米軍がイラン戦争開戦から1ヵ月で、1発200~300万ドルのトマホーク・ミサイルを850発使用したことが伝えられ、
「国家予算は健康保険など国民が個人で賄うべきものに使っている場合じゃない」と、2027年に1兆5000億ドルの国防予算を求める意向を示したトランプ氏が、
国民に向けて19分のプライムタイム・スピーチを行ったのが4月1日のエイプリル・フール。その国内外のリアクションは惨憺たるもので、
通常大統領のプライムタイム・スピーチはライブ放映の緊張感の中で行われてきたのに対し、今回のスピーチは事前収録。
スローでボソボソした支離滅裂な語り口は、共和党インフルエンサーには「オバマのスピーチが懐かしい」と言われ、
NYタイムズのコラムニストにいたっては「規律も、構成も、中身も、迫力さえ無く、人々の心を揺さぶることも無ければ、
大統領としての威厳の欠片も感じられない子供じみたスピーチ。事前のSNS投稿内容以外何も語られず、唯一の新情報は ホルムズ海峡が何らかの魔法によって
程無く再開されるとトランプが本気で信じていると思しき点だ」と厳しく批判。
同じ日の朝、戦争終焉が近いことを歓迎して急騰した株式市場、下落した石油価格は、この白けたスピーチを受けて翌日にはすっかり逆方向。
米国民の大半は わざわざプライムタイム・スピーチを行いながら、戦争が何時終わるかを明言しないトランプ氏に極めて批判的なリアクションを見せていたのだった。
今週トランプ氏は、米軍への領空提供を拒否したNATO加盟国を、
「石油が無いならアメリカから買え。我々には十分な在庫がある。そして遅ればせながら勇気を奮い起こしてホルムズ海峡に行き、自力で闘え。アメリカはもうNATOのために駆けつけることは無い」と
SNSを通じて厳しく批判。
しかし、これに対して国内外から寄せられたのは「勝手に戦争を始めて、石油流通を止めた超本人が何を言う」という猛反発。
トランプ氏はアメリカを援助しないNATOからの脱退をこれまで以上に強く表明したけれど、NATO/北大西洋条約機構 は防衛協定。
加盟国には攻め入らず、加盟国のいずれかが攻撃された場合に NATOが団結して敵と闘う条約。
NATO加盟国であるデンマークの領土、グリーンランドへの侵攻をほのめかし、イスラエルと共に勝手にイラン戦争を始めたアメリカに同調出来ないのは当然のこと。
NATO脱退はトランプ氏の一存では決められず、議会承認が必要であるとは言え、第二期政権のトランプ氏は既に何度となく議会承認を得ずに暴走を繰り返しているだけに
NATO脱退も独断で突っ走ることが懸念されたのが今週。 とは言っても、「アメリカは事実上、既にNATOの一員ではなくなりつつある」との指摘は多く、
トランプ政権が終わったところで、アメリカが以前の同盟関係、貿易関係と信頼を取り戻すには10年以上を要するとの見方が専門家の間で広がっているのだった。
そんな中、トランプ氏の独断&暴走にストップが掛かったのが今週火曜日。トランプ大統領が勝手に進めて来たホワイトハウスのボールルーム(舞踏室)建設について、
連邦判事が 議会承認が得られるまで工事中止を命じる判決を下したのだった。 アメリカの歴史的建造物でありながら、何の承認も得ずに解体されたホワイトハウス・イースト・ウィングの
跡地に建設予定だったボールルームは、トランプ氏が事ある毎に誇らし気に語って来たプロジェクト。
しかし 「ホワイトハウスの期間限定の住人でしかないトランプ氏には、議会承認を得ず、専門家への意見聴取もせずにボールルーム建設をする権限は無い」と、
訴訟を起こしたのが全米歴史保存信託。トランプ政権は「建設費は 個人投資家、約20社IT、暗号通貨、防衛関連企業らの ”愛国者”から集めた約4億ドルの寄付で賄い、
国民の税金は一切使っていない プライベートなプロジェクトである」と主張。しかしボールルーム建設は当初からプロジェクト責任者が不在で、
民間から寄付を募る法的根拠も示されておらず、集まった寄付にしても、政府権限に物を言わせた優遇措置と引き換えに支払われただけの、言わばロビー活動費。
全米歴史保存信託は、議会承認無しでケネディ・センターを改名しただけでなく、勝手に改修工事に踏み切ったことでもトランプ氏を訴えており、
そのケネディ・センターは、トランプ氏が役員を全員解雇し、自分の支持者で入れ替えたことから
著明パフォーマーがこぞって出演を拒否。 キャスティング・ディレクター、プレジデントまでもが辞任してしまい、経営が不可能な状態。
今週、トランプ氏はメラニア夫人を伴ってセンターを訪れたけれど、半分しか埋まらない客席から熱烈な拍手で夫妻を迎えたのは
根回しで集められたトランプ支持者。その場に居た本当の観客はブーイングで夫妻を迎えた様子が伝えらるのだった。
ホワイトハウス・ボールルームの建設費は、NYのパーク・アベニューにイギリスの著名建築家のデザインで建設された60階建て、高さ800メートル、19軒のレストランに加えて ジムやレクリエーション施設を含む
NY初の完全リニューアブル・エナジー・ビルディングである J.P.モルガン新本社ビル(写真上左)の内装を含む総建設費を、1億ドル上回る予算。
床面積8361平方メートル、1000人のゲスト収容のボールルームが、何故そんな高額になるかの説明として、トランプ氏は地下に核攻撃に対応出来るバンカーを含む軍事施設を併設すると宣言。
プライベート・プロジェクトと言いながら、建設計画が軍事・防衛機密であることを強調したけれど、これが意味するのは建設費の内訳を国民に公表する必要が無いということ。
今週公開されたボールルーム・レンダリングは、AIで適当に作ったとしか思えないレべルで、問題だらけの造りをNYタイムズ紙が指摘してヴァイラルになり、
トランプ氏は3日後に訂正版を公開。時を同じくして、トランプ支持者と側近で固められた「国家首都計画委員会」がボールルーム建設承認を可決したことから、
「建設には議会承認の必要」という法的判断には影響しないにも関わらず、トランプ氏は「ボールルーム建設にGOサインが出た」と勝手な解釈を吹聴。
トランプ氏がここへきてボールルーム建設、ケネディ・センター改築、ワシントン・モニュメント前のトランプ・アーチ建設など、議会未承認の暴走を繰り返すのは、
トランプ氏がワシントンDC全体を ”ワシントンDT” と呼べるトランプ・タウンにコンバートし、自身のレガシーを歴史に残すためと説明されているのだった。
しかしイラン戦争によって MAGAの内部分裂はエプスティーン問題以上に激しくなっており、それまでトランプ氏を熱烈にサポートしてきたインフルエンサーやポッドキャスター達は、
収益が上がり易い戦争反対、トランプ批判のコンテンツに移行中。トランプ氏が過去10年に渡ってメインスピーカーを務めた保守政治の祭典、CPACは先週末に3日間のスケジュールで開催されたものの、
トランプ氏も出演をキャンセルするほど連日会場はガラガラ。 石油価格高騰とインフレ、ICEの暴力と移民問題、全米各地空港での大混雑といった国内問題が山積する中、
トランプ氏自身の健康状態への不安も重なって 遂にメルトダウンが始まったと言われるのがトランプ政権。
政権内でも3月5日に国土安全保障省長官を解任されたクリスティ・ノームに続いて、今週はエプスティーン・ファイル公開でトランプ氏の不信感を買ったパム・ボンディ司法長官が解任。
それに続くと見られるのがトゥルシー・ギャバード国家情報局長官、キャッシュ・パテルFBI長官、ハワード・ラトニック商務長官らの解任。
トランプ氏が解任ラッシュに踏み切る理由は、11月の中間選挙で共和党が上下院の過半数を失うと見込まれるだけに、今のうちに閣僚を入れ替えなければ
それ以降は 議会で閣僚就任の承認が得られない可能性があるため。 また国民から不人気の閣僚たちを選挙前にクビにすることで、
彼らを政府失策のスケープゴートにして中間選挙に臨もうとしているのも明らか。
これまで行われてきた上院・下院の議員補欠選挙は、ことごとく民主党が勝利を収めており、もし中間選挙で民主党が過半数を握った場合、
アンチ・トランプ派が弾劾よりも求めているのが合衆国憲法修正第25条、セクション4の発動。これは「大統領が任務遂行不可能と判断され、自発的でない引退に追い込まれる」という、
米国史上まだ発動例が無い条項。
今週には第一期トランプ政権下でホワイトハウス法律顧問を務めたタイ・コブが、トランプ氏について「明らかに正気ではない」と述べ、
なぜ閣僚らが憲法修正第25条を発動して大統領を解任しないのかと発言。
ホワイトハウス職員によれば、トランプ氏は頻繁に深夜2時、明け方4時などに突如叫び声をあげており、呂律が回らないスピーチや支離滅裂な会話、集中力が続かず直ぐ居眠りをする、まっすぐな歩行が出来ない以外にも、身体問題の兆候は多岐に表れているとのこと。
2~3週間ほど前からは民主党議員が、「Life goes on after Trump (トランプ政権が終わってからも人生は続く)」、すなわちトランプ政権終焉後を考えて行動するべきだと共和党議員に
警告し始めており、トランプ氏が任期を終えられないことを危惧する声は共和党内でも高まっている状況。
そのことはトランプ氏に大金を投じてきたITビリオネア達も、少しずつ考え始めているようなのだった。
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執筆者プロフィール 秋山曜子。 東京生まれ。 成蹊大学法学部卒業。丸の内のOL、バイヤー、マーケティング会社勤務を経て、渡米。以来、マンハッタン在住。 FIT在学後、マガジン・エディター、フリーランス・ライター&リサーチャーを務めた後、1996年にパートナーと共に ヴァーチャル・ショッピング・ネットワーク / CUBE New Yorkをスタート。 その後、2000年に独立し、CUBE New York Inc.を設立。以来、同社代表を務める。 Eコマース、ウェブサイト運営と共に、個人と企業に対する カルチャー&イメージ・コンサルテーション、ビジネス・インキュベーションを行う。 |


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