9月1週目のレイバーデイ(労働者の日)の抗議活動のメインテーマになっていたのが“Workers Over Billionaires/ビリオネアよりも労働者優先”。
今やすっかり社会の敵になったのがビリオネアで、給与が上がらず、インフレで苦しむ庶民がビリオネアを嫌うのは当然ですが、その反発が富裕層にも拡大しているのが現在。
食費や医療費といった生活費では困らない富裕層ですが、彼等がビリオネアを嫌い始めた理由は、
その財力に物を言わせて、世の中の秩序やルールを自分の都合で書き換えているため。
その好例が、スペースXやテスラ、ニューラリンクといった自分の企業に対して、連邦捜査や訴訟を起こしていた政府機関をDOGE(政府効率化省)を使って
閉鎖や骨抜きにしたイーロン・マスクでしたが、ビリオネアが自分の都合や利益を優先させることで搾取されるのは富裕層も同様。
以下ではマーク・ザッカーバーグとジェフ・ベゾスが現在大顰蹙を買っている問題についてご説明します。
過去10年以上に渡り、カリフォルニア州のパロアルトのクレセントパーク地区で 少なくとも11件、総額1億1000万ドル以上の不動産を取得したのがメタCEOマーク・ザッカーバーグと妻でドクターのプリシラ・チャン。
そして現在夫妻が取り掛かっているのが、その物件を全て結合して、ゲストハウスや大庭園、私立学校、エクササイズ施設、地下避難施設などを含む、一大私有コンプレックスを建築するプロジェクト。
そもそもパロアルトと言えば、カリフォルニアの中でもごく限られた富裕層、シリコンヴァレー大手企業のエグゼクティブや大学教授等といった富裕層の中でも社会の上層部しか住めない高級住宅街。
マルチミリオンの豪邸が並ぶ閑静なエリアで、物々しい騒音や開発等とは無縁のエリア。
ここにマーク・ザッカーバーグが最初に家を建てたのは2011年。当時は、約530平方メートルの1軒家(写真上左)であったけれど、その後の相次ぐ近隣物件の買い占めにより、
ザッカーバーグが行ったのは、住民たちが 「クレセント・パーク地区の乗っ取り&私有化」と評する行為。
住人達は何年にも渡って公聴会や反対運動で、買収を遅らせたものの、ザッカーバーグが市政府を味方につけて物件買収を承認させ、
それ以外にも市政府から様々な特別待遇を取り付けており、それも近隣住民の反発を招いた要因。
「世界中の億万長者は、自分たちがルールを作るものだと思っているし、特別待遇を当たり前だと思っている」と批判が殺到しているのだった。
いざ建設プロジェクトが始まると、住人からの苦情が殺到。というのも工事業者が道を塞ぎ、工事器具が公共の場に放置され、鋭利な資材ゴミ放置による車のタイヤのパンク・トラブル等が発生。
中でも苦情が多いのが騒音で、それが今後数年続く状況を考慮して ザッカーバーグが近隣住民に配布したと言われるのが、ノイズ・キャンセリング・ヘッドフォン、スパークリング・ワイン、そしてクリスピー・クリームのドーナツ詰め合わせという神経を逆なでするギフト。まるで「ヘッドフォンをしてノイズを凌いで、甘い物とアルコールでストレスを解消しろ」と言わんばかりのギフトには、
近隣住民だけでなく、SNS上でも ”Tone Deaf(空気が読めない状況音痴)”と批判が殺到していたのだった。
ちなみにザッカーバーグ夫妻が、1つの物件からスタートして周辺の不動産を買い漁る様子は、一足先にハワイでも見られており、
現地では彼に物件を売らないよう、地主間で結束が高まったとのこと。しかしザッカーバーグは第三者に依頼して不動産を購入し、
その人物から買い取るという凄まじい執念を見せたのだった。
クレセント・パークに建設されるザッカーバーグ・コミュニティの中心部には、天女のような翼をもつプリシラ・チャンの像がそびえることになっており、
完成後はザッカーバーグ夫妻と3人の子供達が支配するプライベート・コミュニティが誕生するのは言うまでもないこと。
そしてそんなものが近隣にあれば自宅の不動産価格が下がるのは必至。しかし売却を試みれば総資産2500億ドルを超えるザッカーバーグが更なる買い占めをすることが目に見えているだけに、
住人達はフラストレーションやジレンマを超えた怒りを露わにしているのだった。
ちなみに、かつてはアンチ・トランプ派だったザッカーバーグながら、イーロン・マスクがトランプ政権を去って以来、シリコンヴァレーで一番のお気に入りと言われるのが彼。
9月1週目にホワイトハウスで行われたITエグゼクティブ を集めたディナーでは、ザッカーバーグがトランプ氏の隣に着席。そしてトランプ氏に「(メタは)これからアメリア国内に幾ら投資をする?」と取材陣を前に尋ねられ、
「多分6000億ドル…」と回答。これは日本や韓国がそれぞれ国家レベルで表明した米国投資額とほぼ同額。
後にザッカーバーグは自分の声がマイクに拾われているのに気付かず、トランプ氏、メラニア夫人に「いきなりだったから、幾らって言って欲しいかが分からなかった」と話す様子が露呈。
トランプ氏の顔を立てて、無責任な虚偽の数字を発言したことにも批判が集まっていたのだった。
7月にヴェニスで挙式をしたのがアマゾン会長のジェフ・ベゾス。そして彼が妻のローレン・サンチェスのために5億ドルを投じてカスタム・オーダーしたのが世界最大規模、全長124メートルのスーパーヨット”Koru/コル”。
オランダのロッテルダムで造船されたコルは、港を出る際に歴史ある橋の解体を迫られた巨大さ。しかし地元住民の猛反対に見舞われ、マスト無しなら橋の下が通過できるということで、港を出てからマストが装着されたいわくつきのヨット。
ヴェニス港にも巨大過ぎて入港できなかったコルは、世界中のスーパーヨットの受け入れ先になっているフロリダ州エヴァ―グレース港に停泊することになったけれど、それでも巨大石油タンカー用のスペースにしか収まらないサイズ。
ここまで大きいと航海中にも不便が生じることから、コルには常にヘリポートを備えた7500万ドルの豪華な”サポート・ボート”が付き添っているのだった。
コルの年間維持費は少なく見積もって2500万ドルで、これにはエヴァ―グレース港の1日2400ドルの停泊費は含まれていないとのこと。MTUディーゼル・エンジン2基を備え、3つの屋外デッキ、プール、ジム、バスケットボール・コートといった設備に加えて、
ヘリコプター、ジェットスキー、自家用潜水艦等が積み込まれたコルは、停泊中でも大勢のスタッフによる日常のメンテナンスが必要で、これは大型ホテル1軒を運営するのと同等。
年間に排出する二酸化炭素量は7千トン以上で、それ以外にも排水、ゴミ、騒音、光害等、様々な汚染物質を排出。そんな環境汚染源となる大規模スーパーヨットを
近年競ってオーダーしているのがビリオネア達で、これによって最も直接的なシワ寄せが来るのは庶民ではなく、
そこそこのサイズのヨットやスーパーボートを所有する富裕層たち。 停泊施設がビリオネアのスーパーヨットで占領され、メンテナンス等ありとあらゆるヨット、ボート関連の費用が跳ね上がっているのが現時点。
これらは日用品や食料品のように値上げをしたところで、世論も政治家も文句を言わないとあって、払う人間が居る限り 上がり続ける宿命なのだった。
その一方で、今後スーパーヨットは原子力エンジンが主流となることから、危惧されるのが海中の放射線漏れ。シーフードが放射線汚染で食べられなくなる世の中を危惧する声も聞かれており、
無責任に原子力エンジンに大金を投じるビリオネアは今や富裕層も嫌う存在。
ちなみにコルの船首には、ベゾスの妻、ローレン・サンチェスをモデルにした人魚の像がフィーチャーされており、これがマーク・ザッカーバーグの私有地との共通点と言われる部分。
一般人から見れば悪趣味な像もビリオネアにとっては美の象徴のようで、やがてビリオネアが「お金で美の意識を買い取る時代が来る」との皮肉も聞かれるのだった。
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