政権。
ここで気になるのが、米国による21世紀の殖民地政策で日本はどんなポジションにあるのかということ。
先週ホワイトハウスで行われた日米首脳会談の内容は、トランプ氏のパールハーバー・ジョーク以外は全く報じられていなかったので、
米国チェンバー・オブ・コマース(商工会議所)のウェブサイトをチェックしてみたところ、会談の最大焦点だったのは
「日米戦略投資イニシアティブ」に基づく日本からの第2次投資の発表。2月に発表された総額360億ドルの第1次投資に続いて、日本からの新たな約730億ドルの投資による新規プロジェクトが発表され、
早い話が日本の資金提供によって、日米企業が共同で米国内の2か所に次世代原子力施設を建設するというもの。その「最先端技術により日米双方が世界競争で優位に立てる」とは謳っているものの、
どう考えてもアメリカ側のメリットの方が遥かに大きいプロジェクト。
でもそれ以上に私が個人的に気になったのは以下の部分。 「Notably, the White House’s fact sheet includes a commitment by Japan to “develop a secure and sovereign cloud platform for government data,” alongside new agreements on AI, high-performance computing, and quantum. Although it does not specifically mention U.S. cloud suppliers, as some advocates had hoped, it is a constructive step. (特筆すべきは、ホワイトハウスのファクトシートに、AI、高性能コンピューティング、および量子技術に関する新たな合意と並んで、日本による「政府データのための、安全かつ主権的なクラウド・プラットフォームを構築する」という確約が盛り込まれた点である。 事前に期待されたような、特定の米国クラウド・サービスを名指ししての言及ではないが、これは建設的な一歩と言える。)
すなわち日本が「米国のクラウド・サービスを利用して、政府データを管理する」と取れる内容で、これが実現した場合は表向きはどうあれ、日本がアメリカの殖民地のようになって行くのは時間の問題。
今回の高市首相の訪米は、親日派のアメリカ人が 「Kissing Trump's a...」と指摘する ”おべっか外交”と受け取られたようだけれど、
国民が物価高と闘う状況であまりに巨額な投資、加えて政府データまで差し出すかもしれない様子に、思わず「日本の将来は本当に大丈夫なのだろうか?」と心配になってしまったのだった。
米国商工会議所が纏めた日米首脳会談内容の要約は以下のサイトにアップされています。
https://www.uschamber.com/international/key-takeaways-from-the-trump-takaichi-summi
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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