Feb. Week 4, 2022
”Lifespan Podcast with David Synclair”
ベストセラー書で「老化は病気」と位置付けてから3年、
ハーバードDr.の最新アンチエイジング情報



私が過去8週間に渡って聴いていたのが「Lifespan with David Synclair」のポッドキャスト。 これはハーバード大学教授で、世界的ベストセラーになった「Lifespan(邦題:ライフスパンー老いなき世界)」の著者でもあるアンチエイジング界の第一人者、 デヴィッド・シンクレア博士と、彼の共著者でジャーナリストのマシュー・D・ラプラントによる全8エピソードのシリーズ。
私が個人的にDr.シンクレアのアンチ・エイジング説を信頼するのは、自らのアンチエイジング・メソッドを実践する彼自身(52歳)が年齢よりも遥かに若く見えること。 さらに彼はミトコンドリア、サーチュイン遺伝子の働きといった今では当たり前になったアンチエイジング・セオリーをいち早く唱え、 私にとって長年欠かせないサプリ、レスヴェラトロールの摂取を奨励するなど、私が最も納得できるアンチエイジング論を展開してきたため。
その彼が2022年に入ってからポッドキャストをスタートした理由は、様々なメディアで彼のセオリーが取り上げられているものの、やはり紙面や文字数が限られた記事のフィーチャーだと、 どうしても彼のアンチエイジング論が歪んで伝わるケースがあるのに加えて、 「ライフスパン」が出版されてから既に3年が経過し、その間に新しい研究結果や論文が次々と発表されていることから、 次作の本を手掛ける前に これまで発信した情報のアップデートが必要と考えたため。
私の場合、ポッドキャストはもっぱら料理やワークアウトをしている最中に聴くことが多いけれど、 「Lifespan with David Synclair」に関しては専門用語が多く、意味が分からない言葉を字幕から拾ってグーグル検索しなければならないケースもあって、 他より集中力を要するポッドキャスト。 それでも内容が興味深いので、毎週新しいエピソードが発信される度に視聴するうちに全エピソードを観終わるに至ったのだった。




全8話のエピソードは上のタイトルにも見られる通り、エイジングの仕組みから始まって、食事、外観、エクササイズ等、毎回フォーカスを変えて長寿とアンチエイジングについての 1時間を超えるトーク。内容もかなり専門的であるけれど、簡単で分かり易い要点のみを纏めると、どんな側面からエイジングを語る際にも必ず一番やってはいけない事の筆頭に上がるのが喫煙。 次いで睡眠の量と質の低下、日焼けを含むUVライトを浴びること、食べ過ぎ、加工食品やアルコールの摂取、運動をしないこと、過度な精神的ストレスが 同等に悪いとされるけれど、これらはわざわざDr.シンクレアに説明されなくても 誰もが常識として理解していること。それでも科学的根拠に基づく、細胞や遺伝子レベルから これらが如何に老化の促進と短命の原因になるかを立証されると 実感せざるを得ないのが エイジング・プロセスには運や例外などあり得ないこと。 事実、どんなに恵まれたDNAの持ち主でも不摂生な食事やライフスタイルで若さが保てるのは40代半ばまで。そんな人が一度老け始めると、坂から転がり落ちるような急激な老化を見せるのが常。
でもDr.シンクレアによれば「エイジングを治療する方が ガンを治療するよりも簡単」だそうで、そのエイジング治療でまず抑えなければならない3つの遺伝子(タンパク質)が mTOR、AMPK(アクティベーテッド・プロテイン・キナーゼ)、そしてサーチュイン。mTORはステーキを食べたり、筋肉が大きくデベロップされる際にレベルが高まるけれど、これは老化促進と短命をもたらす タンパク質なので、レベルを低く保つべきもの。逆にAMPKとサーチュインは活性化によって若さと長寿が得られるもので、 AMPKのレベルを高めるのに有効なのが処方箋糖尿病治療薬のメトフォーミン。その代用サプリがバーべリン。サーチュインを活性化する手段はカロリー制限、 もしくはNMNレスヴェラトロールのサプリメント摂取。 NMNはサーチュイン・レベルを高めるNADの前駆体。レスヴェラトロールはポリフェノールの一種であるけれど、老化を防ぐ必要量を赤ワインから摂取しようとすれば1日に100本を飲む必要があると言われるもの。 メトフォーミン、NMNレスヴェラトロールは Dr.シンクレア自身が摂取しているサプリメントでもあることから 近年売上を伸ばしてきたけれど、レスヴェラトロールは粒子が細かくないと体内に浸透し難いサプリで、 Dr.シンクレア自身は浸透を高めるためにヨーグルトやオリーブオイルに混ぜての摂取を奨励しているのだった。
彼曰く、エイジングにより体内でこれらが不足した場合には 同じ成分を食事から得ることは不可能とのことで、 たとえば体内でNADを作り出すはずのヴィタミンBを食事やサプリで摂取しても、NADの生成に辿り着くことが無いことは過去の実験で証明済。 そのためDr.シンクレアが正しい食事とエクササイズと共に アンチエイジングと長寿に欠かせないと断言するのが サプリの摂取なのだった。




またDr.シンクレアがポッドキャストで頻繁に持ち出してきたのがホルミシス。 これは身体に意図的にある程度の毒素やストレスを与えることによって、そのリバウンド効果と言える再生修復機能を向上させること。 これにより細胞やDNAの若返りや活性化がもたらされるので、身体にも老化のスローダウンやリバースがもたらされるのだった。 日常生活でのホルミシス効果を得るには 食事であればファスティング、アイスバスやサウナなど温度で身体にストレスを与えること、 脳が刺激される新しいアクティビティやチャレンジ、エクササイズ等の体力的なチャレンジ、ルーティーンの生活から抜け出す事等で、 これらによって一時的に活性酸素が増えることがあっても、やがてAMPK(アクティベーテッド・プロテイン・キナーゼ)やサーチュイン遺伝子の活性化、ミトコンドリアの増殖によって 若さが保てるということで、早い話が身体、脳、精神は日頃から鍛えていなければどんどん老化が進むということ。

食事については長寿とアンチエイジングに焦点を絞った場合、食事の回数は少なければ少ないほどベター。 同じカロリーを食べる場合でも、回数を分けて体内に食べ物が滞在する時間が長ければ長いほど老化が進行するとのこと。 また昨今良く取り沙汰されるオートファジー(一定期間食事を絶ち 栄養分が不足した際に、体内に蓄積された古い細胞や老廃物を身体が栄養源として使うこと)については、 日本では16時間以上のプチ断食、アメリカではeGFR(糸球体濾過率の推定)研究結果により18時間というのが オートファジーに必要と言われる最低断食期間。 私は基本的に1日1食主義なので食事を取らないウインドウは約22時間。その私が3日断食して得られる体質改善効果は全く異なるだけに「本当に毎日オートファジーが起こっているのだろうか?」と疑問を感じてきたけれど、 Dr.シンクレアはポッドキャストの中で「オートファジーは3日以上の断食で起こる」と複数回語っており、空腹によるサーチュイン遺伝子の活性化と オートファジーがはっきり区別されていたのは私自身、非常に納得したことの1つ。
食事の内容でDr.シンクレアが薦めるのはやはり地中海ダイエットで、特にオリーブオイル摂取の重要性を訴えていて、逆に彼が40代から止めているのがデザートを食べること。 とは言っても周囲から1口、2口を”盗んで”デザートを味わっていることは認めているのだった。




私にとって一番興味深かったのはコスメティック・エイジングのエピソード。医学的見地からも外観の若々しさがそのまま寿命に反映されるというのは正論で、 年齢よりも 何歳に見えるかの方が老化の進行具合の的確なインディケーターになるだけでなく、若く見える人は確実に長生きをしているとのこと。 特に寿命のバロメーターになるのが皮膚の若さ。皮膚は体重の6分の1を占める人体で最大のOrgan(臓器)であり、 肌が若ければ身体が若いだけでなく、肌が若返った場合には身体全体も同様に若返っているとのこと。
Dr.シンクレアが肌の若さをチェックする際に行うのが手の甲の皮膚をつまんでから放すことで、皮膚が直ぐにバウンスバックするのは若さの象徴。 逆につまんだ部分が手の甲に残り続けて完全に消えるまでに時間が掛かるようになれば それは老化の進行具合を示しており、平均的な40~50代は つまんだ皮膚が元通りになるまでに5~10秒、60代は10~15秒、70代になると30秒から1分を要すると言われるのだった。

私はこれまで日焼けというのは肌のダメージだけの問題かと思って来たけれど、Dr.シンクレアによれば日光と室内光のUVダメージは皮膚だけでなく、体内の細胞のパーマネント・ダメージを意味するもので、 外観の問題だけでなく、健康と長寿の見地からもサンスクリーンの使用は室内で1日過ごす場合でもマスト。
皮膚のアンチエイジング、エイジングリバースを可能にするのはやはりレチノールで、コラーゲンの生成、色素の修正、ケラチンの供給、 細胞の組成成長をプロモートする唯一、最強の存在。若さのためには顔だけでなくボディ・スキンにもレチノールは必要のようで、 このエピソードを見て真っ先にリサーチしたのがレチノール入りのボディ・ローション。加えて0.5%程度のレチノールをミノキシジルと一緒に頭皮にアプライすると、子供騙しではない育毛効果も望めるとのこと。 でもルックスがそのまま身体の本来の年齢を反映するとは言え、白髪や円形脱毛症で死ぬ人が居ないことからも分かる通り、これらは実際には老化とは無関係。 それでも頭髪は社交面を大きく左右するので、精神面の若さには大きく影響するようなのだった。

Dr.シンクレアによれば、昨今増えているレスヴェラトロールを使ったスキンケアは、その多くが酸化防止効果を謳っているものの、 実際にはレスヴェラトロールの酸化防止効果はさほど強いとは言えないもの。しかし皮膚のディフェンス効果、老化のスローダウン、血行促進、皮膚細胞に空気を送り込み、サーチュイン遺伝子に働きかけるという 効果は望めるとのこと。世の中一般でも「老化を防ぐには酸化よりも 糖化のダメージを防ぐ」という説にシフトしてきているけれど、皮膚についても 抗酸化にはさほど大きな老化防止効果は望めないようなのだった。
皮膚も身体と一緒で NADレベルを高めることが若さの秘訣。スキンケアでサプリのNMNに匹敵する役割を果たして サーチュイン遺伝子に働きかけるのがナイアシナマイド(ナイアシン)。ナイアシナマイドはヴィタミンB3で、オイル分泌の正常化、毛穴を小さくする効果が マーケティング効果として謳われているけれど、実際には色素沈着やアクネ防止等 幅広い効果が認められており、皮膚科医が肌質を問わず アンチエイジングで必ず使用を薦めるのがレチノールナイアシナマイド。 その双方を皮膚科医とは異なるアングルでDr.シンクレアが使用を奨励していたのはとても興味深かった点。ちなみにナイアシナマイドは20~50%を含んだスキンケアが市場に出回っているけれど、 理想的で効果が高いのは5~10%で、特に20%を超えたプロダクトはサイドエフェクトのリスクがあるのだった。
これらと共にDr.シンクレアが「友人のプロダクトだから宣伝する訳ではないけれど…」と言いながら効果を認めていたのが、700種類ものペプチドの中からエイジ・リバース効果があるものを 取り込んだスキンケア・プロダクトで、レチノール同様にシワ、シミを防ぐ効果がありながらも、レチノールの刺激無しに使い続けられるプロダクト。 私はこのプロダクトを早速オーダーして届くのを待っている最中で、効果が認められた場合は、もちろんこのコーナーでご紹介する予定です。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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