Michelin 3 Star Restaurant
ミシュラン3星、"Masa/マサ" がデリバリーする
800ドルのスシボックス、その中身とバリュー
By Yoko Akiyama
Published on 5/22/2020

ニューヨークではロックダウンは6月13日まで続くものの、徐々に様々なストアがソーシャル・ディスタンシングを守った
リオープンを果たしつつあるのが現在。
レストランについてはロックダウン後もデリバリー&ピックアップのみの営業が認められていたものの、
「採算が合わない」とストップしていたり、「スタッフを感染リスクにさらしたくない」として
あえてビジネスを行わないところが少なくなかったのがこれまで。
しかしながらロックダウンが長引いたことを受けて、コロナウィルスの問題が去るのを待つよりも、
コロナウィルスに対応したビジネスの体制を整えようとするレストランが特に5月に入ってから急増しているのだった。
そんな中、4月24日から ミシュラン3星の日本食レストラン、
Masa / マサが毎週金曜に20食 提供し始めたのが ここにご紹介する 800ドルのスシボックス(写真上)。
写真下はスシ・ボックスについてくる ネタを説明するインストラクションで、割り箸が4本ついていることからも分かる通り4人分でデザインされているのだった。


マサはニューヨークの超高級すし店の先駆け的存在で、コロナウィルスで休業した時点の おまかせメニューは595ドル(写真上)。
税金、チップ、ドリンクを含めると1人約800ドルになるのが同店のディナー。
そのほぼ1回分のディナー代金のスシボックスは 早い話が手巻き寿司キット。前述のように4人分となっているので1人200ドルの計算。
これにタックスが付いて、マンハッタン内は無料配達。それ以外のエリアは20ドルをデリバリーに支払うことになっているのだった。
スシボックスの内訳はリボンを掛けて届けられる刺身、タルタル、野菜2品を含むネタのボックス、す飯のボックス、ノリとトーストが入ったボックスはワックスでシールされ
醤油のボトルが2本、 ワサビ、ガリ、そして割り箸が含まれているもの。
ちなみにトーストはマサのおまかせコースに毎回登場するので、常連客ならば問題なしにそれで手巻きを作る要領が分かるというもの。
「Do It Yourselfでこのお値段は高い」と考えるのはやはり庶民のようで、マサの常連であれば
「このお値段でマサのテイクアウトが味わえるのなら…」とバリューを見出しているようなのだった。



現在マサはこのスシボックス提供以外は営業しておらず、スタッフを給与支払い停止処分にしたことを
masanyc.com/ のウェブサイトウェブサイトでアナウンス。
その中でクラウド・ファンディング・ウェブサイト、GoFundMe.comを通じてのサポート、及び営業再開後のディナーの先払いを意味する
Eギフト・カードの購入を呼び掛けている状況。
同様の寄付集めや、Eギフトカード販売はニューヨークの多くのレストランが生き残りの手段として行っているけれど、
マサの場合、ここでも見せつけているのがその価格帯の違い。
GoFundMe.comのページによれば、現在集まっている寄付はマサが定めた10万ドルに僅かに届かないものの
9万8800ドル(1,062万円)。この金額に達する寄付を行ったのは僅か76人のドナーで、
そのうちの3万ドルは同店の常連かつ コスメティックのエスティ・ローダーの息子であり、ビリオネアのロナルド・ローダー(76歳)によって寄付されているのだった。
ちなみにクラウドファンディングでマンハッタンの有名レストランが集める金額は5〜8万ドルと言われ、その金額を集めるには数百人、時に千人以上が寄付を行っているのが通常。
無名店になると100人以上が寄付を寄せても2000ドル程度しか集まらないのがクラウドファンディングの厳しい現実なのだった。
ちなみに写真下左は実際に マサのスシボックスを使った手巻き。右側は シェフを含むマサ出身の3人チームが2020年初春にウェストヴィレッジにオープンした
手巻き寿司レストラン、Nami Nori / ナミ・ノリ が 現在デリバリーとピックアップでオファーしている手巻き寿司5本セット。
こちらはマサのスシボックスのようにファンシーなネタではないものの、お値段は25ドルとなっているのだった。
Nami Nori:https://naminori.nyc/


複数のメディアがこのスシボックスについて取り上げるの記事の中でふれていたのが、
マサのウェブサイトで 休業と寄付を募るアナウンスメントのバックグラウンドで流れているのがビデオについて。
そのビデオは キッチンで腕を振るうシェフ、マサヨシ・タカヤマの姿に加えて、彼が2010年に480万ドルでアッパー・ウエストサイドに購入した
自宅タウンハウスで ウィスキーと思しきドリンクを飲みながら、ゆったりと葉巻を吸う様子をフィーチャーしたモノクロ画像。
寄付とサポートを集めるアナウンスのバックグラウンドに そんな優雅なシェフの姿がフィーチャーされていても、
全く反感を買うことなく多額の寄付を集め、常連客に高額のスシボックスが販売できるマサのビジネスは、
閉店の危機に瀕して レントを滞納しなければならないニューヨークの大半のレストランの厳しい現実とはかけ離れたもの。
ここ数年で開き過ぎた貧富の差を象徴するものとして 複雑に受け止められているのだった。
メディアでマサのスシボックスに手が届かない人や反発する人々へのオプションとして紹介されていたのは、前述のナミノリのハンドロールに加えて、
写真上左、Kissaki Omakase / キッサキ・オマカセの プレミアム・オマカセ・ボックス。
同店は医療現場の人々のために800食のスシをデリバリーしたことでもニュースになった店。
そして写真右はLAから進出したスシ・チェーン、シュガーフィッシュのスシボックスで、これはコロナウィルス感染問題以前から
同チェーンがデリバリー&テイクアウト用に販売してきたもの。シュガーフィッシュ系列では、アメリカにおける手巻き寿司レストランの元祖を名乗る KazuNori / カズノリも
ニューヨークのNoMadエリアに進出しているのだった。
マサのスシボックスのレビューは、「このお値段が払える人が楽しめば良いもの」というものが圧倒的で、マサの常連客や
このお値段をデリバリー・フードに支払う財力の人々にとっては、ヴァリューなどは一切関係ないというのが実情。
一部にはこれをメガリッチ・カルチャーとして非難する声も聞かれるけれど、
コロナウィルスの問題が続く気配なだけに、今後は高額レストランが高額デリバリー・ビジネスに参入してくることが
見込まれているのだった。
Kissaki Omakase:https://explorekissaki.com/
Sugar Fish: https://sugarfishsushi.com/
KazuNori :https://www.handrollbar.com/nomad/


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