July 20 ~ July 26 2025

Epstein Files, Alligator, Viral Move
今週のアメリカ:エプスティーン、アリゲーター、国民的ジョーク


今週のアメリカで引き続き 大報道になっていたのはジェフリー・エプスティーン関連のニュース。 捜査ファイルの公開は先週、民主党の全員賛成、与党共和党の全員反対で否決されたけれど、ウォールストリート・ジャーナルによれば、今年5月にボンディ司法長官はトランプ氏の名前が複数回 ファイルに記載されていることを本人に通達していたとのこと。 今週下院は現在服役中のエプスティーン・マダム、ギーレン・マックスウェルに対し、8月11日に議会証言を求めることで合意。 それに先駆けてマックスウェルは司法省と面談しており、トランプ氏が沈黙と引き換えに恩赦を与える可能性が高まっていると見られるのだった。
一方、先週末から今週に掛けては、エプスティーンの50歳の誕生日にトランプ氏が書いた言われる女性の裸体のイラストと「may every day be another wonderful secret(これからの毎日も素晴らしい秘密の連続になるように)」という意味深なメッセージ、エプスティーンがトランプ氏と2人目の妻、マーラ・メイプルとの結婚式に出席した際のスナップ等、これまで未公開だった2人の親密さを立証する証拠が次々と浮上。そのためタイムズ・スクエアや、郊外のハイウェイを含む様々な場所に エプスティーン・ファイルの公開を求める屋外広告が登場したのが今週。
トランプ氏の誕生日メッセージを公開したウォールストリート・ジャーナルに対しては、トランプ氏が100億ドルの賠償請求訴訟を起こしたけれど、同紙の親会社はトランプ氏のマウスピース・メディア、FOXニュースを傘下に収め、トランプ氏の友人 ルパート・マードックが経営するニューズ・コーポレーション。勝算が低い訴訟をあえて起こしたのは、エプスティーン・スキャンダルで 地崩れを起こしているMAGA支持層にトランプ氏が自らの潔白をアピールするためとの指摘が多いのだった。



アリゲーター・アルカトラス、無慈悲な劣悪コンディション


今週SNS上で大物議を醸していたのが、7月初旬から不法移民の収監が始まったフロリダ州アリゲーター・アルカトラスの非人道的なコンディション。 アリゲーターやパイソンが生息する湿地帯にある飛行場滑走路に、僅か8日間で設置された仮設テント&トレーラーの集合体がこの施設で、逃亡すればアリゲーターの餌になることから ついたのがこのネーミング。 地元民が設置に反対していた理由は、下水設備が無いエリアに数千人を収容する施設を作れば 周辺環境が破壊されるためだったけれど、 案の定、アリゲーター・アルカトラスは既に悲惨な状況。
収監されている数百人は、檻に囲まれたベッドが使えれば良い方で、多くが眠るのはコンクリートの床の上。 施設内は蚊やコオロギを含む巨大な昆虫やカエルが一杯で、トイレが流せないために汚水が施設内に溢れ、テント内は震えるほど寒いか、耐え難いほどの猛暑。 シャワーは数日おきで、提供される粗末な食事には虫が混入しているのが常。クリーンな飲料水さえ保証されない最悪のコンディション。 しかもICE(移民関税局)職員は 不法移民を動物のように扱っており、 一部の移民は後ろ手に縛られ、フード・コンテナの中に顔を埋めながらの食事を強いられるという悲惨さがレポートされているのだった。
テント内には病気を媒介する蚊が大量発生。夜通し襲ってくる蚊のせいで睡眠がとれず、皮膚が水膨れになる収容者は多く、蚊と不衛生な水、食事から感染症が広がるのは時間の問題。 視察を行った議員、取材に訪れたAP通信、マイアミ・ヘラルド紙等が こぞって劣悪環境を訴えたものの、 フロリダ州緊急事態管理局は 「施設は正常に機能しており、収容者は清潔な設備を利用している」と主張。フロリダ州知事で元共和党大統領候補、ロン・ディサンティスも施設の正当性をアピールしており、 「アリゲーター・アルカトラス」は、今ではSNS上で「アリゲーター・アウシュヴィッツ」と呼ばれるようになっているのだった。 同施設には最終的に5000人が収容される見込みで、フロリダ州はこんな粗末な施設の年間運営費として、4億5000万ドルを政府予算から受け取るのだった。
新たに可決された財政案では、移民取り締まりの予算が大幅増額されたとあって、現在ICEは新たな職員を募集中。 採用条件は、学歴、経歴を一切問わず、銃のライセンスと移民取り締まりの強い意欲を持つこと。 そのためネット上では「ICEが求めるのは、自分の能力不足、努力不足による不遇を移民のせいだと決めつけ、暴力や銃で力を誇示したがる虐め気質の人材」と批判されており、 その条件を満たしてICE職員になった場合、アメリカの平均的な教員の3倍の給与が支払われるのだった。



あのポーズが 国民的ジョークに


今週、アメリカのみならず世界中が話題にしたのが 7月15日にボストンで行われたコールドプレイのコンサートのキスカムがきっかけで発覚したアストロノマー社CEOアンディ・バイロンと人事エグゼクティブ、クリスティン・キャボットの不倫。バイロンは当初、プライバシー侵害で訴訟を試みたけれど、全米のコンサート会場やスポーツアリーナでは、観客に対して会場内の映像がメディアで使用される可能性が明記されており、訴訟は不可能。 しかしコールドプレイのヴォーカル、クリス・マーティンは、その後のコンサートでキスカムを使用する際、観客に事前警告するようになったとのこと。
今週はコンサート会場やスポーツ・スタジアムで、「He's Not My CEO」、「This is my Wife」と一緒にやって来たパートナーが浮気相手ではないこと宣言するサイン、「我々は浮気のためにここに来たのではありません」といったサインが見られ笑いを誘っていたけれど、カナダのナイトクラブは「心配しないでください、コールドプレイは来ていません」という入口のサインで、来店客に浮気がバレないことをアピール。さらに今週は複数のスポーツチーム・マスコットから、 TVパーソナリティまでもが、腕を絡めて寄り添ってから、周囲の視線に気付いて 慌てて離れてから隠れるという バイロンとキャボットのヴァイラル・ムーブを再現。 メジャーリーグ・サッカーのリアル・ソルトレイクのスタジアムでは、キスカムではなく ”コールドプレイカム”が登場。 カメラに捉えられたカップルが、何のインストラクションも無しに バイロンとキャボットを再現する様子には 社会風刺とユーモアを好む アメリカの国民性が如実に表れていたのだった。
また今週にはバイロンとキャボットをモデルにしたビデオ・ゲームまで登場。 既に2人の映像が 年末に各メディアが製作する「2025年ダイジェスト」にフィーチャーされることは確実視されているのだった。

執筆者プロフィール
秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。
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