今週のNYは金曜が世界盛大のハロウィーン・パレード、日曜がNYマラソン、そして来週火曜日にはいよいよNY市長選挙が控えている大忙し状態。
今週アジア歴訪を行ったトランプ氏については カテゴリー5という近年に無い大規模のハリケーンや、政府シャットダウンが4週目に突入して食糧補助が途絶える4200万人の国民の危機的状況のニュースが優先され、
中国のシー・ジン・ピン首席との会談以外は さほど大きな報道にはならなかったけれど、
SNSが注目したのがアジアに向かうエアフォース・ワンの中で、トランプ氏が 出発前に受けた今年2目の健康診断でMRI検査を受けていたことを認めた発言。
ホワイトハウスは「MRIは米国大統領の健康診断のルーティーン」と弁明したものの、歴代大統領にその前例は無く、
検査のタイミングから複数の医療関係者が語っていたのが 「大統領が一時メディアから姿を消したレイバーデイ直後に、軽い脳卒中を患っていた」という噂の信憑性。
トランプ氏の右半身が硬直気味で、歩行が不自然な様子から、疑われていたのが脳卒中による左脳損傷で、その症状には認知機能、言語能力の低下等があり、
在日米軍基地でも見せた 意味を成さないスピーチの脱線が このところ更に増えた様子が指摘されていたのだった。
その一方でSNS及び、夜のトークショーがこぞってジョークのネタにした訪日中の映像が、迎賓館と思われる建物内を本来なら高市首相と並んで歩き、正面で立ち止まり、ひな壇に戻る場面で、
トランプ氏が勝手に歩いては立ち止まり、高市氏がその右を歩いたり、左を歩いたりしながら誘導に大苦戦する姿。
訪日中、高市氏がトランプ氏と腕を組んで歩く様子が見られたのも、「トランプ氏を誘導する目的」と見られていたのだった。
今週月曜に大きく報じられたのが、ウォルマートに次いで全米第二位の民間雇用主であり、世界最大のオンライン・ショッピング・ビジネスであるアマゾンが、翌日火曜日に3万人の従業員を解雇するというニュース。
結局、火曜日に解雇されたのは1万4000人で、残りは後日となったけれど、解雇理由はAIが従業員の労力にとって代わるため。
アマゾン以外にも、2025年にはセールスフォース、IBM、ルフトハンザ、ネッスル、コンサルティング大手のPwCがAI解雇を実施。今後は金融や、グーグル、アップル、メタといったIT大手も既に始めた解雇を更に増やすとのこと。
「AIによって仕事を奪われるのはブルー・カラーよりホワイト・カラー」と言われるだけあって、今週アマゾンで最も解雇が多かったのはオーディオ・ブック部門を始めとするソフトウェア・エンジニア。
実際に、今後3年以内に起こると言われるのがホワイトカラー労働者の激減で、アントロピックのCEO、ダリオ・アモデイは同社のAI、クロードがホワイトカラーの初級職の半分を奪うと予測。
それとは別にサンフランシスコを拠点とするメルコール社や、チャットGPTの親会社 オープンAIらが 現在猛スピードで進めているのが、
医師や弁護士、元投資銀行家などにAIトレーニングを委託し、人間の専門知識でAIを微調整する作業。これにより、程なく若手社員の業務がAIに取って代わられ、
近い将来的にはベテラン社員の高額給与業務をAIが無償で行う時代が実現するとのこと。高い学費を払って医者や弁護士、投資家になったところで、AIに仕事が奪われるのは時間の問題なのだった。
ちなみにメルコール社は大学を中退した3人によって設立された創業2年目のスタートアップ。CEOは22歳で、企業評価額は既に100億ドルに達しており、
上の世代がAIに職を奪われる一方で、AI分野で卓越したアイデアや能力を持つ若い世代は、あっという間のビリオネアも夢ではない状況。
しかしその能力が無ければ、絶望的に仕事が見つからないのも また事実なのだった。
アマゾンに話を戻せば、同社が解雇を予定しているのはホワイトカラー労働者だけではなく、つい最近発表したのが ウェアハウスの50万人以上を ロボットに置き換える計画。
アマゾンは2018年以降、米国内でのオンライン・ショッピング激増を受けて、従業員数をそれまでの3倍以上に当たる約120万人に増やしたけれど、
ウェアハウスの自動化、ボット業務の大幅拡大に伴い、ここ2年足らずで劇的に変化したのが職場環境。これまでの雇用創出企業から 雇用破壊企業へシフトしている最中で、
アマゾンの動向を見る限り、ホワイトカラーはAIに、ブルーカラーもボットに仕事を奪われるのが宿命と言えるのだった。
今週S&P500は最高値記録を更新し、エヌビディアは史上初の5兆ドル企業になっているけれど、Meta(フェイスブック)、マイクロソフト、アルファベット(グーグル)、アップル、アマゾンの5社も、
AIブームに乗って株価を大きく上昇させているのは周知の事実。この5社の時価総額は15兆ドルを超え、巨大なAI企業グループを形成しているけれど、
アマゾン、マイクロソフト、グーグル、メタの4社だけで、2025年度に投じたAI関連の設備投資費は3,500億ドル(約50兆円)以上。
その大半は、AIを動かすための巨大なデータセンターの建設、及びその施設が必要とする膨大な電力の供給体制に投じられており、
AIレイオフを実施する企業の大半は その人件費の節約分をAI投資に回しているのだった。
今やそんなAI投資が 米国GDPをけん引する存在になりつつあり、2025年上半期だけでAI関連投資が引き上げた米国GDPは1.1%。
逆に衰える傾向にあるのが これまでGDPを支えてきた個人消費。
調査会社の試算では、S&P500社全体の2025年度の設備投資額は過去最高の1兆2,000億ドル。そのうちの30%を担うのがS&P上位9社、すなわち大手IT企業。
要するにAIブームは 僅か9社の巨大IT企業が牛耳る世界で、その莫大な投資が今のアメリカ経済と株式市場を支えているのが現在。
今週四半期業績を発表したグーグル、メタ、マイクロソフトは、いずれもAIへの更なる投資を改めて強調。
他の大手企業も、これまで株価を上げるために行って来た自社株買戻しの資金の一部を、今後はAI投資に振り分けるようで、
シティ・グループのアナリストによれば2029年までに、さらに約3兆ドルの資金が流れ込むと見込まれるのがAIビジネス。それだけに万一そのバブルがはじけた場合の経済危機も懸念されるけれど、
エヌビディアのCEO、ジェンスン・フアンは AIバブル自体を否定する強気の姿勢。しかしこの先AIが多くの人々から職と購買力を奪っていった場合、
その社会で企業がどうやって利益を上げていくかについては、誰も言及していないのだった。
今週には、消費の冷え込みでアマゾンからの配達依頼が激減したUPSが、過去9ヵ月で3万4000人の運転手と倉庫業務、1万4000人の管理職、合わせて4万8000人の従業員を解雇し、
自動化、施設閉鎖、季節雇用削減による22億ドルの経費削減見込みを発表。今のご時世は
大量解雇と言えば 業績不振よりも、自動化やAI導入による人件費大幅カットを意味するとあって、その直後にUPS株は12%上昇。
またAIとは無関係の分野ながら、AIブームのお陰でこのところ株価を大きく上げているのが建設機械メーカーのキャタピラー社。
理由はアメリカのみならず、世界各国でAIのための巨大データセンターが建設されているためで、同社株式は過去6ヵ月で89%上昇。
エヌビディアを上回る伸び率を見せているのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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