今週のアメリカは政府のシャットダウンが3週目に突入し、史上2番目の長さ。低所得者の食糧援助プログラムが底をついたことで、これまでフードスタンプを貰っていた人々が
全米各地のフードバンクに食糧を頼り始めたせいで、フードバンクが危機的状況。政府職員が貯金を食い潰して月々の生活に追われ、政府への怒りが膨らむ中で 突如始まったのが
3億ドルを投じたボールルーム建設のためのホワイトハウス・イーストウィングの解体作業。1980年代のレーガン政権以降アメリカで59回しか行われて来なかった晩餐会のために建設されるのが新ボールルーム。
これまで歴代大統領がホワイトハウスの増築、改築、プールの設置等を行うことはあっても、建物全体を解体して新築するのは初めてのことで、通常は歴史的建造物保存の見地から、
その正当性の検証を行ってから解体を行うのがプロセス。
その一方で今週 トランプ氏は司法省に対して、2021年にホワイトハウスを去った際の機密文書持ち出しの家宅捜索等を含む 連邦捜査に対する補償金として
2億3000万ドルの支払いを求めており、その請求審査に当たる司法省がトランプ氏によって任命された部下というのは米国史上前例の無い異常事態。
すなわち支払が認められてしかるべき状況の保証金をトランプ氏個人に払うよう要求している訳で、その保証金をボールルーム建設費に充てることを示唆したのがトランプ氏。
しかしトランプ氏は7月にボールルーム建設案を発表した際、「ホワイトハウスの現存の建物には一切影響を与えない」という主張と共に、「費用は自分と愛国者の寄付で賄われ、国民の税金は一切使わない」と明言しており、もし保証金が支払われる場合、通常その財源は国民の税金。何から何まで事前発表とは異なるのが このボールルーム建設。
先週末には米国民の2%に当たる700万人がトランプ政権に対する”No King”抗議デモに参加したけれど、エコノミストの最新調査ではトランプ氏の支持率は39%、不支持率は56%。
近年最低だったトランプ第一期政権の不支持率を下回る記録を更新中なのだった。
今週火曜日に出版されたのが、今年4月25日、オーストラリア・パース近郊の自宅で41年の短い生涯に自ら終止符を打ったヴァージニア・ジフリー(旧姓ロバーツ)の自叙伝『Nobody’s Girl
(邦題:少女の死)』。
ヴァージニアは、ジェフリー・エプスティーンのセックス・トラフィッキングを告発した最も有名な被害者で、特に英国メディアからの批判を浴びながらも
アンドリュー王子との関係を強要されたことを訴え続けた末、2022年にはNYで起こした民事裁判で1000万ポンド (約14億5000万円)の和解金を 示談で勝ち取った存在。
そのアンドリュー王子はこの本の出版で 再び批判が寄せられることを悟ったためか、先週金曜に自らDuke of York(ヨーク公爵)のロイヤル・タイトルをギブアップ。
イギリス王室のウェブサイトからもDuke of Yorkのタイトルが消え、称号は停止状態。しかし法的には存在しているため、肩書上はプリンスであり続けるのがアンドリュー王子で、
批判を避けながら、称号だけは守る策に出たという印象なのだった。
『Nobody’s Girl』の内容は、ヴァージニアが幼い頃に実父から受けた虐待で始まり、
「子供の頃、私はあらゆる虐待を受けました。近親相姦、親のネグレクト、酷い体罰、性的虐待、レイプ…」と、その壮絶な生い立ちの詳細を告白。
実父はメディアの取材に対してそれらを否定しているものの、同書では父親が性的虐待を目的に、友人の幼い娘と自分を一晩交換する約束を交わしていたことが明され、
ジェフリー・エプスティーンに出会う前から家族によるセックス・トラフィッキングの犠牲者になり掛けた様子が描かれているのだった。
そして問題のエプスティーンのセックス・スレーブ(性奴隷)として過ごした日々については更に生々しい記載がされており、
「彼ら(エプスティーンと共犯者のギーレン・マックスウェル)は、私を何十人もの裕福で権力のある人々にあてがいました。私は常習的に利用され、辱められました。
時には首を絞められ、殴打され、血まみれになることもありました。 私は性奴隷として死ぬかもしれないと思っていました」。またエプスティーンは、ある時を境にサドマゾヒズムに取り憑かれ、
少女達の手足や首に鎖がついた黒い革製バンドを装着。その装置で様々な苦痛を与えることを楽しんでおり、ヴァージニアは「あまりの苦痛に意識を失うことを祈ったほどでした」と当時を振り返っているのだった。
問題のアンドリュー王子とは 関係を3度強要されており、アンドリュー王子が彼女の腰に手を回し、そのすぐ横にギレーン・マックスウェルが立っている有名な写真は、初めて王子にロンドンで出会った際に、マックスウェル宅でインスタント・カメラで撮影されたとのこと。 「この娘は何歳に見える?」とマックスウェルに尋ねられた王子は「17歳」とヴァージニアの年齢を言い当て、「自分の娘達より少し年上に見えた」と説明。その後エプスティーン、マックスウェル、アンドリュー王子、ヴァージニアは、当時トランプ氏がロンドンで経営していたナイトクラブに出掛け、そこで王子が大量の酸っぱい匂いの汗をかいて、リズム感の無い踊りをしていた様子は、生前ヴァージニアがインタビューで語っていた通り。 マックスウェルはヴァージニアに「家に戻ったら、日頃ジェフリー(エプスティーン)にしているのと同じことを王子にするように」と指示したという。
マーラゴでマックスウェルにスカウトされ、マッサージを含むセックス・スレーブとしての教育を受けてきたヴァージニアは、帰宅後に指示通り 王子と入浴を共にしてから関係を持ち、全行程は30分程度だったとのこと。
「彼はそれなりに親切でしたが、私と関係することが当然の権利だと思っているような傲慢さがありました」と王子について語り、
その「謝礼」として後日エプスティーンが彼女に1万5000ドルを支払い、スレーブというよりは娼婦の扱いであった様子を明かしているのだった。
ヴァージニアが最後にアンドリュー王子の相手をさせられたのは、2001年に王子とエプスティーン、他8人の18歳未満と思しき少女達を交えての乱交パーティーの際で、場所は「ロリータ・アイランド」として知られるエプスティーンが所有するカリブ海のプライベート・アイランド。少女達は殆ど英語が話せず、コミュニケーションが取れなかったものの、逆にそれを好都合と捉えて歓迎していたのがエプスティーン。
その数日後に出血と腹部の激しい痛みに襲われ、NYの病院に緊急搬送されたヴァージニアは、自分が妊娠し、流産したことを知らされたという。
診察はエプスティーン立ち合いの中で行われ、エプスティーンと医師の間では守秘協約が交わされたとのこと。ヴァージニアは自分の腹部に小さな切開跡があり、
それが子宮外妊娠の腹腔鏡手術によるものと疑ったものの、カルテには事実が記載されることは無く、エプスティーンには流産と告げられ、
胎児の父親がアンドリュー王子であるかも定かではなかったとのこと。
その後ヴァージニアは、エプスティーンとマックスウェルから、代理出産で彼等の子供を産んで欲しいと依頼されたものの、
「性的虐待をされることが分かっている子供を産むなんて絶対にあり得ない」というのが彼女の本音であったという。
現在ロンドン市警察が正式に捜査に入ったのが、2011年にアンドリュー王子が、ヴァージニアの生年月日と社会保障番号を入手し、
彼女を中傷するための情報集めを依頼していた疑惑。ヴァージニアによる告発を全面否定していた王子は、エリザベス女王の当時の報道官代理にEメールを送り、
ヴァージニアの粗探しをボディガードに依頼。しかし、ボディガードは要請に応じなかったとのことで、そのEメールのやり取りは 米国議会委員会が保有するエプスティーン関連の資料から入手されているのだった。
一方米国下院では、エプスティーン捜査ファイルの公開を司法省に強制する法案に民主党議員全員と、数名の共和党議員が賛成票を投じており、
可決まであと一票という段階。そして確実にその票を投じるのが、未だ就任の宣誓を済ませていない民主党の新下院議員。
そのため共和党のジョンソン下院議長は意図的に 就任宣誓セレモニーを遅らせていることが報じられ、
政府のシャットダウンは、エプスティーン・ファイル公開を先延ばしにしたいトランプ政権には有利に働いている状況。
民主党リベラル派は、エプスティーン・ファイルが公開されないのは、トランプ氏の関与が深いためと疑い続けているけれど、
ヴァージニア1人だけでも 相手をさせられたVIPの数は数十人。エプスティーン被害者は、IDを明かしていない女性も含めて100人以上が名乗りを上げていることを思えば、
トランプ氏だけでなく、捜査ファイルに名前が出ているVIPがこぞってその公開阻止に動いているのは明らか。
そんなVIP達がトランプ政権に様々な名目で多額の寄付を寄せているとの指摘も聞かれているのだった。
![]() |
執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


当社に頂戴した商品のレビュー、コーナーへのご感想、Q&ADVへのご相談を含む 全てのEメールは、 匿名にて当社のコンテンツ(コラムや 当社が関わる雑誌記事等の出版物)として使用される場合がございます。 掲載をご希望でない場合は、メールにその旨ご記入をお願いいたします。 Q&ADVのご相談については掲載を前提に頂いたものと自動的に判断されます。 掲載されない形でのご相談はプライベート・セッションへのお申込みをお勧めいたします。 一度掲載されたコンテンツは、当社の編集作業を経た当社がコピーライトを所有するコンテンツと見なされますので、 その使用に関するクレームへの対応はご遠慮させて頂きます。
Copyright © Yoko Akiyama & Cube New York Inc. 2025.